豊浦町は今回のキャンプを全面的にサポートしているという。4月にキャンプ場利用の打診を受けた時は「反G8を主張する人々を受け入れるのはどうかと思った」が、その後何度も話し合いを重ねるうちに「全面協力するようになった」と、企画調整課のH氏は語る。
7月6日から豊浦キャンプが始まった。会場の豊浦森林公園の最寄り駅はJR室蘭線の礼文駅である。地図を見て「近そうだ」と判断して歩き始めたものの、行けども行けどもそれらしきものはなく、看板すら見当たらない。それでも仕方がないので歩いていたところ、豊浦町役場の車に追い越され、すぐ前方に車は止まった。
「やはりキャンプ参加者は警戒されているのか」と身構えていると、車の中から「森林公園に行くんでしょ?私たちも行くところだから乗っていきなよ」と声をかけられた。あまりに気さくな感じで話しかけられたことに拍子抜けしたが、乗っていいものかさすがに迷った。迷った末、車体の「豊浦町」の文字と彼らのIDを信用し、「この人たちは敵じゃない」という自分の(当てにならない)嗅覚を信じて車に乗り込んだ。果たして、その嗅覚は今回に限っては利いていて、彼らのおかげで無事キャンプサイトに着くことができた。
その車中で聞いて驚いたのだが、豊浦町は今回のキャンプを全面的にサポートしているという。4月にキャンプ場利用の打診を受けた時は「反G8を主張する人々を受け入れるのはどうかと思った」が、その後「何度も話し合いを重ねるうちに彼らも『普通の人たち』なんだ」と分かり、「全面協力するようになった」と、企画調整課のH氏は語る。
話し合いの過程では、キャンプが成功するようにと、看板の作製や食材の調達先などについて役場側からさまざまな提案をしたという。「得体のしれない人たち」が来ることを不安がる地元の住民に対しては、家を回って説明をおこない理解が得られるようにした。それでも、礼文駅からキャンプ参加者がぞろぞろと歩くことに懸念を示す住民がいたので、電車が到着するたびに駅周辺を車で周り、歩いている人をピックアップしているという(私がまさにその「歩いている人」だった)。
さらに、JRとも交渉して、普段は無人の礼文駅にキャンプ期間中は駅員を置いてもらい、通常1両編成の列車も2両に増やしてもらうようにした。礼文駅の構内には「ワンマン列車の乗り方」を英語で説明したプレートが取り付けられていた。豊浦町役場では総勢65人の職員のうち10人が今回のキャンプ関連で動いている。上記のH氏は、こうした対応を「おもてなし」と表現した。「どんな主張をしているかは関係なく、NGOとかそういうのも関係なく、わたしたちは『おもてなしの心』でやっているんです」と。
反G8を掲げるキャンプがこのように「もてなされて」いることは意外な事実であった。日本の自治体においては、NPOとの協働が進む一方で抗議運動や反対運動系の活動には冷たいというのが一般的である。その例外を豊浦キャンプの舞台裏に幸運にも垣間見ることができたことを非常にうれしく思うと同時に、豊浦町役場という強力なサポーターの声援に応えるためにもトラブルなくキャンプが進むことを願わずにはいられない。
(GPAM: SA)
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