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【社説】

『竹島』明記 ここは冷静な対応を

2008年7月15日

 学校で竹島問題をどう教えるか。その基準が示された。領土問題はもともと極めて政治的な性格を持っており関係国間に確執が生まれやすい。双方ともに冷静な対応を期待したい。

 竹島は、東京ドーム五倍ほどの日本海に浮かぶ小さな島だ。

 日本と韓国の間で戦後、領有権が争われてきた。今回、中学校社会科の新学習指導要領の解説書に初めて明記された。文科省が編集し、授業や教科書作成の際の指針になるものだ。

 これに対して、韓国側はただちに反発し「深い失望と遺憾」(大統領府)を表明、権哲賢駐日大使の一時帰国を決定した。

 それぞれの国が自国の領土を教えるのは当然のことだ。

 ただ、長年の懸案であり、先に李明博大統領が福田康夫首相に憂慮表明をしたことやこれまで解説書に明記しなかった経緯もあり、配慮のあとが見える。

 「我が国と韓国の間に竹島をめぐって主張に相違があることなどにも触れ、北方領土と同様に我が国の領土・領域について理解を深めさせることも必要である」

 これが竹島に言及した部分の全文だ。抑制が利いたというより、気を使いすぎてまわりくどい表現になっているほどだ。

 今回は約十年ごとの指導要領改定に伴うものだが、このタイミングは気になる。李大統領は牛肉問題で支持率低下に苦しんでいる最中だからだ。

 こうしたとき、対日関係での柔軟対応は国内世論の非難を招く。しかし過剰に反応すれば、反日を政権基盤の回復に利用した歴代政権と変わりがなくなる。

 日韓新時代を掲げる李大統領としては、正式大使召還という強硬策はひとまず避けたようだが、両国政府には、これ以上に政治問題化することがないよう冷静さを期待したい。そのための事情説明や意思疎通も必要だろう。

 ただ、韓国側には「領土問題は解決済み」ではなく、両国の懸案事項と認識するよう求めたい。

 日本は一九〇五年に閣議決定で島根県への編入を決めた。国際法上の有効な領有権の根拠である。一方の韓国は五二年に沿岸水域の主権を示す「李承晩ライン」を設定し、五四年から警備隊を常駐させ実効支配をしている。

 領土問題は国民のナショナリズムを刺激しやすい。戦後の日韓関係の出発点である日韓国交正常化の際、「竹島」は棚上げされた。先人の外交の知恵である。

 

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