大阪地裁所長襲撃:少年の「無罪」確定 再抗告審の最高裁

 大阪市住吉区の路上で04年2月、大阪地裁所長(当時)が襲われ重傷を負った事件で、強盗傷害の非行事実に問われた当時14歳の少年(19)について、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は11日付の決定で、刑事裁判の「無罪」に当たる不処分とした大阪家裁決定を支持した。大阪高裁が家裁決定を取り消していたが、小法廷は少年側の再抗告を認め、高裁の判断を覆した。これで、少年の不処分が確定した。

 少年に対しては(1)大阪家裁が少年審判で中等少年院送致を決定(2)大阪高裁が「自白の信用性に疑問がある」と取り消し(3)差し戻し審で家裁が不処分を決定(4)高裁が再び家裁決定を取り消し--という異例の展開をたどった。

 1回目の高裁決定は、逃走する犯人グループとみられる防犯カメラの映像に、グループの一員とされた大柄の人物がいないことを少年院送致取り消しの理由の一つに挙げたため、差し戻し審で検察側は逃走を再現したDVDの証拠調べを求めた。家裁は認めなかったが、高裁は「DVDを調べれば結論が覆る可能性があった」と再び審理を差し戻す決定をしていた。

 小法廷は「覆る可能性は認められず、早期・迅速な処理が要請される少年事件の特質を考慮すると、差し戻し審の家裁の措置は合理的な裁量の範囲内」と指摘し、不処分決定を支持した。田原裁判長は補足意見で「少年事件では、捜査機関の意向に迎合し、客観的証拠と矛盾した自白をする危険性が高いことを如実に示す一事例」と指摘した。

 事件では、逮捕・補導された5人のうち成人男性2人の無罪が確定。少年の兄(当時16歳)は少年院収容後、大阪家裁で「再審無罪」に当たる保護処分の取り消し決定を受け、検察側が抗告した。当時13歳の少年は児童自立支援施設に送致されたが、「自白を強要された」と国などに賠償を求め提訴している。【北村和巳】

毎日新聞 2008年7月14日 13時36分(最終更新 7月14日 14時19分)

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