世界的な穀物価格高騰を受け、原料に価格の安い遺伝子組み換え(GM)トウモロコシを使った食品が相次いで販売される見通しになった。スターチ(デンプン)最大手、日本食品化工は米国産GMトウモロコシを原料とするコーンスターチを製造し、17日までに飲料メーカーなどへの供給を開始した。他社もGMコーンスターチ量産の検討に入った。GM穀物を原料とする食品は消費者に敬遠されるとして食用油などを除きほとんど製品化されていなかった。
日本食品化工によると、輸入元の米国で非GMトウモロコシの必要量確保が困難になったことを受け、今年2月に初めてGMトウモロコシを輸入。年内に調達予定の75万トンのうち、15万トンをGMでまなかう計画だ。
工業用途の非GM製品をGM製品に切り替え、余裕のできた非GM製品を食品用に回すなどの対応をしているが、「すでに飲料メーカーを含む複数の食品メーカーからの要請に応じる形でGM製品の供給を始めた」という。供給先は明らかにしていない。
農林水産省によると「国内では天ぷら油などの食用油を除き、GM穀物を食品に使う例はほとんどない」(総合食料局)という。
一方、王子製紙グループの同業、王子コーンスターチは、大口ユーザーであるビール各社などと値上げ交渉を進める中で、値上げを回避するための有力な選択肢として、GM原料を使った製品供給の検討に入った。
同社はすでにGM製品の需要拡大を見越し、コーンスターチ製造設備を持つ化学大手、群栄化学工業などとと提携。今後、GM製品需要が拡大した場合、両社の製造ラインの一部をGM製品専用とし製品を分け合う考えだ。
日本が9割を頼る米国のトウモロコシは、石油代替燃料のバイオエタノール向け需要の拡大で生産量は年々増加しているが、非GMトウモロコシは作付面積が昨年の約3割から今年は2割弱に減少。スターチ各社は契約農家に「ジャパン・プレミアム」と呼ばれる上乗せ料金を支払い食用向けの非GMトウモロコシを確保している。
しかし、「2〜3年後には入手が困難になる」(日本食品化工)見通しで、今後、さまざまな食品にGM原料の使用が広がるのは避けられないとの見方もある。
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■ビール・飲料各社、利用に慎重
ビール・飲料各社は遺伝子を組み替えていないコーンスターチの調達難と価格高騰という厳しい環境の中で遺伝子組み換え(GM)原料の使用に慎重姿勢を崩していない。当面は値上げで難局を乗り切る構えだ。
大手ビール・飲料各社はGM原料に慎重な理由に「安全性が確保されているというイメージがまだ定着していない」(サッポロビール)ことを挙げる。GM原料を使用していると表示した場合、売り上げが3〜4割減少するとの予測もあり各社とも製品・企業イメージの悪化を恐れている。
しかし、現状を維持したまま今後の急激な原料高にどこまで対応できるかは未知数だ。非GMコーンスターチは昨年1月以降、約2割も上昇した。それでも過去2年で約2・6倍に急騰したトウモロコシ価格や原油高の悪影響は吸収しきれずスターチ業界は「存亡の危機にある」(日本スターチ・糖化工業会)という。
こうした中でスターチ各社はビール・飲料業界に対し非GMトウモロコシの値上がり分を負担するか、低価格のGMに切り替えるかの二種択一を迫っている。値上げ交渉の激化に伴い、「ビール各社はGM使用に慎重姿勢を崩していないが、ジュースなどについては柔軟なユーザーもあり、温度差が出ている」(王子コーンスターチ)という。
ビール各社は2月以降、相次いでビール類(発泡酒含む)の値上げを実施しているが、キリンは「原料価格の高騰が続き、利益を圧迫する事態が生じれば、当然、再値上げを考えることになる」としている。
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【用語解説】遺伝子組み換え(GM)穀物
遺伝的特性を変え、害虫や除草剤などへの耐性を強くし収穫量を上げたトウモロコシやダイズなどの穀物。日本では主に家畜飼料用に多く利用されている。政府が安全性審査などを経て承認した種は食品に使用できるが、GMダイズは食用油などを除き、ほとんど食用に使われていない。GMトウモロコシは主に家畜の飼料や工業向けが中心。コーンスターチはビールや焼酎、ジュースの甘味料(異性化糖)など食用のほか製紙など工業用にも使われる。
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