北海道洞爺湖サミットの閉幕を受け、国内の非政府組織(NGO)141団体でつくる「G8サミットNGOフォーラム」(星野昌子代表)は9日、後志管内留寿都村の国際メディアセンターで記者会見を開いた。サミットの主要議題となった地球温暖化対策については「G8(主要8カ国)は具体的な中期目標を掲げず、途上国の合意を得られなかった。失望を伴うものだ」と首脳宣言の合意内容を批判した。【金子淳、横田愛】
途上国の貧困対策に関しては「政府開発援助(ODA)増額に関する言及がほとんどなかった。日本は議長国として努力すべきだ」と注文を付けた。
今回のサミット警備についても「入管でNGO関係者が入国を拒否された。何の説明もなくビザが下りなかったケースもあった」と批判した。
一方、市民参加の視点からは、6月に福田康夫首相との意見交換会が実現したことなどを挙げ「ある程度満足している」と評価。札幌市に国内外のNGOが集まって開いた「市民サミット」など、活発な市民運動も展開され、星野代表は「サミットを経験して我々市民は多くのことを学んだ。今後も横のつながりを形成できると思う」と振り返った。
反G8の立場で活動してきた国内外の6団体も9日、札幌市内で記者会見し、気候変動問題に関する共同見解を発表した。2050年までに世界全体で温室効果ガス排出量を半減させる長期目標について、基準年が不明な点などを指摘し「国際社会に対する重大な詐欺的行為」と非難した。
タイに本部を置く国際NGO「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」のウォールデン・ベロー事務局長は「G8は多くの課題を先延ばしにした。彼らに地球を救う政策は打ち出せない」と批判した。
世界70カ国にまたがる環境団体「フレンズ・オブ・アース・インターナショナル」のジョセフ・ザクネさんは、G8が世界銀行を通じて環境技術移転資金を途上国に出そうとしていることについて「結果的に途上国の債務負担を増やすだけだ」と指摘した。
9日閉幕した北海道洞爺湖サミットの福田康夫首相による議長総括を巡り、北朝鮮による拉致被害者家族会の飯塚繁雄代表(70)は同日、国会内で記者会見し、「拉致の話はほんの一言だけだった。自国の大きな問題なのでもっと言及してほしかった。期待が外れた」と無念さをにじませた。
同席した横田早紀江さんも「もう少し力強い発言をしてほしかった」と話した。
一方、家族会や支援団体・救う会、拉致議連のメンバーはこの日、国会内で合同役員会議を開き、今後の対応を協議した。これまで集会を共催してきた政府とは一定の距離を置き、政府主催の集会に協力する場合は「後援」とすることなどを決めた。飯塚代表は「立場が違うので、一定の距離を置くのは当然」と述べた。【工藤哲】
一部の首脳は10日に日本を離れるため、引き続き警備は続くが、懸念されたテロやデモによる大きな混乱はみられなかった。警察庁幹部は北海道と東京での大規模な「2方面作戦」が功を奏したと評価するが、不便を強いられた市民からは不満の声も上がった。
警察庁は、全国の警察本部の応援部隊を含む約2万1000人の警察官を動員。もうひとつの「主戦場」と位置づけた首都・東京でも、警視庁が別に約2万1000人を動員して警戒にあたった。「厳戒」の背景にあったのは、国際テロと経済のグローバル化を批判する反グローバリズム団体の存在だ。
05年の英国のグレンイーグルズ・サミットでは、開催地から約600キロ離れた首都・ロンドンでテロが発生。昨年のドイツでのハイリゲンダム・サミットでは、会場の近郊都市で反グローバリズム団体などによる約8万人規模のデモがあり、黒装束をまとった集団が投石や車両への放火などを繰り返し、警察官400人以上が負傷する事件が起きた。
こうした教訓を踏まえ、警視庁はサミット期間中、警察官が駅や繁華街などを巡回、幹線道路で検問を実施した。東京メトロは地下鉄全駅で清涼飲料水の自動販売機を使用禁止にし、ごみ箱も撤去したため「不便だ」との乗客らの声が上がった。【遠山和彦、棚部秀行】
今回のサミット警備について道警の高橋清孝本部長は9日夜、記者会見を開き「大きな犯罪もなく無事に終わった。道民の協力、支援にあつく御礼申し上げたい」と述べた。
会見で高橋本部長は「一人一人の警察官、一つ一つの部隊がそれぞれの任務を果たしてくれた」と、全国から派遣された部隊を含む約2万1000人の警察官の労をねぎらった。
今回のサミットを巡ってはデモなどで計6人の逮捕者が出たが、高橋本部長は「逮捕者が出ることは想定しており準備はしていた。想定の範囲内だった」と話した。【木村光則】
毎日新聞 2008年7月10日 北海道朝刊