「30万人」に学術的根拠ない 南京事件で中国人学者
*内容は全て記事作成時のものです
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日中両国の歴史研究者交流を進めている東京財団主催の講演会が1月30日、東京都港区の日本財団ビルで行われ、程兆奇・上海社会科学院歴史研究所教授と張連紅・南京師範大教授が中国における南京事件研究の現状などを紹介した。
南京事件は日中間の歴史認識の隔たりの最大のテーマのひとつ。中国では「日本軍国主義のシンボル」と位置づけられ、南京軍事裁判で示された30万人の犠牲者数は「南京大虐殺記念館」にも刻まれている。これに対し程教授は「現在の資料で犠牲者数を確定することはできない」と述べ、30万の数字が学術的根拠を欠くことを認めた上、今後、幅広い学術研究を進める考えを示した。
東京財団によると両教授は中国における南京事件の代表的な研究者。日本でも関心の高いテーマであり、会場には満席の250人が詰め掛けた。
両教授によると中国で南京事件の研究が始まったのは1980年代以降。当時、南京に在住した外国人や中国人の日記、生存者の目撃談など28巻1,500万字分の資料が集まっており、年内にはさらに20巻の資料が整備される予定という。
張教授は「中国の研究は、日本で高まった南京事件否定説に対抗するところから始まった」と述べ、当初から政治的イデオロギーの影響を色濃く受けていたことを明らかにするとともに「近年の中国民衆の反日感情の高まりは学術研究の在り方にも影響を与えている」と語った。
「学術的根拠がないのなら虐殺記念館の30万人の数字は削るべきではないか」との会場からの質問には「一学者として決められる問題ではないが、自分が経営しているのであればこの数字は使わない」と答えた。
歴史問題は日中間の最大の政治問題にもなっており、安倍首相は就任後の訪中で学者による共同研究を提案、両国の有識者による初会合が昨年末、北京で開かれている。笹川日中友好基金でも2001年に「日中若手歴史研究者会議」を立ち上げ、昨年、5年間の研究成果を一冊にまとめた「国境を越える歴史認識 日中対話の試み」が日中両国で同時出版されている。