東京都国分寺市の共産党市議が、同党市議団発行の「市議会報告」を市内にあるマンションの集合ポストに投函(とうかん)したとして、東京地検八王子支部に住居侵入容疑で書類送検されていることが2日、分かった。この市議と共産党国分寺市議団は「オートロックのドアの外側にある集合ポスト周辺は事実上、だれでも出入りできる。ここへの投函が罪にあたるはずがない。市議会報告の配布は市議活動として必要な行為だ」と批判、不起訴処分を求めている。
書類送検されたのは、幸野統(おさむ)市議(27)=1期目。
小金井署によると、市議は5月18日午後5時ごろ、国分寺市本多1丁目のマンション1階の玄関にある集合ポストに党市議団発行の市議会報告を配布するため、マンションの敷地に侵入した疑い。敷地には、関係者以外の立ち入りを禁じた張り紙があったという。
幸野市議によると、当日、市議会報告を投函中に、マンションの住民1人から注意を受けた。この住民とは初対面だったが、注意されたため「投函をやめる」と話したという。しかし、納得してもらえず、この住民と一緒に近くの交番に行ったとされる。その後、同署はマンションの管理組合から被害届が出たのを受けて6月9日に書類送検した。
ビラ配布をめぐっては、東京都立川市の自衛隊官舎で反戦ビラを配布した市民団体のメンバーが住居侵入罪で逮捕・起訴され、今年4月に最高裁で有罪が確定。また、同葛飾区のマンションでも、共産党のビラを配布するためにマンション内に入った住職が同じ罪で逮捕・起訴され、東京高裁で有罪判決(昨年12月)を受けて最高裁に上告中だ。いずれも集合ポストへのビラ入れではなく、各戸の玄関ドアにビラを入れていたケースだった。
最高裁は立川の事件の判決で、憲法が保障する「表現の自由」も無制限ではなく、「公共の福祉のために必要かつ合理的な制限を受ける」と指摘。そのうえで、塀で囲われた官舎の敷地や各戸の玄関前までは自衛隊側が管理しており、関係者以外の立ち入りを禁じる表示があったことや被害届が出ていたことを重視するなどして、「管理者の意思に反して立ち入り、住民の私生活の平穏を侵害した」と結論づけた。
ただ、最高裁判決でも、国分寺市議のようにオートロックの扉の外にある集合ポストにビラを入れた場合にどう判断すべきかについては明示されていない。また、この判決が商業ビラと政治ビラを区別しなかったため、憲法学者から批判の声が上がっていた。(石川幸夫、田内康介)