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米「多国籍軍化」進める 北部訓練場の他国軍使用2008年7月2日

 米軍北部訓練場で独軍など米軍以外の他国軍が、将来的に訓練使用を検討している問題は、米国の「グローバルな戦争」に他国も責任を担わせる米軍の多国籍軍化戦略の一端が「平時訓練」として沖縄の基地でも顔をのぞかせた格好だ。専門家も「米軍戦略の大きな転換の一つの表れかもしれない」と注視する。一方で自衛隊員の参加は、米軍再編のキャンプ・ハンセン共同使用などで顕在化した日米の軍事融合が一層深化する予兆ともいえる。
 今回訓練場を視察したのは自衛隊に加え、北大西洋条約機構(NATO)加盟国のドイツとオランダ、さらに米国から多大な軍事的供与を受けるイスラエルの軍人が参加した。各国は米本国の海兵隊戦闘開発司令部に情報交換などの目的で軍人の連絡官を派遣しており、今回はその要員が視察した。

■事前調整
 現在米国が進める「テロとの戦い」では、泥沼化したイラク戦争でのかさむ戦費などもあり、同盟国へ役割分担を進めたい意向が垣間見える。
 米軍にとって北部訓練場は「米国外での唯一のジャングル戦闘訓練施設」(米海兵隊)。米軍の戦略などに詳しい我部政明琉球大教授は「米軍と共同して行動できるようにするための事前の調整ではないか。相互運用性を高めようとしているのかもしれない。沖縄の基地を世界の米軍の行動に寄与する形にしようと考えている」と米軍側の意図を推測する。
 さらに県内では嘉手納基地と普天間飛行場、ホワイトビーチの3施設だけで国連軍の使用を認める国連軍地位協定も念頭に我部教授は「日米地位協定で多国籍軍に基地提供しているわけではない。国連軍協定でもイスラエルをどうするのか問題だ」と問題点を指摘する。

■実態把握できず
 一方で外務省は、他国軍の使用は原則困難との見解を示す。だが、公式にハンセンでの自衛隊共同使用が始まる以前から、「研修」の名で陸自部隊が在沖米海兵隊からイラクで使用された簡易手製爆弾(IED)を使って教示を受けていた例もある。
 「研修」の名目で他国軍兵が訓練場に入れば、日本政府がどこまで制御できるのか。現在の米軍基地内での演習ですら、常に米軍の運用を理由に実態把握できないとする防衛省。その対応を見ていると、今回の他国軍の基地使用をめぐっても懸念はぬぐいきれない。
(滝本匠)


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