原子力潜水艦と原子力空母の原子炉には、加圧水型原子炉(PWR)が利用されているが、商業用軽水炉と比べ、異なるのは、燃料棒の被覆管にステンレススチールを利用しているため、中性子吸収が多く、それを克服するため、兵器級濃縮ウラン(93w%)を燃料としていること。なぜ、ステンレススチールを利用するかと言えば、緊急時に、わずか数分で、フル出力にできるような条件を備えるため(原発は材料の亀裂・熱疲労を防止するため、55℃/hの条件を守り、起動からフル出力まで数日)。通常時においては、できるだけ、原子炉システムに無理が生じない条件で出力の上げ下げをするが、緊急時には、急激に変動させる。その緊急時の回数が公表されていない。よって、原子炉システムの健全性と寿命は、推定不能。世の中には、何も知らないくせに、もっともらしい議論をしている愚者がいる。
原爆の爆発力には限度有り。爆発力を大きくしようとすると、核物質等を含む全体が大きくなり過ぎ、爆縮が困難だけでなく、ICBMでの長距離輸送が不可能。そのため、ブースター中性子源(バックナンバー参照)の水爆が開発された。水爆は、1億℃の温度でも効率的な反応が促進できる重水素(安定、水素原子核に1個の中性子プラス)と三重水素(半減期12.3年のトリチウム、水素原子核に2個の中性子プラス)の核融合(fusion)反応。米政府は、TVA所有の原発のひとつで、トリチウムの生成を実施中。実際には、リチウムの酸化物をペレット状にして燃料棒のような被覆管に納め、燃料集合体のような構造物を炉心周辺に設置。主に、リチウムの熱中性子による(n,α)反応で、トリチウムを生成。米国では、あらゆる産業施設において、民生利用と軍事利用の境界がない。
世の中には、核について、まったく何も知らないにもかかわらず、ちょっとした国内外の解説書を読み、知ったかぶりして、解説する愚者がいる。ならば、マジで問いかけよう。(1)原水爆設計に必要な1億℃の中性子断面積をどのような方法で編集し、その妥当性をどのように検証するのか。(2)原爆は、100万分の1秒の瞬時に膨大な数の核分裂連鎖反応を発生させるが、時間経緯との関連で、臨界にともなうプラスの反応度の変化と、同時に、1億℃までの昇温過程におけるドップラー効果にともなうマイナスの反応度の変化、すなわち、時間依存のプラス・マイナスの反応度投入変化を図示せよ。この程度の知識もないくせに、核など解説するものではない。(マンハッタン計画では、そのあたりの詳細設計ができなかったために、実験で確認した。)
日本では、核兵器について、まともな大学や研究機関に所属する専門家は、絶対に、口出ししていません。それは、研究経験のない分野のことに対し、もっともらしく解説することへの後ろめたさ、さらに、組織内摩擦のため。軍事評論家や在野の物理学者の解説は、核計算の経験がないため、信頼に値するほど的確な解説や評価になっていません。数少ない論者の中で、基本的なことを網羅している唯一の専門家は、今井隆吉氏だけ(http://www.cnfc.or.jp/j/proposal/reports/index.html)。今井氏は、核兵器の基本中の基本問題、すなわち、(1)核兵器の中性子源の問題、(2)プルトニウムの自発核分裂の問題、(3)プルトニウム238と241に伴う発熱の問題、(4)米国が1962年に実施した原子炉級プルトニウムの実験は、軽水炉プルトニウムではなく、英国プルトニウム・発電二重目的炉で生成されたものであること、さらに、(5)世界で、これまで、軽水炉プルトニウムで実験したことも、(6)実戦配備の例もないことを、十分に認識しています。