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国際宇宙ステーションは成功例か

2008-03-11 20:10:27 | Weblog
米ロ主導で世界のいくつかの先進国の参加によって進められている国際宇宙ステーション(International Space Station ; ISS)建設計画が最終段階に達している。NASAは、日本の実験棟「きぼう」の「保管室」モジュールを搭載したエンデバーの打ち上げに成功し、いよいよ、本体へ接続することになる。全体の建設予算の大部分は米国負担。

「きぼう」だけでも一兆円弱、本体全体の大部分を米国が負担するとは言え、全体で数兆円の建設費を投入する計画に将来的意味があるのか疑問だ。それは米国の国際政治力を発揮し、世界の求心力を強める政治的戦略以外にどのような意味が見出せるのか。

私は、数年前、宇宙機構(当時、宇宙事業団)筑波センターを訪れ、「きぼう」の実物大実験装置を見学したことがある。アルミニウム製の意外と小さな空間だ。
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発電コストの政府系評価は信頼に値するか

2008-03-10 21:01:39 | Weblog
発電コストの評価は単純でない。どのような想定をするかにより、大きく変わる。これまで、政府は、原子力発電が他より、有利という結果を公表してきた。

政府系の総合エネルギー調査会原子力部会の結果(1999年)は、安い順から、次のとおり。

原子力5.9円/kWh
LNG6.4
石炭6.6
石油12.2
水力13.6

しかし、勝田忠広・鈴木利治両氏が第55回公益事業学会全国大会で発表した「原子力発電の経済性に関する考察」に拠れば、まったく異なった結果になった(2005年)。

LNG4.8円/kWh
石炭4.9
原子力5.7
水力7.2
石油8.7

原子力に対し、まったく異なった結果になっている。両氏は原子力部会の計算に含まれる一部の間違いも指摘している。

よって、政府系報告には、政策に都合のよい結果が出るような計算操作がなされており、鵜呑みにできない。第三者機関による客観的評価が欠かせない。







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「軽水炉プル実験は実施済みか」(2008-03-06)の研究会議事録

2008-03-10 16:51:52 | Weblog
高木仁三郎『プルトニウムの未来』(岩波新書、1994)のp.10には、米科学アカデミーの報告書(1994)を引用して、「実質的に、いかなる組成のプルトニウムも核兵器製造のために利用できる」と、さらに、「つい最近まで、なかなか詳しいことが公表されなかったが、じつはアメリカは、実際に原子炉級のプルトニウムを用いて核実験を行っており、きちんとした核爆発を起こさせるのに成功している」と記されている。

前半の引用内容は、米国が核不拡散政策を推進するために主張している政治的戦略であって、実験的に証明されていない。その報告書には、続けて、「ただし、すべての組成が同様に便利であり有効であるわけではない」とも記されている。高木氏は意識的にこの部分を削除した。

後半の説明について、その実験は、1962年に実施されていた。その事実は、1977年に公表されていたにもかかわらず、高木氏は、意識的にその事実をふせて議論した。1962年に、米国には、確かに、シッピングポート、ヤンキーロー、ドレスデンという3基の商用軽水炉が運転中であったが(日本原子力産業会議編『世界の原子力発電開発の動向』、2000)、軽水炉の4メートルの長尺燃料を再処理できる商用再処理工場は、米国では、まだ、稼動していなかった。軍用再処理工場では、特別な手段を選択しない限り、軽水炉の長尺燃料は処理できない。米国初の商用ウエストバレー再処理工場は、1963年に着工し、1966年に稼動開始したはず。

よって、米国の核実験に利用されたプルトニウムは、米軽水炉の燃料を再処理して抽出した原子炉級プルトニウムではない。

では、そのプルトニウムの正体は、何か、誰でも疑問に思うはず。高木は、その問題を運動論の立場から悪用し、曖昧にして議論した。米エネルギー省広報局資料(1994)によれば、その「原子炉級プルトニウム」は、米英相互防衛協定の下に、英国から供給されたものであった。

1962年当時、英国には軽水炉はなかった。英国の最初の軽水炉は1995年に運転開始したサイズウェルBである。運転中の発電炉は、発電・プルトニウム生産二重目的炉のコールダーホール(1,2,3,4号機、黒鉛減速炭酸ガス冷却、電気出力各6万キロワット、天然ウラン燃料)とチャペルクロス(1,2,3,4号機、黒鉛減速炭酸ガス冷却、電気出力各6万キロワット、天然ウラン燃料)だけ(日本原子力産業会議編『世界の原子力発電開発の動向』、2000)。

コールダーホールでは、燃焼度900MWD/Tで燃料を取り出せば、プルトニウム239の割合は、92%になり、兵器級プルトニウムの割合の93%に近い物に、そして、コールダーホール改良型の日本の東海1号機は、燃焼度3000MWD/Tで、プルトニウム239が79パーセントでプルトニウム240が18パーセントとなる(今井隆吉『IAEA査察と核拡散』、p.104、日刊工業新聞社、1994)。

米エネルギー省広報局資料には、確かに、1970年代から、プルトニウム240が19パーセント以上(物理的根拠がない)のものが原子炉級プルトニウムと定義し直されたことが明記されているが、実験に利用されたものがそうであるとの直接的な証拠が何もない。米エネルギー省広報局資料ではプルトニウム同位体組成を機密にしている。第三者が確認できないものは学術文献でない。

よって、米国で1962年に実施された核実験は、原子炉級プルトニウムでない可能性もあり(現実的には東海1号機の条件のプルトニウム239が79パーセントでプルトニウム240が18パーセント)、実験に成功しても当たり前であって、特筆すべき情報でない。軽水炉プルトニウムとは、(1)軽水炉で生成され、(2)プルトニウム239が55-60パーセントであること、(3)プルトニウム240が25パーセント程度であること、(4)特に発熱への寄与の大きなプルトニウム238が1.3パーセント(兵器級の100倍)と高いこと等。しかし、英国の物はこれらの条件をまったく満たしていない。

公開されているどの文献にも、「米国は、これまで、軽水炉の原子炉級プルトニウムで核実験したことがない」と断言している。私の文献調査でもそのような結論になっている。実験データがない。軽水炉プルトニウムは、核不拡散政策の下で、予防原則に則り、安全側に管理されているだけ。

軽水炉の原子炉級プルトニウム(プルトニウム239の割合が約60%)では、克服困難なふたつの問題がある。

ひとつは、プルトニウム238のアルファ崩壊による加熱及びプルトニウム241がアメリシウム241に崩壊する時のアルファ崩壊とガンマ崩壊による加熱が大きすぎ(約200ワット)、プルトニウム球と周辺の起爆用火薬や電子制御系を溶融するほどの温度にしてしまうこと(金属プルトニウムの融点は、意外と低く、639.5℃(『理化学辞典』岩波書店))。わずか数キログラムの軽水炉プルトニウムでさえ約200ワットにも達し、より大型原爆ならば、数十キログラムのプルトニウムが必要となるため、発熱量は、1キロワットを越える。こでは熱設計・構造設計のしようがない。

もうひとつは、プルトニウム240からの自発核分裂中性子が少なくとも毎秒一万個と多く、部分的に早く核分裂が進行する早産原爆になりやすいこと。

兵器級プルトニウムを利用した長崎原爆は、安全のため、投下寸前に組み立てることにより、熱の問題に対応していた。原子炉級プルトニウムの場合、米科学アカデミー報告書(使用数分前に組み立てるか、あるいは、火薬の外側からの放熱を工夫するというような、単なる漠然とした考え方のみ)に記されているとおり、解決策は、いまだに、見出されていない。その問題を解決できる具体的な構造設計と熱設計が立証できなければ、軽水炉級プルトニウムで実用的な原爆ができると言えない。

米エネルギー省広報局資料には、米国の核兵器は、すべて兵器級プルトニウムを利用していることを明記されている。さらに、原子炉級プルトニウムを利用しない理由として、製造施設の建設にカネがかかり過ぎること、従事者の被ばくが多くなること、熱の問題、軍関連規制法問題等、現実的に対応ではない深刻な問題があることも認めている。

米国は、プルトニウム生産炉で燃焼度を上げて、軽水炉級模擬プルトニウムを生成することができたはずだが、そうすると燃料被覆管破損の問題が生じるのか。しかし、当時の英国の商用炉でも五十歩百歩のはず。米国の意図が何だったのか分からない。「商用炉のプルトニウム」という事実関係が必要だったという政治目的以外に明確な理由は見出せない。

軽水炉の高燃焼度燃料の再処理で抽出されたプルトニウムを利用して現実的に管理可能で有効な原水爆が製造できると考えているひとは工学を知らない素人。兵器級の長崎の例を見よ! いまの時代、非常事態が生じてから数分間で組み立てるようなことをしていたら、相手に叩きのめされる。核戦争とはそのようなものだ。そんな愚行を選択する国はどこにもない。1万キロメートル離れた敵国にICBMで打ち込む数十分の間に、金属プルトニウムは、熱で溶融し、原水爆の機能を果たせなくなってしまう。

世界に軽水炉プルトニウムで製造した原水爆はひとつも存在しない。この現実が現実的運用の困難を証明している。

軽水炉プルトニウム利用という必要ない問題の議論は必要ない。兵器級プルトニウム生産炉の議論も必要ない。それは愚者の思考。

以上



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地球温暖化と何が相関関係にあるか

2008-03-09 20:40:04 | Weblog
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、90パーセントの確率で、炭酸ガスが原因と断定。しかし、研究者の中には、異を唱える者も少なくない。たとえば、東工大の宇宙物理研究者は、地球の温度変化と宇宙線照射量変化との相関関係を挙げた。いろいろな提案があってよい。

ロニー・トンプソン等は、世界中の氷河から65万年前までの氷床コア試料を採取し、その中に閉じ込められていた炭酸ガス量を測定、そして、温度変化との相関関係を見事に示した。

温度の急上昇は産業革命後の200年間に顕著だ。
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温暖化ガスと無関係な発電技術は存在するか

2008-03-09 20:10:39 | Weblog
答は「ない」。

地球温暖化が特定のいくつかのガスに起因するか否か、ここでは問わない。

火力発電のように運転中に大量の温暖化ガスを排出しなくても(まったく排出しなくても)、発電技術システムとして分析すれば、風力も原子力も、温暖化ガスと無関係でない。

特に、原子力に着目すれば、発電所建設資材の生産から、燃料加工、発電所運転中のボイラー重油燃焼や非常用ディーゼル発電機の月1回の監視試験のための軽油燃焼、長期にわたる高レベル放射性廃棄物貯蔵所の建設資材や管理に必要な資材の生産等。

いま、公表されている原子力の温暖化ガスの評価には、すべての要因が考慮されてないのが気がかりだ。
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日本のロケット技術の国際ランキング

2008-03-09 19:49:15 | Weblog
日本の衛星打ち上げロケットH2Aのエンジンの出力密度は世界一。打ち上げ成功率は、当初、40パーセント弱と批判の対象だったが、最近に限れば、欧米ロ中に横並びの93パーセントと高い。

過去に打ち上げた絶対数からすれば、日本は、一桁以上少なく、技術評価において、他と同一基準で比較できない。衛星打ち上げだけでなく、米ロのような有人衛星・スぺースシャトル・宇宙ステーションの技術まで含めれば、日本の技術は、まだまだ、問題外。
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なぜ英国産プルなのか−読者質問への回答−

2008-03-09 12:53:51 | Weblog
2008-03-09 12:40:36 に、上野さんから「なぜ英国なのか」なるタイトルで、「当時、米国には、プルトニウム生産炉があり、燃焼度を高くすれば、目的のプル同位体組成を実現できると思いますが、いかがでしょうか」という質問をいただいた。私が代表を務める研究会でこの分野に詳しい会員に聞いた。以下、その情報を基にまとめたことを明記しておく。

確実なことは言えない。工学的判断から、あくまで、推定に過ぎぬ。米国のプルトニウム生産炉の燃料の被覆材は、アルミニウムであり、燃焼度を上げると、破損する可能性が考えられる。そのため、燃焼度を上げることができない。しかし、英国のもの(マグネシウム合金)でも五十歩百歩のはず。
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核兵器の監視試験(サーベランス・テスト)

2008-03-09 01:33:32 | Weblog
核兵器の管理にはカネ・人・時間がかかる。大部分の戦略核は、脅しの材料だが、約千五百発の実戦配備の戦術核については、年1回の割合で監視試験を実施。監視試験とは安全・作動確認試験。米国は検査と運搬の様子の映像を公開。

監視試験でミサイルの外観検査・構造材の腐食や亀裂検査・ミサイル燃料検査・核弾頭の内部と外観検査・起爆装置と制御電子機器検査を実施し、もし、異常が発見されれば、ミサイルを貨物列車に乗せ、軍需工場まで運搬して修理する。修理の必要性のあるものは希に発生。

原水爆は、原爆のプルトニウム241や水爆のトリチウムの半減期を考慮した設計・取替え作業を実施しなければならず、大変な管理作業。膨大な税金を湯水のごとく注入し、何の役も果たさない原水爆。
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反軍核の論理

2008-03-08 19:00:58 | Weblog
日本の原子力産業は形式的に反軍核の立場を表明。世界が、民生原子力を推進すれば、意図と無関係に、蓄積された知識・技術によって、軍事核が現実のものとなる。

しかし、このことは、軽水炉プルトニウムで原水爆ができるということを意味するものでなく、あくまで、知識・技術を意味する。

冷戦期、米ソは、それぞれ、25000発の原水爆を保有。それは、相互の恐怖心と競争心によってもたらされた歴史的愚行に過ぎぬ。冷戦構造崩壊後、戦略核兵器削減条約により(戦略核と戦術核の違いの理解、戦術は戦略の前線)、それぞれ、15000発まで削減。しかし、個々の最大爆発規模は広島投下原爆の百万倍に匹敵する狂気の世界。

いまでも、米ロの大陸間弾道ミサイル(ICBM)の射程距離は、120000キロに及び、相互に、世界のいかなる国も射程内に入れている。核保有国の相互不信。

世界の軍核の大部分を占有する米ロは、即刻、核兵器廃絶交渉を開始せよ! 米ロ初め世界は、特に、西部邁『核武装論』(講談社現代新書、2007)等のような日本の低レベルな右翼論壇関係者は、軍核を抑止核として正当化すべきでない。

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水爆の設計はどうなっているか−読者質問への回答−

2008-03-06 17:57:16 | Weblog
2008-03-06 17:39:53に、上野さんからタイトル 「水爆設計理論」で、「原爆設計理論についてはよく分かりました。では、水爆設計理論は、どうなっているのですか」という質問をいただいた。

原爆の原理と設計の難しさが分かれば、水爆の考え方は簡単。小型原爆のプルトニウム球の周囲に核融合物質(重水素とトリチウム)を配置し、原爆で発生した1億℃の熱で核融合を起こすのが、「中性子爆弾」。核融合で生じる14MeV中性子で戦車や建物の中の兵士を殺すための兵器ですが、この中性子爆弾を大型化したものが実戦配備されている水爆。米国ではそのためのトリチウム(半減期12年、リチウムの(n,α)反応で生成)は商用軽水炉で生成している。
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