世の中の知ったか振りした素人(核計算の経験もない物理学者や軍事評論家)にふたつの質問。広島・長崎原爆ともわずか1キログラムの核分裂性物質しか燃焼していない。設計の精度を検証するためのウランやプルトニウムによる臨界実験はマンハッタン計画において実施済み。(1)高速核分裂を利用した広島型原爆のウラン235臨界量は、約30キログラムであるが、設計の不確定や高温でのドップラー効果による負の反応度の印加を考慮しても3割増しで十分であるにもかかわらず、なぜ、倍の60キログラムも使用されたのか。(2)同じく、高速核分裂を利用した長崎型原爆のプルトニウム239臨界量は、約8キログラムであるが(爆縮すると4キログラムで臨界)、設計の不確定や高温でのドップラー効果による負の反応度の印加を考慮しても3割増しで十分であるにもかかわらず、なぜ、臨界量の約3倍の12キログラムも使用されたのか。これらの質問に答えよ。
4月7日午前、千葉県にある非破壊検査会社から放射性同位元素のイリジウム(Ir)192が盗まれた。イリジウム192は、鉄製の放射線遮蔽容器に収納されており、いまのままならば、人体への影響なし。
イリジウム192は、直径約１ミリメートルの天然イリジウムの線に原子炉内で熱中性子を照射し、Ir191(n,γ)Ir192反応で生成。その反応断面積は1100バーン。イリジウム192は、半減期74日、強い316,488keV等のガンマ線を放出。
使用目的は、イリジウム192からのガンマ線を金属の構造物に透過させ、金属内部の亀裂・欠陥等の有無の確認。
非常に強い放射能を有しており、遮蔽容器から取り出して身辺に置けば、放射線障害どころか、死亡する。非破壊検査用のイリジウム192が産業現場から盗まれたり、運搬途中で紛失し、これまでに国内外で多くの被ばく・死亡事故発生。
遮蔽容器内には、直径約2ミリメートル長さ約10センチメートルのステンレススチール管にイリジウム192が密封されている。ピカピカに光っていて高価感があるため、何も知らない人は、家庭に持ち帰り、居間等に置くと、家族全員が死亡することもある。特に赤ちゃんへの影響は、早く、大きい。危険性が高いため、絶対に遮蔽容器から取り出してはダメ。盗んだ人は出来るだけ早く警察へ届け出ること。死亡事故につながるため、ステンレススチール管をどこかに放置するな。
イリジウム192は、直径約１ミリメートルの天然イリジウムの線に原子炉内で熱中性子を照射し、Ir191(n,γ)Ir192反応で生成。その反応断面積は1100バーン。イリジウム192は、半減期74日、強い316,488keV等のガンマ線を放出。
使用目的は、イリジウム192からのガンマ線を金属の構造物に透過させ、金属内部の亀裂・欠陥等の有無の確認。
非常に強い放射能を有しており、遮蔽容器から取り出して身辺に置けば、放射線障害どころか、死亡する。非破壊検査用のイリジウム192が産業現場から盗まれたり、運搬途中で紛失し、これまでに国内外で多くの被ばく・死亡事故発生。
遮蔽容器内には、直径約2ミリメートル長さ約10センチメートルのステンレススチール管にイリジウム192が密封されている。ピカピカに光っていて高価感があるため、何も知らない人は、家庭に持ち帰り、居間等に置くと、家族全員が死亡することもある。特に赤ちゃんへの影響は、早く、大きい。危険性が高いため、絶対に遮蔽容器から取り出してはダメ。盗んだ人は出来るだけ早く警察へ届け出ること。死亡事故につながるため、ステンレススチール管をどこかに放置するな。
続き
(9)耐震スペクトルの妥当性
「原告らは、基準地震動SS における想定東海地震や仮想的東海地震の耐専スペクトルはM7.4である石花海海盆西縁の断層帯による地震帯による地震のスペクトルにも及ばないから、耐専スペクトルは過小評価であることは明らかであると主張する。(p.143)」
「しかしながら、被告は、石花海海盆西縁の断層帯による地震について、改正指針に基づき、アスペリティを敷地近傍に配置するなどの不確かさ(ばらつき)を考慮した上で、応答スペクトルに基づく手法及び断層モデルを用いた手法による地震動評価をそれぞれ行っており、その評価結果としては、上記のとおり不確かさを考慮したこと及び同断層帯が敷地に比較的近い断層であることから、大きめの結果が得られている。・・・したがって、耐専スペクトルが過小である可能性があるからといって基準地震動SS が妥当でないということはできず、原告らの主張は採用できない。(p.143-144)」
(10)基準地震動S1,S2との関係
「原告らは、基準地震動SS の主要周期帯の応答スペクトルが基準地震動S2と同等の大きさになっていることなどを根拠に、被告の策定した基準地震動SS は改正指針の要請に合致していないと主張する。(p.144)」
「しかしながら、基準地震動S2は基準地震動S1の設計用応答スペクトルに3割程度の余裕を見込んで定められているという形で基準地震動策定過程における不確かさが考慮される一方、基準地震動SS は、アススペリティを仮想的に本件原子炉施設敷地直下に配置した厳しい条件についても評価することで基準地震動策定過程における不確かさが考慮されている。・・・結果的に基準地震動SS の主要周期帯の応答スペクトルが基準地震動S2 と同等の大きさとなっていることは何ら不合理ではなく、原告らの上記主張は採用できない。(p.144-145)」
(11)基準地震動SSの年超過確率
「原告らは、被告が策定した基準地震動SS の年超過確率は10-3 – 10-4/サイト・年のレベルであるが、少なくとも現行の技術指針で設定されている基準地震動S2 の発生確率である10-4 – 10-5/サイト・年のレベルよりも一桁頻度が高く、それだけ過小評価になっていると主張する。(p.145)」
「しかしながら、基準地震動SSの年超過確率は、原子力安全・保安院の要請文書に基づき、将来の確率論的評価の安全規制への本格的導入の検討に役立つ情報として可能な限り活用していくとの観点から報告しているものであり、地震動レベルを決めるための規制要求とされているものではない。・・・よって、基準地震動SS の年超過確率が高いことを根拠に基準地震動SS が過小であるとする原告の主張は採用できない。(p.145)」
(12)基準地震動S1、S2の決め方
「原告らは、・・・基準地震動策定の基礎となっている大崎の方法(標準応答スペクトル)は過小評価となっていると主張する。(p.147)」
「大崎の方法とは、岩盤上における地震観測資料を整理し、使用した個々のデータを吟味した上で工学的な検討を加えて提案されたもので、剛構造である原子炉施設の固有周期が集中する0.1秒から0.3秒程度の領域において応答加速度が最も大きくなるようにその形状が定められ、その領域において最も手厚い設計ができるようになっており、発電所の耐震設計を行うに当たり広く用いられているものであるが、・・・兵庫県南部地震によって、大崎の方法の妥当性が疑問視された事実はない。また、耐震設計審査指針の改正にかかわる耐震指針検討分科会の議論においても大崎の方法が過小評価であるため是正しなければならないとの共通認識が示されたことはない(p.147)」
「基準地震動S1,S2の策定の際に、想定東海地震と安政東海地震及び南海トラフ沿いのM8.5の地震について標準スペクトル(大崎の方法)に加えて断層モデルによる地震動特性の推定(小林の方法)も行なわれているが、同方法によって推定された地震動はいずれも標準応答スペクトル(大崎の方法)を大幅に下回っていることから、原告らは、断層モデルを用いた地震動特性の推定の方法は不十分であると主張する。(p.148)」
「しかしながら、断層モデルを用いた手法(小林の方法)は、地震動の応答スペクトルを推定する手法の1つであり、断層面を小領域に分割し、断層面上を破壊が伝播する際に各小領域から放出されるインパルスを重ね合わせることによって応答スペクトルを算出するものであるところ、実際の地震観測記録と比較してその妥当性が確認されている。・・・したがって、断層モデルを用いた地震動特性の推定の方法が不十分であるとの原告の主張は採用できない。(p.148-149)」
「原告らは、現在の知見からすれば、基準地震動の選定に際しては、アスペリティの存在することを前提にした強震動予測の方法を採用して、いかなる地震動が発生するかを予測すべきであるところ、本件原子炉施設の設置許可申請時の方法はアスペリティを考慮しない古い方法であり、定められた基準地震動は過小評価なものになっていると主張する。(p.149)」
「しかしながら、前述のとおり、旧指針に基づく地震動評価では、標準応答スペクトル(大崎の方法)を主とし、震源域内の地震については断層モデルを用いた方法(小林の方法)を併用した上で、さらに工学的判断により余裕を見込んで基準地震動S1,S2が策定されている。基準地震動S1の設計用応答スペクトルについては、選定した安政東海地震の応答スペクトルを包絡するように定め、結果として、基準地震動S2の選定地震である南海トラフ沿いのM8.5の地震の応答スペクトルを上回ったものとなっている。したがって、基準地震動S1,S2が過小なものとなっているとの原告らの主張は採用できない。(p.149-150)」
「被告は、耐震設計審査指針の改正に係わる審議を契機として、平成17年1月から本件原子炉施設の耐震裕度向上工事を実施しているが、本件工事における目標地震動は基準地震動S2 にさらに余裕を持たせた結果約1000ガルとなり、中央防災会議による想定東海地震の地震動の2ないし3倍となっている。原告らは、本件原子炉施設にそのような地震動が襲う可能性を被告自ら認めるものと主張する。(p.150)」
「本件工事は、現状の耐震安全性が確保されていることを前提として、その耐震上の余裕をさらに向上させるべく自主的に行なうものであると認められるから、原告らの主張は採用できない。(p.150)」
「原告らは、本件原子炉施設には中央防災会議の見直されたモデルを基にした地震動よりも遥かに強い地震動が襲う可能性があることから、本件原子炉施設の耐震安全性は確保されたとはいえないと主張する。さらに、同モデルが提供する本件原子炉施設敷地の地震動を基に耐震安全性を確認する作業を行ったとしても、耐震安全性が確認されたことにはならないと主張する。(p.150)」
「しかしながら、前述のとおり、見直されたモデルは防災対策の観点から合理的なものであり、証拠及び弁論の全趣旨によれば、同モデルは、遠方の強化地域の外縁を決定したり、強化地域全体や静岡県全域といった拡がりでどの程度の被害が予想されるかを見積もるためだけではなく、震源域内を含む各地点の地震波形等の検討結果を防災対策に活用することも意図されていると認めることができるから、同モデルによって耐震安全性の確認を行うことは何ら不合理ではない。(p.150-151)」
「原告らは、見直されたモデルの地震動に基づいて応答スペクトルを解析してみても、固有周期1秒付近のピークに基準地震動S1,S2を上回る応答スペクトルが示されることから、同モデルによる耐震安全性は確認されていないと主張する。(p.152)」
「しかしながら、前述のとおり、本件原子炉施設の安全上重要な建物・建築・構築物及び機器・配管の固有周期は0.3秒程度以下の短周期であるところ、一般に、1次固有周期(固有周期のうち最も周期真長いものをいう)が0.5秒程度以下の固有周期の短い構造物に対しては、加速度に対する応答が支配的であるのに対し、1次固有周期が0.5秒程度以上の固有周期の長い構造物にたいしては、速度に対する応答が支配的であることから、速度振幅の与える影響は小さく、耐震安全上問題となるものではないと認められる。(p.152)」
「原告らは、想定東海地震と東南海地震・南海地震とが連動する場合には、想定東海地震よりも遥かに強い地震動が本件原子炉施設を襲うことが考えられるところ、その地震動に対する耐震安全性は確認されていないと主張する。(p.153)」
「しかしながら、証拠及び弁論によれば、被告は、中央防災会議の東南海・南海地震等に関する専門調査会において計算された、想定東海地震が東南海地震・南海地震と連動した場合の地震動に対する本件原子炉施設の耐震安全性を確認していることが認められる。(p.153-154)」
「原告らは、安政東海地震タイプや宝永地震タイプの地震が想定東海地震の震源域を含むはるかに広い震源域を有するにもかかわらず、本源原子炉施設敷地における安政東海地震タイプや宝永地震タイプの計算波形が想定東海地震の計算波形による応答スペクトルの平均以下となっていることを捉え、東南海地震・南海地震のモデルは不十分であると主張する。(p.155)」
「しかしながら、内閣府から提供された地震波形について、本件原子炉施設敷地での地震波形を見ると、東南海・南海地震が連動した場合でも、東海地震単独の場合と比べて、強震動の大きさがほとんど変わらず、むしろ最大加速度が小さくなっている・・・東南海・南海地震のモデルが不十分であると断じることはできず、原告らの主張は採用できない。(p.155-156)」
「原告らは、被告が採用した耐震設計の手法では、鉛直方向の地震力が適切に考慮されていない、地震時の固有周期の変動が考慮されていない、地震時の制御棒挿入性が確認されていない、経年変化事象があることを前提とした耐震設計となっていない、本件原子炉施設の機器等の安全余裕が非常に少ない、余震の影響が考慮されていないなどとして、耐震安全性が確認されたことにはならないと主張している。(p.156-157)」
「兵庫県南部地震の観測記録の水平方向の最大加速度の発生時刻における水平方向に対する鉛直方向の加速度の比を分析した結果、平均値0.1程度、最大値0.3程度という分析結果が得られており、2分の1を大きく下回ることから、旧指針が鉛直方向の地震動を水平方向の地震動の2分の１とみていることは不合理ではない。・・・多度津工学試験所において実施された耐震信頼性実証試験においても、上下動による影響が小さいことが確認されているところである。(p.158)」
「原告らは、中央防災会議のモデルの地震動データに基づいて加速度応答スペクトルを解析しても、本件原子炉施設周辺では設計用限界地震S2を超える加速度応答スペクトルが発生すると主張し、・・・S2を超える加速度を発生させる地震動により、機器(主蒸気系配管、復水給水系、制御棒駆動機構ハウジング)に過大な変形、き裂、破損等が生じる蓋然性は高いと主張する。(p.160)」
「原告らのいう本件原子炉施設周辺とは、焼津・藤枝付近をいうものと思われるが、同地点の地震動は、本件原子炉施設敷地とは地震波の伝藩特性や地盤特性の条件の異なる他の地点の地震動に関するものであるため、これらを単純に比較することは適切でない。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.160)」
(9)耐震スペクトルの妥当性
「原告らは、基準地震動SS における想定東海地震や仮想的東海地震の耐専スペクトルはM7.4である石花海海盆西縁の断層帯による地震帯による地震のスペクトルにも及ばないから、耐専スペクトルは過小評価であることは明らかであると主張する。(p.143)」
「しかしながら、被告は、石花海海盆西縁の断層帯による地震について、改正指針に基づき、アスペリティを敷地近傍に配置するなどの不確かさ(ばらつき)を考慮した上で、応答スペクトルに基づく手法及び断層モデルを用いた手法による地震動評価をそれぞれ行っており、その評価結果としては、上記のとおり不確かさを考慮したこと及び同断層帯が敷地に比較的近い断層であることから、大きめの結果が得られている。・・・したがって、耐専スペクトルが過小である可能性があるからといって基準地震動SS が妥当でないということはできず、原告らの主張は採用できない。(p.143-144)」
(10)基準地震動S1,S2との関係
「原告らは、基準地震動SS の主要周期帯の応答スペクトルが基準地震動S2と同等の大きさになっていることなどを根拠に、被告の策定した基準地震動SS は改正指針の要請に合致していないと主張する。(p.144)」
「しかしながら、基準地震動S2は基準地震動S1の設計用応答スペクトルに3割程度の余裕を見込んで定められているという形で基準地震動策定過程における不確かさが考慮される一方、基準地震動SS は、アススペリティを仮想的に本件原子炉施設敷地直下に配置した厳しい条件についても評価することで基準地震動策定過程における不確かさが考慮されている。・・・結果的に基準地震動SS の主要周期帯の応答スペクトルが基準地震動S2 と同等の大きさとなっていることは何ら不合理ではなく、原告らの上記主張は採用できない。(p.144-145)」
(11)基準地震動SSの年超過確率
「原告らは、被告が策定した基準地震動SS の年超過確率は10-3 – 10-4/サイト・年のレベルであるが、少なくとも現行の技術指針で設定されている基準地震動S2 の発生確率である10-4 – 10-5/サイト・年のレベルよりも一桁頻度が高く、それだけ過小評価になっていると主張する。(p.145)」
「しかしながら、基準地震動SSの年超過確率は、原子力安全・保安院の要請文書に基づき、将来の確率論的評価の安全規制への本格的導入の検討に役立つ情報として可能な限り活用していくとの観点から報告しているものであり、地震動レベルを決めるための規制要求とされているものではない。・・・よって、基準地震動SS の年超過確率が高いことを根拠に基準地震動SS が過小であるとする原告の主張は採用できない。(p.145)」
(12)基準地震動S1、S2の決め方
「原告らは、・・・基準地震動策定の基礎となっている大崎の方法(標準応答スペクトル)は過小評価となっていると主張する。(p.147)」
「大崎の方法とは、岩盤上における地震観測資料を整理し、使用した個々のデータを吟味した上で工学的な検討を加えて提案されたもので、剛構造である原子炉施設の固有周期が集中する0.1秒から0.3秒程度の領域において応答加速度が最も大きくなるようにその形状が定められ、その領域において最も手厚い設計ができるようになっており、発電所の耐震設計を行うに当たり広く用いられているものであるが、・・・兵庫県南部地震によって、大崎の方法の妥当性が疑問視された事実はない。また、耐震設計審査指針の改正にかかわる耐震指針検討分科会の議論においても大崎の方法が過小評価であるため是正しなければならないとの共通認識が示されたことはない(p.147)」
「基準地震動S1,S2の策定の際に、想定東海地震と安政東海地震及び南海トラフ沿いのM8.5の地震について標準スペクトル(大崎の方法)に加えて断層モデルによる地震動特性の推定(小林の方法)も行なわれているが、同方法によって推定された地震動はいずれも標準応答スペクトル(大崎の方法)を大幅に下回っていることから、原告らは、断層モデルを用いた地震動特性の推定の方法は不十分であると主張する。(p.148)」
「しかしながら、断層モデルを用いた手法(小林の方法)は、地震動の応答スペクトルを推定する手法の1つであり、断層面を小領域に分割し、断層面上を破壊が伝播する際に各小領域から放出されるインパルスを重ね合わせることによって応答スペクトルを算出するものであるところ、実際の地震観測記録と比較してその妥当性が確認されている。・・・したがって、断層モデルを用いた地震動特性の推定の方法が不十分であるとの原告の主張は採用できない。(p.148-149)」
「原告らは、現在の知見からすれば、基準地震動の選定に際しては、アスペリティの存在することを前提にした強震動予測の方法を採用して、いかなる地震動が発生するかを予測すべきであるところ、本件原子炉施設の設置許可申請時の方法はアスペリティを考慮しない古い方法であり、定められた基準地震動は過小評価なものになっていると主張する。(p.149)」
「しかしながら、前述のとおり、旧指針に基づく地震動評価では、標準応答スペクトル(大崎の方法)を主とし、震源域内の地震については断層モデルを用いた方法(小林の方法)を併用した上で、さらに工学的判断により余裕を見込んで基準地震動S1,S2が策定されている。基準地震動S1の設計用応答スペクトルについては、選定した安政東海地震の応答スペクトルを包絡するように定め、結果として、基準地震動S2の選定地震である南海トラフ沿いのM8.5の地震の応答スペクトルを上回ったものとなっている。したがって、基準地震動S1,S2が過小なものとなっているとの原告らの主張は採用できない。(p.149-150)」
「被告は、耐震設計審査指針の改正に係わる審議を契機として、平成17年1月から本件原子炉施設の耐震裕度向上工事を実施しているが、本件工事における目標地震動は基準地震動S2 にさらに余裕を持たせた結果約1000ガルとなり、中央防災会議による想定東海地震の地震動の2ないし3倍となっている。原告らは、本件原子炉施設にそのような地震動が襲う可能性を被告自ら認めるものと主張する。(p.150)」
「本件工事は、現状の耐震安全性が確保されていることを前提として、その耐震上の余裕をさらに向上させるべく自主的に行なうものであると認められるから、原告らの主張は採用できない。(p.150)」
「原告らは、本件原子炉施設には中央防災会議の見直されたモデルを基にした地震動よりも遥かに強い地震動が襲う可能性があることから、本件原子炉施設の耐震安全性は確保されたとはいえないと主張する。さらに、同モデルが提供する本件原子炉施設敷地の地震動を基に耐震安全性を確認する作業を行ったとしても、耐震安全性が確認されたことにはならないと主張する。(p.150)」
「しかしながら、前述のとおり、見直されたモデルは防災対策の観点から合理的なものであり、証拠及び弁論の全趣旨によれば、同モデルは、遠方の強化地域の外縁を決定したり、強化地域全体や静岡県全域といった拡がりでどの程度の被害が予想されるかを見積もるためだけではなく、震源域内を含む各地点の地震波形等の検討結果を防災対策に活用することも意図されていると認めることができるから、同モデルによって耐震安全性の確認を行うことは何ら不合理ではない。(p.150-151)」
「原告らは、見直されたモデルの地震動に基づいて応答スペクトルを解析してみても、固有周期1秒付近のピークに基準地震動S1,S2を上回る応答スペクトルが示されることから、同モデルによる耐震安全性は確認されていないと主張する。(p.152)」
「しかしながら、前述のとおり、本件原子炉施設の安全上重要な建物・建築・構築物及び機器・配管の固有周期は0.3秒程度以下の短周期であるところ、一般に、1次固有周期(固有周期のうち最も周期真長いものをいう)が0.5秒程度以下の固有周期の短い構造物に対しては、加速度に対する応答が支配的であるのに対し、1次固有周期が0.5秒程度以上の固有周期の長い構造物にたいしては、速度に対する応答が支配的であることから、速度振幅の与える影響は小さく、耐震安全上問題となるものではないと認められる。(p.152)」
「原告らは、想定東海地震と東南海地震・南海地震とが連動する場合には、想定東海地震よりも遥かに強い地震動が本件原子炉施設を襲うことが考えられるところ、その地震動に対する耐震安全性は確認されていないと主張する。(p.153)」
「しかしながら、証拠及び弁論によれば、被告は、中央防災会議の東南海・南海地震等に関する専門調査会において計算された、想定東海地震が東南海地震・南海地震と連動した場合の地震動に対する本件原子炉施設の耐震安全性を確認していることが認められる。(p.153-154)」
「原告らは、安政東海地震タイプや宝永地震タイプの地震が想定東海地震の震源域を含むはるかに広い震源域を有するにもかかわらず、本源原子炉施設敷地における安政東海地震タイプや宝永地震タイプの計算波形が想定東海地震の計算波形による応答スペクトルの平均以下となっていることを捉え、東南海地震・南海地震のモデルは不十分であると主張する。(p.155)」
「しかしながら、内閣府から提供された地震波形について、本件原子炉施設敷地での地震波形を見ると、東南海・南海地震が連動した場合でも、東海地震単独の場合と比べて、強震動の大きさがほとんど変わらず、むしろ最大加速度が小さくなっている・・・東南海・南海地震のモデルが不十分であると断じることはできず、原告らの主張は採用できない。(p.155-156)」
「原告らは、被告が採用した耐震設計の手法では、鉛直方向の地震力が適切に考慮されていない、地震時の固有周期の変動が考慮されていない、地震時の制御棒挿入性が確認されていない、経年変化事象があることを前提とした耐震設計となっていない、本件原子炉施設の機器等の安全余裕が非常に少ない、余震の影響が考慮されていないなどとして、耐震安全性が確認されたことにはならないと主張している。(p.156-157)」
「兵庫県南部地震の観測記録の水平方向の最大加速度の発生時刻における水平方向に対する鉛直方向の加速度の比を分析した結果、平均値0.1程度、最大値0.3程度という分析結果が得られており、2分の1を大きく下回ることから、旧指針が鉛直方向の地震動を水平方向の地震動の2分の１とみていることは不合理ではない。・・・多度津工学試験所において実施された耐震信頼性実証試験においても、上下動による影響が小さいことが確認されているところである。(p.158)」
「原告らは、中央防災会議のモデルの地震動データに基づいて加速度応答スペクトルを解析しても、本件原子炉施設周辺では設計用限界地震S2を超える加速度応答スペクトルが発生すると主張し、・・・S2を超える加速度を発生させる地震動により、機器(主蒸気系配管、復水給水系、制御棒駆動機構ハウジング)に過大な変形、き裂、破損等が生じる蓋然性は高いと主張する。(p.160)」
「原告らのいう本件原子炉施設周辺とは、焼津・藤枝付近をいうものと思われるが、同地点の地震動は、本件原子炉施設敷地とは地震波の伝藩特性や地盤特性の条件の異なる他の地点の地震動に関するものであるため、これらを単純に比較することは適切でない。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.160)」
(1)耐震設計
「原告らは、中央防災会議の断層モデルによる想定東海地震が発生したときですら、本件原子炉施設の安全性が確保されているとはいえないが、それより規模の大きな安政東海地震規模及び南海トラフ沿いのM8.5の地震が発生したならば、本件原子炉施設が危険にさらされることは明らかであるから、少なくとも安政東海地震の最新の震源断層モデルからM8.4及びM8.5の地震が発生するモデルを用いて、最新の強震動予測の方法で、これらが起こったときの地震動を予測し、設計用地震動の妥当性を検討すべきであると主張する。(p.111)」
「しかしながら、前述のとおり、被告は、旧指針に基づいて、設計用最強地震として想定東海地震及び安政東海地震等を、設計用限界地震として南海トラフ沿いのM8.5の地震等をそれぞれ適切に選定し、その上で、後述のとおり、最新の知見が反映された見直されたモデル及び東南海・南海地震と連動した場合の断層モデルによる地震動を用いて本件原子炉施設の耐震安全性を確認しているから、十分に安全側に立った地震動予測がなされているものと認められる。また、後述のとおり、被告は基準地震動SSを策定するに当たって、仮想的東海地震(本件原子炉施設の敷地直下にアスペリティを配置したケース)を考慮し、仮想的東海地震が東南海・南海地震と連動する場合も考慮している。さらに、1号機、2号機においては、当時の知見に基づいて遠州灘沖合いの地震として想定東海地震を上回る安政東海地震のM8クラスの大地震を考慮している。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.111-112)」
(2)中央防災会議の断層モデル
「災害対策基本法に基づいて内閣府に設置された中央防災会議は、昭和54年5月作成の「地震防災対策強化地域の指定について(報告)において、想定東海地震の断層モデルを提示したが、平成13年にこれを見直している(証人溝上恵)。中央防災会議の見直されたモデルでは、本件原子炉施設直下ないし近傍にアスペリティが存在しないことが前提とされており、被告は同モデルこそが現時点で設定し得る最適のモデルであると主張しているが、本件原子炉施設直下ないし近傍におけるアスペリティの有無や想定震源域のプレート境界面の深さ(震源断層面の深さ)については、地震学上争いがあるところであり、前記のとおり、原告らは本件原子炉施設の直下にアスペリティが存在すると考えるべきであるなどと主張している。(p.112-113)」
「・・・証人石橋克彦は、東海地震の発生機構に関する研究は完全ではなく、駿河湾地域では純粋プレート間地震とは性格の異なる大地震も起こり得ると証言するが、現時点では作業仮説の域を出ず(証人溝上恵)、同証言を直ちに採用することはできない。(p.114)」
「原告らは、安政東海地震が最大の東海地震とはいえないと主張し、証人石橋克彦も同旨の証言をする。(p.115)」
「確かに、我々が知り得る歴史上の事象は限られており、安政東海地震又は宝永東海地震が歴史上の東海トラフ沿いのプレート境界型地震の中で最大の地震ではない可能性を否定することまではできない。しかし、このような抽象的な可能性の域を出ない巨大地震を国の政策上むやみに考慮することは避けなければならないし、現在確認できる過去の地震の中では、地震構造的には想定東海地震と東南海・南海地震が同時発生した地震である宝永地震が考えられ得る最大の地震モデルであるところ(証人入倉孝次郎)、宝永地震と安政東海地震による被害を比較すると、安政東海地震の方がより東海地方に最も大きな被害を与えていることを考えれば、防災上の見地から地震モデルを策定するにあたって安政東海地震の地震動を再現することは科学的・合理的な態度というべきである。(p.115)」
(3)アスペリティの深さ
「原告らは、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置には科学的な根拠がなく、本件原子炉施設直下ないし近傍にアスペリティが存在する可能性が十分にあると主張し、証人石橋克彦もその旨証言する。(p.115)」
「しかしながら、東海地震に関する専門調査会では、�“�小地震の解析による松村(1996)の固着域、��測地測量の結果から逆算したYoshioka et al.(1993)のバックスリップ域、��1年間のGPS観測結果から逆算した鷺谷(1998)のバックスリップ域等の総合的な評価、検討が行われた上でアスペリティ配置が定められたものと認められ、平成13年以降の観測データや研究結果にも本件原子炉施設の敷地直下にアスペリティが存在することを示唆するものはない(証人溝上恵)。・・・見直されたモデルにおける震度分布と実際に発生した安政東海地震や東南海地震の震度分布と対比して数十回にも及ぶパラメータスタディが行われ、矛盾がないことが確認されていることからも、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置は妥当なものと評価し得る(p.115-118)」
「原告らは、江戸時代の安政東海地震の被害記録から推定した震度分布の精度では、アスペリティの位置は検証できないと主張し、特に、想定東海地震の断層モデルを策定する拠り所とした「日本被害地震総覧」(宇佐美(1996))に掲載されている佐倉村の震度が歴史記録に裏付けられていない数字である疑いがあるほどと主張する。(p.118)」
「しかし、江戸時代後期の地震被害に関しては多くの地震史料が残されており、宇佐美龍夫の「日本被害地震総覧」は我が国で最も権威ある歴史地震カタログであると位置づけられていることからすれば、そこに記載された安政東海地震の震度は相当な精度をもったものであると認められ、佐倉村の歴史的記録が明記されないことをもってその信頼性が失われるものではない。したがって、原告らの上記主張は採用できない。(p.118)」
「原告らは、中央防災会議の断層モデルによる想定東海地震の震度分布は、安政東海地震の震度分布と整合していないと主張する。(p.118)」
「確かに、想定東海地震の震度分布では震度6弱、6強となっているにもかかわらず、安政東海地震の震度が7となっている地点も散見されるが、そのような場所は川沿いの地点や軟弱地盤の場所など地盤の特徴が際立っている地点であると考えられ(証人溝上恵)、それ以外の多くの地点は想定東海地震の震度分布と一致し、あるいは同分布に包絡されており、東海地震に関する専門調査会も、上記断層モデルによる震度分布は安政東海地震の震度分布をよく反映するものとして妥当であると評価しているところである。以上からすれば、中央防災会議の断層モデルによる震度分布は安政東海地震の震度分布と整合するといえるから、原告の主張は採用できない。(p.118-119)」
「証人石橋克彦は、東海地震に関する専門調査会が、強震波形計算による手法だけでなく、経験的手法を併用して初めて想定東海地震の妥当な震度分布を得たことを捉えて、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置の妥当性は確認されたとはいえないと証言する。(p.119)」
「しかし、同専門調査会が経験的手法を用いて修正を行ったのは、北西部の井那谷、諏訪等のごく一部の地域に限られ、ほとんどの地域では強震波形計算による手法で妥当な震度分布が得られていることから、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置の妥当性は十分に確認されていると診ることができる。(p.119)」
「原告らは、最近の知見によれば、実際のプレート境界面の深さは見直されたモデルのものよりも浅くなると推定されるから、見直されたモデルは不十分であると主張し、証人石橋克彦もその旨を証言する。(p.119)」
「しかしながら、最近のGPS観測、歪計及び地震計の観測によれば、�（神�12年ころから平成17年まで、浜名湖付近で長期的にスロースリップという異常地震変動が発生したこと、�∈廼瓠�愛知県東部において、短期的なスロースリップが発生したこと、��四国の沖合いから室戸の沖合いにおいて、海側のプレート浅部の付加体のある部分が滑ることによって、超長周期地震動が繰り返し発生していることが発見され、プレート境界面の固着の状態と蓄積した歪みの開放形態が深さ方向に階層構造をなしていることが明らかになった(証人溝上恵)。・・・想定震源域のプレート境界面の深さが見直されたモデルよりも浅いことを示唆する研究があるとしても、直ちに同モデルの合理性が失われるわけではないということができる。(p.119-120)」
「原告らは、見直されたモデルモデルにおけるプレート境界面の形状の根拠となっている野口(1996)について、同説のプレート境界面の等深線では、駿河トラフ東側の海底地形と滑らかに繋がらず、駿河トラフ付近で急角度で沈み込む形になるなどの点で不自然であり、プレート境界面の深さがより浅いIshida(1992)のモデルや石橋他(2003)のモデルを採用すべきであると主張する。(p.120)」
「しかしながら、原告らが示すモデルのうち、プレート境界面の深さが最も浅いIshibashi(1992)は、独立行政法人防災科学技術研究所の1980年ないし1988年の微小地震データに基づいているのに対し、野口(1996)は、同じ防災科学技術研究所の1980年ないし1993年の微小地震データに基づき、各ブロックごとの地下構造を用いて震源決定精度を向上させた上、特に上盤プレートとスラブが接する近傍の構造に注意を払いながらスラブの形状を推定しており、より信頼性の高い知見であるから、野口(1996) に基づいて震源断層面の深さを評価することは適切である。(p.120-121)」
(4)破壊開始点
「原告らは、見直されたモデルにおいて設定された破壊開始点は本件原子炉施設に及び得る地震動を推定する上で十分なものでなく、本件原子炉施設に最も大きい地震動をもたらす最も厳しい条件の破壊開始点を設定すべきである。(p.121)」
「しかしながら、東海地震に関する専門調査会は、破壊開始は地震活動から見た固着域の陸側にあること、過去の東南海地震の解析も含め、海溝型地震の破壊はそのほとんどが沈み込むプレートの深い所から始まっていることを理由に、破壊開始点を想定震源域の深いところに設定しているところ、この破壊開始点し近時観測された長期的スロースリップの発生箇所との間に物理的な整合性が認められる上、この破壊開始点を前提として作成された震源断層モデルは、安政東海地震の震度分布をよく再現しているもので、見直されたモデルにおいて設定された破壊開始点は適切なものである。(p.121)」
(5)超想定東海地震が発生する可能性
「原告らは、周期的に発生するプレート間地震が毎回同じ規模であるとは限らず、まれに超巨大地震となる可能性があり、東海地震についても、プレート境界に飲み込まれている銭州という海山の崩壊によって、強いアスペリテチィとしてかみ合っている可能性があるから、１万年に一度あるいは1000年に一度といった割合で非常に強烈な地震波を出す東海地震が発生する可能性があると主張する。(p.122)」
「しかしながら、東海トラフにおいては、震源断層面の幅から考えるとM9以上の地震が発生する蓋然性がなく、仮にM9クラスの地震を想定した場合でも、震源域が遠く離れていることから、その影響で東海地域の強震動が大きくなることはない(証人溝上恵)。・・・したがって、超巨大な東海地震が発生する可能性があるとの原告らの主張は科学的根拠を欠いており、採用できない。(p.122-123)」
(6)想定東海地震との連動及び同時活動
「原告らは、想定東海地震時には、枝分かれ断層、富士川河口断層帯、遠州断層系、御前崎台地のリニアメントや東南海地震・南海地震が同時に活動する可能性があり、その場合には想定東海地震単独発生の場合以上の強震動になることが確実であると主張する。(p.124)」
「しかしながら、プレート型境界地震発生時に枝分かれ断層がゆっくりと滑り、津波を起こす可能性は考えられるものの、このような未固結の地層に大きな歪みが蓄積それることは考えられないことから、プレート境界型の地震と同時に枝分かれ断層の活動が発生して強震動を強め合うことは考えられない(証人溝上恵)。証人石橋克彦も、枝分かれ断層による強震動とプレート境界型地震の主要動が同時に重なり合って強め合うことについてのメカニズムを具体的に説明せず、また、そのメカニズムを具体的に指摘する文献等も見当たらない(証人石橋克彦)。したがって、枝分かれ断層が主断層と同時に活動して地震動を強め合うことは作業仮説の域を出ず、原告らの主張は採用できない。(p.125)」
「原告らは、遠州断層系が想定東海地震と同時に活動して地震動を強め合う可能性があると主張する。(p.126)」
「しかしながら、遠州断層系は高角(垂直に近い傾斜)の横ずれ断層であり、想定東海地震のような巨大地震を引き起こすプレート間の低角(水平に近い傾斜)の逆断層とは性質が異なるものであるから、想定東海地震と遠州断層系による地震が同時に発生して主要動を強め合うことはおよそ考えられない(証人徳山明)。中央防災会議も想定東海地震の震度予測において同断層系を考慮するという考えに立っていない。したがって、原告らの上記主張は採用できず、被告が遠州断層系の地震動がプレート境界地震と同時に活動して地震動を強め合うことはないとして別途考慮をしなかったことは合理的であるということができる。(p.126-127)」
(7)御前崎台地のリニアメント
「原告らは、東海地震時に御前崎台地のリニアメントの断層活動が地震動の短周期のスペクトルを強めることも大いに考えられると主張する。p.127)」
「しかしながら、御前崎台地のリニアメントが大地震の際のいわゆる「おつき合い断層」として、受動的に変位した可能性を指摘する文献や、同リニアメントは、活動度が低く、単独に活動して大きな地震を引き起こすことは考えにくいとしている文献はあるものの、同じリニアメントに対応する地下の震源断層が能動的に地震を発生させたことを指摘する文献はなく、また、リニアメントの方向がまちまちで構造的系統性もないことから、リニアメントの地下に活断層が存在するということは考えられないと指摘しており、原告らの上記主張は採用できない。(p.127-128)」
(8)改正指針と耐震安全性
「原告らは、本件原子炉施設は、改正指針が策定を要求する基準地震動SSを用いた耐震安全性の確認がされていないと主張する。(p.129)」
「・・・本件原子炉施設について策定された基準地震動SSについては、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動及び震源を特定せずに策定する地震動がそれぞれ考慮されている。(p.141)」
「原告らは、アスペリティを本件原子炉施設敷地直下に置いた上で、プレート境界面の深さを15km程度にしたものを平均的な想定東海地震等のモデルとし、さらにプレート境界面の深さを浅くするなどして、より不確かさを考慮したものを「仮想的東海地震」としなければ改正指針の要求に従ったことにはならないと主張する。(p.141-142)」
「・・・原告等が主張するようにアスペリティを本件原子炉施設敷地直下に置いた上で、アスペリティの応力降下量をそのままにしてプレート境界面を浅く想定することは、安政東海地震等により本件原子炉施設に生じる地震動を大きく上回る地震モデルを想定することになるが、そのような大きな地震モデルは、可能性としてはともかく、科学的な根拠をもって合理的に想定し得るものではない。よって、原告らの主張は採用できない。(p.142)」
「原告らは、地震動の不確かさ(ばらつき)として、まれにしか破壊しないようなアスペリティの存在や枝分かれ断層による地震動をも考慮すべきであるし、すべり量や応力降下量も最大値を考慮すべきであると主張する。(p.142)」
「しかしながら、前述のとおり、南海トラフにおいては、非常に大きな地震動を発生させるアスペリティの存在が裏付けられておらず、仮に震源域内で1万年に1回しか動かないようなアスペリティを想定した場合でも、そこに溜められる歪みには物理的な限界があるので、100年ないし200年に1回動くアスペリティの応力降下量と1万年に1回動くアスペリティの応力降下量とが大きく変わることはないと認められる(証人入倉孝次郎)。また、前述のとおり、枝分かれ断層が強震動を発生させることはない。したがって、原告らの上記主張は採用できない。(p.142-143)」
「原告らは、中央防災会議の断層モデルによる想定東海地震が発生したときですら、本件原子炉施設の安全性が確保されているとはいえないが、それより規模の大きな安政東海地震規模及び南海トラフ沿いのM8.5の地震が発生したならば、本件原子炉施設が危険にさらされることは明らかであるから、少なくとも安政東海地震の最新の震源断層モデルからM8.4及びM8.5の地震が発生するモデルを用いて、最新の強震動予測の方法で、これらが起こったときの地震動を予測し、設計用地震動の妥当性を検討すべきであると主張する。(p.111)」
「しかしながら、前述のとおり、被告は、旧指針に基づいて、設計用最強地震として想定東海地震及び安政東海地震等を、設計用限界地震として南海トラフ沿いのM8.5の地震等をそれぞれ適切に選定し、その上で、後述のとおり、最新の知見が反映された見直されたモデル及び東南海・南海地震と連動した場合の断層モデルによる地震動を用いて本件原子炉施設の耐震安全性を確認しているから、十分に安全側に立った地震動予測がなされているものと認められる。また、後述のとおり、被告は基準地震動SSを策定するに当たって、仮想的東海地震(本件原子炉施設の敷地直下にアスペリティを配置したケース)を考慮し、仮想的東海地震が東南海・南海地震と連動する場合も考慮している。さらに、1号機、2号機においては、当時の知見に基づいて遠州灘沖合いの地震として想定東海地震を上回る安政東海地震のM8クラスの大地震を考慮している。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.111-112)」
(2)中央防災会議の断層モデル
「災害対策基本法に基づいて内閣府に設置された中央防災会議は、昭和54年5月作成の「地震防災対策強化地域の指定について(報告)において、想定東海地震の断層モデルを提示したが、平成13年にこれを見直している(証人溝上恵)。中央防災会議の見直されたモデルでは、本件原子炉施設直下ないし近傍にアスペリティが存在しないことが前提とされており、被告は同モデルこそが現時点で設定し得る最適のモデルであると主張しているが、本件原子炉施設直下ないし近傍におけるアスペリティの有無や想定震源域のプレート境界面の深さ(震源断層面の深さ)については、地震学上争いがあるところであり、前記のとおり、原告らは本件原子炉施設の直下にアスペリティが存在すると考えるべきであるなどと主張している。(p.112-113)」
「・・・証人石橋克彦は、東海地震の発生機構に関する研究は完全ではなく、駿河湾地域では純粋プレート間地震とは性格の異なる大地震も起こり得ると証言するが、現時点では作業仮説の域を出ず(証人溝上恵)、同証言を直ちに採用することはできない。(p.114)」
「原告らは、安政東海地震が最大の東海地震とはいえないと主張し、証人石橋克彦も同旨の証言をする。(p.115)」
「確かに、我々が知り得る歴史上の事象は限られており、安政東海地震又は宝永東海地震が歴史上の東海トラフ沿いのプレート境界型地震の中で最大の地震ではない可能性を否定することまではできない。しかし、このような抽象的な可能性の域を出ない巨大地震を国の政策上むやみに考慮することは避けなければならないし、現在確認できる過去の地震の中では、地震構造的には想定東海地震と東南海・南海地震が同時発生した地震である宝永地震が考えられ得る最大の地震モデルであるところ(証人入倉孝次郎)、宝永地震と安政東海地震による被害を比較すると、安政東海地震の方がより東海地方に最も大きな被害を与えていることを考えれば、防災上の見地から地震モデルを策定するにあたって安政東海地震の地震動を再現することは科学的・合理的な態度というべきである。(p.115)」
(3)アスペリティの深さ
「原告らは、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置には科学的な根拠がなく、本件原子炉施設直下ないし近傍にアスペリティが存在する可能性が十分にあると主張し、証人石橋克彦もその旨証言する。(p.115)」
「しかしながら、東海地震に関する専門調査会では、�“�小地震の解析による松村(1996)の固着域、��測地測量の結果から逆算したYoshioka et al.(1993)のバックスリップ域、��1年間のGPS観測結果から逆算した鷺谷(1998)のバックスリップ域等の総合的な評価、検討が行われた上でアスペリティ配置が定められたものと認められ、平成13年以降の観測データや研究結果にも本件原子炉施設の敷地直下にアスペリティが存在することを示唆するものはない(証人溝上恵)。・・・見直されたモデルにおける震度分布と実際に発生した安政東海地震や東南海地震の震度分布と対比して数十回にも及ぶパラメータスタディが行われ、矛盾がないことが確認されていることからも、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置は妥当なものと評価し得る(p.115-118)」
「原告らは、江戸時代の安政東海地震の被害記録から推定した震度分布の精度では、アスペリティの位置は検証できないと主張し、特に、想定東海地震の断層モデルを策定する拠り所とした「日本被害地震総覧」(宇佐美(1996))に掲載されている佐倉村の震度が歴史記録に裏付けられていない数字である疑いがあるほどと主張する。(p.118)」
「しかし、江戸時代後期の地震被害に関しては多くの地震史料が残されており、宇佐美龍夫の「日本被害地震総覧」は我が国で最も権威ある歴史地震カタログであると位置づけられていることからすれば、そこに記載された安政東海地震の震度は相当な精度をもったものであると認められ、佐倉村の歴史的記録が明記されないことをもってその信頼性が失われるものではない。したがって、原告らの上記主張は採用できない。(p.118)」
「原告らは、中央防災会議の断層モデルによる想定東海地震の震度分布は、安政東海地震の震度分布と整合していないと主張する。(p.118)」
「確かに、想定東海地震の震度分布では震度6弱、6強となっているにもかかわらず、安政東海地震の震度が7となっている地点も散見されるが、そのような場所は川沿いの地点や軟弱地盤の場所など地盤の特徴が際立っている地点であると考えられ(証人溝上恵)、それ以外の多くの地点は想定東海地震の震度分布と一致し、あるいは同分布に包絡されており、東海地震に関する専門調査会も、上記断層モデルによる震度分布は安政東海地震の震度分布をよく反映するものとして妥当であると評価しているところである。以上からすれば、中央防災会議の断層モデルによる震度分布は安政東海地震の震度分布と整合するといえるから、原告の主張は採用できない。(p.118-119)」
「証人石橋克彦は、東海地震に関する専門調査会が、強震波形計算による手法だけでなく、経験的手法を併用して初めて想定東海地震の妥当な震度分布を得たことを捉えて、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置の妥当性は確認されたとはいえないと証言する。(p.119)」
「しかし、同専門調査会が経験的手法を用いて修正を行ったのは、北西部の井那谷、諏訪等のごく一部の地域に限られ、ほとんどの地域では強震波形計算による手法で妥当な震度分布が得られていることから、見直されたモデルにおけるアスペリティ配置の妥当性は十分に確認されていると診ることができる。(p.119)」
「原告らは、最近の知見によれば、実際のプレート境界面の深さは見直されたモデルのものよりも浅くなると推定されるから、見直されたモデルは不十分であると主張し、証人石橋克彦もその旨を証言する。(p.119)」
「しかしながら、最近のGPS観測、歪計及び地震計の観測によれば、�（神�12年ころから平成17年まで、浜名湖付近で長期的にスロースリップという異常地震変動が発生したこと、�∈廼瓠�愛知県東部において、短期的なスロースリップが発生したこと、��四国の沖合いから室戸の沖合いにおいて、海側のプレート浅部の付加体のある部分が滑ることによって、超長周期地震動が繰り返し発生していることが発見され、プレート境界面の固着の状態と蓄積した歪みの開放形態が深さ方向に階層構造をなしていることが明らかになった(証人溝上恵)。・・・想定震源域のプレート境界面の深さが見直されたモデルよりも浅いことを示唆する研究があるとしても、直ちに同モデルの合理性が失われるわけではないということができる。(p.119-120)」
「原告らは、見直されたモデルモデルにおけるプレート境界面の形状の根拠となっている野口(1996)について、同説のプレート境界面の等深線では、駿河トラフ東側の海底地形と滑らかに繋がらず、駿河トラフ付近で急角度で沈み込む形になるなどの点で不自然であり、プレート境界面の深さがより浅いIshida(1992)のモデルや石橋他(2003)のモデルを採用すべきであると主張する。(p.120)」
「しかしながら、原告らが示すモデルのうち、プレート境界面の深さが最も浅いIshibashi(1992)は、独立行政法人防災科学技術研究所の1980年ないし1988年の微小地震データに基づいているのに対し、野口(1996)は、同じ防災科学技術研究所の1980年ないし1993年の微小地震データに基づき、各ブロックごとの地下構造を用いて震源決定精度を向上させた上、特に上盤プレートとスラブが接する近傍の構造に注意を払いながらスラブの形状を推定しており、より信頼性の高い知見であるから、野口(1996) に基づいて震源断層面の深さを評価することは適切である。(p.120-121)」
(4)破壊開始点
「原告らは、見直されたモデルにおいて設定された破壊開始点は本件原子炉施設に及び得る地震動を推定する上で十分なものでなく、本件原子炉施設に最も大きい地震動をもたらす最も厳しい条件の破壊開始点を設定すべきである。(p.121)」
「しかしながら、東海地震に関する専門調査会は、破壊開始は地震活動から見た固着域の陸側にあること、過去の東南海地震の解析も含め、海溝型地震の破壊はそのほとんどが沈み込むプレートの深い所から始まっていることを理由に、破壊開始点を想定震源域の深いところに設定しているところ、この破壊開始点し近時観測された長期的スロースリップの発生箇所との間に物理的な整合性が認められる上、この破壊開始点を前提として作成された震源断層モデルは、安政東海地震の震度分布をよく再現しているもので、見直されたモデルにおいて設定された破壊開始点は適切なものである。(p.121)」
(5)超想定東海地震が発生する可能性
「原告らは、周期的に発生するプレート間地震が毎回同じ規模であるとは限らず、まれに超巨大地震となる可能性があり、東海地震についても、プレート境界に飲み込まれている銭州という海山の崩壊によって、強いアスペリテチィとしてかみ合っている可能性があるから、１万年に一度あるいは1000年に一度といった割合で非常に強烈な地震波を出す東海地震が発生する可能性があると主張する。(p.122)」
「しかしながら、東海トラフにおいては、震源断層面の幅から考えるとM9以上の地震が発生する蓋然性がなく、仮にM9クラスの地震を想定した場合でも、震源域が遠く離れていることから、その影響で東海地域の強震動が大きくなることはない(証人溝上恵)。・・・したがって、超巨大な東海地震が発生する可能性があるとの原告らの主張は科学的根拠を欠いており、採用できない。(p.122-123)」
(6)想定東海地震との連動及び同時活動
「原告らは、想定東海地震時には、枝分かれ断層、富士川河口断層帯、遠州断層系、御前崎台地のリニアメントや東南海地震・南海地震が同時に活動する可能性があり、その場合には想定東海地震単独発生の場合以上の強震動になることが確実であると主張する。(p.124)」
「しかしながら、プレート型境界地震発生時に枝分かれ断層がゆっくりと滑り、津波を起こす可能性は考えられるものの、このような未固結の地層に大きな歪みが蓄積それることは考えられないことから、プレート境界型の地震と同時に枝分かれ断層の活動が発生して強震動を強め合うことは考えられない(証人溝上恵)。証人石橋克彦も、枝分かれ断層による強震動とプレート境界型地震の主要動が同時に重なり合って強め合うことについてのメカニズムを具体的に説明せず、また、そのメカニズムを具体的に指摘する文献等も見当たらない(証人石橋克彦)。したがって、枝分かれ断層が主断層と同時に活動して地震動を強め合うことは作業仮説の域を出ず、原告らの主張は採用できない。(p.125)」
「原告らは、遠州断層系が想定東海地震と同時に活動して地震動を強め合う可能性があると主張する。(p.126)」
「しかしながら、遠州断層系は高角(垂直に近い傾斜)の横ずれ断層であり、想定東海地震のような巨大地震を引き起こすプレート間の低角(水平に近い傾斜)の逆断層とは性質が異なるものであるから、想定東海地震と遠州断層系による地震が同時に発生して主要動を強め合うことはおよそ考えられない(証人徳山明)。中央防災会議も想定東海地震の震度予測において同断層系を考慮するという考えに立っていない。したがって、原告らの上記主張は採用できず、被告が遠州断層系の地震動がプレート境界地震と同時に活動して地震動を強め合うことはないとして別途考慮をしなかったことは合理的であるということができる。(p.126-127)」
(7)御前崎台地のリニアメント
「原告らは、東海地震時に御前崎台地のリニアメントの断層活動が地震動の短周期のスペクトルを強めることも大いに考えられると主張する。p.127)」
「しかしながら、御前崎台地のリニアメントが大地震の際のいわゆる「おつき合い断層」として、受動的に変位した可能性を指摘する文献や、同リニアメントは、活動度が低く、単独に活動して大きな地震を引き起こすことは考えにくいとしている文献はあるものの、同じリニアメントに対応する地下の震源断層が能動的に地震を発生させたことを指摘する文献はなく、また、リニアメントの方向がまちまちで構造的系統性もないことから、リニアメントの地下に活断層が存在するということは考えられないと指摘しており、原告らの上記主張は採用できない。(p.127-128)」
(8)改正指針と耐震安全性
「原告らは、本件原子炉施設は、改正指針が策定を要求する基準地震動SSを用いた耐震安全性の確認がされていないと主張する。(p.129)」
「・・・本件原子炉施設について策定された基準地震動SSについては、敷地ごとに震源を特定して策定する地震動及び震源を特定せずに策定する地震動がそれぞれ考慮されている。(p.141)」
「原告らは、アスペリティを本件原子炉施設敷地直下に置いた上で、プレート境界面の深さを15km程度にしたものを平均的な想定東海地震等のモデルとし、さらにプレート境界面の深さを浅くするなどして、より不確かさを考慮したものを「仮想的東海地震」としなければ改正指針の要求に従ったことにはならないと主張する。(p.141-142)」
「・・・原告等が主張するようにアスペリティを本件原子炉施設敷地直下に置いた上で、アスペリティの応力降下量をそのままにしてプレート境界面を浅く想定することは、安政東海地震等により本件原子炉施設に生じる地震動を大きく上回る地震モデルを想定することになるが、そのような大きな地震モデルは、可能性としてはともかく、科学的な根拠をもって合理的に想定し得るものではない。よって、原告らの主張は採用できない。(p.142)」
「原告らは、地震動の不確かさ(ばらつき)として、まれにしか破壊しないようなアスペリティの存在や枝分かれ断層による地震動をも考慮すべきであるし、すべり量や応力降下量も最大値を考慮すべきであると主張する。(p.142)」
「しかしながら、前述のとおり、南海トラフにおいては、非常に大きな地震動を発生させるアスペリティの存在が裏付けられておらず、仮に震源域内で1万年に1回しか動かないようなアスペリティを想定した場合でも、そこに溜められる歪みには物理的な限界があるので、100年ないし200年に1回動くアスペリティの応力降下量と1万年に1回動くアスペリティの応力降下量とが大きく変わることはないと認められる(証人入倉孝次郎)。また、前述のとおり、枝分かれ断層が強震動を発生させることはない。したがって、原告らの上記主張は採用できない。(p.142-143)」
続き
(2)減肉
「原告らは、被告の減肉管理には、�‥生‖仂櫃�炭素鋼に限定され、減肉が見つかっている対策材を対象にしていない、��点検対象も編流部などに限定され、しかも代表的部位だけの点検とされ多くの箇所の点検が省略されている、�Ｂ緝重�部位すらない状態で点検が省略されている可能性がある、�じ再�が加速度的に進む実態が考慮されていない、�チ枋蠅鯆兇┐觜發じ再�率の事例が明らかになる中で、点検頻度が低すぎる可能性があるなどの問題があり、すべての減肉を破断に至る前に発見することはできないことから、発見されないまま進行している減肉が多数箇所に存在する前提で耐震安全性の確認を行うべきであり、未だ発見されていない減肉が存在している状態で想定東海地震などの大地震が襲えば、同時多発的に配管等の変形や破断が発生する現実的危険性があると主張する。(p.221)」
原子力安全・保安院の設置した美浜発電所3号機二次系配管損傷事故調査委員会の報告書等、いくつかの事例を挙げ、現状分析し、原告の主張を否定的に位置づけている(p.221-230)。
「原告らは、被告が減肉管理として行う点検の対象を炭素鋼配管に限定し、低合金鋼やステンレス鋼の点検を行っていないから、このような材料における減肉を発見することができないと主張する。(p.230)」
「しかしながら、前記認定のとおり、本件原子炉施設では、エロージョン・コロージョーンについては炭素鋼だけでなく低合金鋼を使用した配管が点検の対象とされ、エロージョンについては、炭素鋼だけでなく低合金鋼、ステンレス鋼を使用した配管も点検の対象とされている。したがって、原告らの主張は前提たる事実を誤っており採用できない。(p.230-231)」
「原告らは、炭素鋼の点検対象が偏流部などに限定され、減肉が見つかっている対象材を対象にしていないから、破断に至るまで危険な減肉が発見されない旨を主張する。(p.231)」
「しかしながら、偏流部においては、配管の幾何形状による流れの乱れにより、管壁近傍の流速が高くなり流体による機械的作用が大きくなることから、減肉速度が直管部に比べて大きくなることが知られており、被告が減肉管理手引に基づいてエルボ部等の偏流部を第一次的に点検することは不合理でない。(p.231)」
「原告らは、代表部位の点検結果により評価が可能とすることで、多くの箇所が省略されており、現実に発生している危険な減肉を発見できないと主張する。(p.231−232)」
「しかしながら、同質ないし類似性を有する複数の対象全部を点検することに代えて、その中から抽出した一定の対象についてのみ点検を実施し、その結果により他の対象の状態を推測するという方法は、一般的に不合理とは言えない。(p.232)」
「原告らは、「浜岡原子力発電所 配管減肉事象に係わる点検に関する調査報告」によれば、代表部位がないにもかかわらず、将来にわたり点検しないとの扱いになっている部位があり、点検が省略されている可能性があると主張する。(p.233)」
「しかしながら、同調査結果は炭素鋼配管についてのみを調査対象としており、被告が実施する点検のすべてについて調査したものではない。原告らが指摘する3号機及び4号機の抽気系統の配管は、そのほとんどが低合金鋼配管等で構成されているため、調査結果の対象から外れているが、実際には管理が行われ、点検もなされていると認められるから、原告らの上記主張は前提を欠き採用できない。(p.233)」
「原告らは、女川原子力発電所1、2号機の給水加熱器ベント配管に生じた減肉事例や福島第一原子力発電所5号機給水加熱器ベント配管に生じた減肉事例、柏崎刈羽原子力発電所2号機の抽出系に生じた減肉事例など、原子力安全・保安院の想定を超える減肉率を示す事例が明らかになったとして、減肉が加速度的に進行する場合も考えられると主張し、被告の行う頻度の点検では減肉が発見される前に破断に至る可能性があると主張する。(p.233)」
「しかしながら、女川原子力発電所及び福島第一原子力発電所に生じた減肉事例は、いずれもオリフィス下流に生じたものであり、しかも液滴を随伴する蒸気流が高速で流れるといった点において厳しい要因の下にあるところ、かかる要因は本件原子炉施設全般にわたって存在するものではなく、極めて限定的な状況下でしか生じ得ないものである。したがって、上記事例の存在によっても、被告が急速に進行する減肉を想定すべきということにはならない(p.233)」
「原告らは、本件原子炉施設の耐震性評価結果によれば、余熱除去系配管に安全余裕が少ないことから、配管に減肉があれば、許容値を超える応力が発生する可能性が高く、東海地震等の大地震が襲えば、同時多発的な配管等の変形や破断が発生する現実的な可能性があると主張する。(p.234)」
「しかしながら、後掲各証拠によれば、防災科学技術研究所及び原子力発電技術機構が実施した実証試験に関し、つぎのような事実が認められる。防災科学技術研究所が実施した配管の振動試験では、立体的に配置した配管試験体(外径114.3mm、肉厚保8.6mm)について、�仝再�のない健全な場合、�△佞燭弔△襯┘襯椶里Δ繊�1か所のエルボの全周に肉厚の48%の減肉をした場合、��2か所のエルボの全周に肉厚の48%の減肉をした場合の振動試験が実施されている。�，任�(700ガルでは10.5Sm及び24.9Sm、1400ガルでは20.6Sm及び12.6Sm、1850ガルでは27.2m及び32.8Sm、ここでSmは通常運転時に発生する発生応力)、入力加速度400ないし700ガルの加振4回及び1400ガル700ガルでは10.5Sm及び12.6Smの加振2回の後、1850ガルの加振13回でエルボの配管外表面のくぼみ発生が確認され、入力加速度1850ガルの加振14回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。�△任�(700ガルでは24.9Sm及び27.4Sm、1400ガルでは49.3Sm及び54.3Sm、1850ガルでは65.0m及び71.5Sm)、入力加速度700ガルの加振1回の後、1400ガルの加振1回目で配管外表面の変化が認められ、さらに1400ガルの加振を1回行った後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。エルボ2のでは、700ガルの加振1回の後、1400ガルの加振2回目で配管外表面の変化が発生し、その後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目に、この部分で軸方向に疲労き裂が貫通した。��では(700ガルでは15.3Sm及び16.8Sm、1400ガルでは30.1Sm及び33.1Sm、1850ガルでは39.7m及び43.5Sm)、700ガルの加振1回及び1400ガルの加振2回の後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。なお、基準地震動S2に対する許容値は3Smである。(p.234-236)」
「また、原子力発電技術機構は、より詳細な条件下で減肉配管の耐震信頼性試験を実施し、減肉した配管が塑性崩壊に至るまでに十分な安全余裕があることを確認しており、�〃鯀瓦幣豺腓砲�15.3倍、��耐震上一番厳しいエルボを部分減肉させた場合には10.3倍、エルボとティのすべてを全周減肉させた場合には7.9倍の安全余裕があると評価している。(p.236)」
「したがって、大地震の地震動が原子炉施設に及ぼす作用の特殊性を考慮しても、同時多発的な配管等の変形や破断が発生する現実的可能性があるとはいえず、原告らの主張は採用できない。(p.237)
(3)疲労
「原告らは、破断のおそれがありながら運転開始以来一度も点検したことがない配管が無数に存在し、ドレン配管のように、耐圧試験でもき裂を発見できないまま漏えいに至った事故が現に発生していることから、検査には限界があり、地震時には枝管が複数破損するおそれがあり、安全上重要な機器に接続している枝管が破断した場合には安全上重要な影響を及ぼし得るとして、地震時において安全上重要な機器につながるドレン配管等の小口径配管が破断し、炉心の冷却機能が低下するおそれがあると主張する。(p.240)」
「しかしながら、被告は、ドレン配管からの漏えい事象を踏まえて、安全上重要な機器に接続する小口径配管を含む広範囲の配管に対して、疲労による影響を評価した上で、必要に応じて溶接方法や振動の発生を抑制するためのサポートを増設するなどの設備対策を実施し、疲労による商工系配管の損傷を防止する対策を講じており、その後安全上重要な機器に接続する小口径配管では漏えいは確認されていない。また、多くの配管等に疲労による劣化が存在する前提で耐震安全評価をすべきとの原告らの主張は、以上の理由等から採用できない。(p.240-241)」
(4)中性子脆化
「原告らは、�仝醜圓寮伐粛渋�式においては中性子の照射速度効果が考慮されておらず、脆性遷移温度上昇が過小評価されている危険があること、�▲哀鵐疋譽皀鵐殴鷂胸厠枠�電所A号機の圧力容器で採取された試験片が、その切り出し位置及び方位によって脆化の程度が著しく異なっていることからすれば、監視試験片の信頼性自体に深刻な問題があり、本件原子炉施設圧力容器の中性子照射による脆化が予測以上に侵攻している可能性があると主張する。(p.243)」
「グンドレモンゲン原子力発電所A号機の圧力容器で採取され試験片の問題は未だ解明されていないが、他の原子力発電所について同様の事例の報告はなく・・・上記実験結果を直ちに受け入れるには根拠が不足しているといわざるを得ない。また、中性子照射速度の効果については、圧力容器鋼中の銅含有量が少ない場合には中性子照射速度の効果の影響が小さいことを示す研究がある反面、銅以外の元素が中性子照射速度の効果に影響する可能性があり、圧力容器鋼中の銅含有量が少ないのに監視試験片の脆性遷移温度が同予測図を上回っている敦賀原子力発電所1号機の例も存在する。しかし、本件原子力発電所1号機で得られている3点の監視試験データはいずれも同予測図を超えておらず、敦賀原子力発電所1号機のような例は他に認めることができない。・・・以上のとおり、原告らが指摘する点はいずれも被告が現在実施している中性子照射脆化に係る対策、運転管理及び点検・検査の合理性を疑わせるまでのものではなく、本件原子炉施設圧力容器の中性子照射による脆化が予測以上に進行している可能性があるとの原告の主張は採用できない。(p.243-244)」
「原告らは、中性子照射による圧力容器の脆化と地震力とが合わさって、圧力容器の脆性破壊が発生する具体的可能性があると主張する。(p.244)」
「しかしながら、圧力容器は中性子照射による脆化の影響を考慮しても必要な強度を維持されるように設計されており、未照射時の強度のみならず、約40年後における推定照射量に基づく材質の変化を考慮しても、なお運転中の種々の荷重や地震荷重に対して必要な強度が維持されるよう設計されているとともに、本件原子炉施設では、建設段階、運転段階において、中性子照射による脆化に対する圧力容器の健全性を確保するために、種々の対策を施すとともに、圧力容器の脆化の状態が確認されている。・・・したがって、中性子脆化による圧力容器の脆化と地震力とが合わさって、圧力容器の脆性破壊が発生する具体的可能性はがあるとまではいえず、原告らの主張は採用できない。(p.244-245)
(5)その他の問題
「原告らは平成13年11月7日に1号機で発生した余熱除去系配管破断事故が、SCC対策として実施された貴金属注入に伴う配管内の滞留が一因となったことを捉え、原子炉施設の老朽化が避けられないばかりか、老朽化に対する対策がかえって原子炉施設の安全性に重大な影響を及ぼしていると主張する。(p.245)」
「同事故の発生は原子炉施設の老朽化とは係わりなく、老朽化に対する対策が原子炉施設の安全性に重大な影響を及ぼしたということもできないから、原告らの主張は採用できない。(p.246)」
「原告らは、1号機インコアモニタハウジングからの漏えい事象を受けて被告が行ったハウジングの拡管やき裂部位へのスリーブの取り付け等の対策は抜本的な対策になっておらず、残ったき裂が熱疲労などの原因で伸張拡大する可能性があり、き裂部分が覆われたため今後の観察が不可能になり、当該部分に新たな熱応力が発生し、劣化が進む可能性があると主張する。(p.246)」
「しかしながら、被告が対策を講じた後に当該部位に漏えいがあったり、劣化が進行したといった事実は確認されていない。原告らの主張は当該配管に起こり得る抽象的な可能性を指摘するものにすぎず、直ちに採用できない。(p.246)」
「原告らは、1号機制御棒駆動機構ハウジングからの漏えい事象と同様の事象は他の配管でも起こり得るのに、被告が同事象の対応として交換を行った配管は漏えいを起こした配管１本にすぎず、超音波探傷試験を行ったのも当該配管だけであるから、根本的な対策が行われていないと主張する。(p.246-247)」
「しかしながら、前述のとおり、被告は、他号機を含めた類似部位について追加試験として目視検査を実施してき裂がないことを確認した上で、被告の各種SCC対策や適切な健全性評価に基づく保全措置煮よって同様の漏えい事象の発生を抑制しているから、同事象に係わる被告の対応は十分に本件原子炉施設の安全性を確保するに足りるものであるというべきである。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.247)」
「原告らは、１号機高経年化技術評価報告書における、�．轡絅薀Ε匹梁竸棉床舛�対象外とされていること、��許容応力という基準とは別に、「き裂安定限度応力」という基準が新たに導入され、評価基準が時と場合によって変わっていることなどを指摘して、被告の行った上記報告が信頼できないと主張する。(p.247)」
「しかしながら、被告の行っている高経年化技術評価における耐震安全性評価が、60年の供用を仮定した場合に現在実施している保全内容により経年変化事象が機器の耐震性に影響を及ぼさないように対処できるかを評価するものである以上、それ以前の取り替えを予定しているシュラウドについて耐震安全性評価の対象外とするのは上記観点から不合理ではない。(p.247)」
過去の事故・故障等の事象
「原告らは、これまで述べた老朽化に起因する事故・事象以外にも、本件原子炉施設において発生した事故・故障等の事象が多数存在し、それらを検証すれば、被告による安全確保対策が役立っていないことは明らかであると主張する。(p.247)」
過去に発生した7種の事故・故障を検討した結果、「本件原子炉施設の安全性は各種の事故防止対策によって維持されていたものと評価できるから、被告による安全確保対策が役立っていないとまでいうことはできない。原告らは、証人中澤博文は被告の従業員であり、・・・その証言は信用できないと主張するが、引き抜け事象に関する証言があいまいであったとしても、虚偽の証言があったとは認められないから、同証人の証言が信用できないとの原告の主張は採用できない(p.252)」
「原告らは、被告が本件引き抜け事象という原子炉施設の安全性に影響を及ぼす重大な事象の隠ぺいを行っていたことや、平成7年に3号機再循環配管ひび割れを検出しながらそれを隠していたこと、ひび割れの検査記録を流用していたことなどを挙げて、被告の安全軽視の経営姿勢は明らかであるから、被告には原子力発電所を運転する資格がないと主張する。(p.252-253)」
「しかし、平成7年に3号機再循環配管ひび割れを検出しながら国に報告しなかったのは、ひび割れの原因は製造時に生じた欠陥の可能性が高いと判断したためであり、制御棒引き抜け事象と同列に論じることはできない。(p.253)」
(2)減肉
「原告らは、被告の減肉管理には、�‥生‖仂櫃�炭素鋼に限定され、減肉が見つかっている対策材を対象にしていない、��点検対象も編流部などに限定され、しかも代表的部位だけの点検とされ多くの箇所の点検が省略されている、�Ｂ緝重�部位すらない状態で点検が省略されている可能性がある、�じ再�が加速度的に進む実態が考慮されていない、�チ枋蠅鯆兇┐觜發じ再�率の事例が明らかになる中で、点検頻度が低すぎる可能性があるなどの問題があり、すべての減肉を破断に至る前に発見することはできないことから、発見されないまま進行している減肉が多数箇所に存在する前提で耐震安全性の確認を行うべきであり、未だ発見されていない減肉が存在している状態で想定東海地震などの大地震が襲えば、同時多発的に配管等の変形や破断が発生する現実的危険性があると主張する。(p.221)」
原子力安全・保安院の設置した美浜発電所3号機二次系配管損傷事故調査委員会の報告書等、いくつかの事例を挙げ、現状分析し、原告の主張を否定的に位置づけている(p.221-230)。
「原告らは、被告が減肉管理として行う点検の対象を炭素鋼配管に限定し、低合金鋼やステンレス鋼の点検を行っていないから、このような材料における減肉を発見することができないと主張する。(p.230)」
「しかしながら、前記認定のとおり、本件原子炉施設では、エロージョン・コロージョーンについては炭素鋼だけでなく低合金鋼を使用した配管が点検の対象とされ、エロージョンについては、炭素鋼だけでなく低合金鋼、ステンレス鋼を使用した配管も点検の対象とされている。したがって、原告らの主張は前提たる事実を誤っており採用できない。(p.230-231)」
「原告らは、炭素鋼の点検対象が偏流部などに限定され、減肉が見つかっている対象材を対象にしていないから、破断に至るまで危険な減肉が発見されない旨を主張する。(p.231)」
「しかしながら、偏流部においては、配管の幾何形状による流れの乱れにより、管壁近傍の流速が高くなり流体による機械的作用が大きくなることから、減肉速度が直管部に比べて大きくなることが知られており、被告が減肉管理手引に基づいてエルボ部等の偏流部を第一次的に点検することは不合理でない。(p.231)」
「原告らは、代表部位の点検結果により評価が可能とすることで、多くの箇所が省略されており、現実に発生している危険な減肉を発見できないと主張する。(p.231−232)」
「しかしながら、同質ないし類似性を有する複数の対象全部を点検することに代えて、その中から抽出した一定の対象についてのみ点検を実施し、その結果により他の対象の状態を推測するという方法は、一般的に不合理とは言えない。(p.232)」
「原告らは、「浜岡原子力発電所 配管減肉事象に係わる点検に関する調査報告」によれば、代表部位がないにもかかわらず、将来にわたり点検しないとの扱いになっている部位があり、点検が省略されている可能性があると主張する。(p.233)」
「しかしながら、同調査結果は炭素鋼配管についてのみを調査対象としており、被告が実施する点検のすべてについて調査したものではない。原告らが指摘する3号機及び4号機の抽気系統の配管は、そのほとんどが低合金鋼配管等で構成されているため、調査結果の対象から外れているが、実際には管理が行われ、点検もなされていると認められるから、原告らの上記主張は前提を欠き採用できない。(p.233)」
「原告らは、女川原子力発電所1、2号機の給水加熱器ベント配管に生じた減肉事例や福島第一原子力発電所5号機給水加熱器ベント配管に生じた減肉事例、柏崎刈羽原子力発電所2号機の抽出系に生じた減肉事例など、原子力安全・保安院の想定を超える減肉率を示す事例が明らかになったとして、減肉が加速度的に進行する場合も考えられると主張し、被告の行う頻度の点検では減肉が発見される前に破断に至る可能性があると主張する。(p.233)」
「しかしながら、女川原子力発電所及び福島第一原子力発電所に生じた減肉事例は、いずれもオリフィス下流に生じたものであり、しかも液滴を随伴する蒸気流が高速で流れるといった点において厳しい要因の下にあるところ、かかる要因は本件原子炉施設全般にわたって存在するものではなく、極めて限定的な状況下でしか生じ得ないものである。したがって、上記事例の存在によっても、被告が急速に進行する減肉を想定すべきということにはならない(p.233)」
「原告らは、本件原子炉施設の耐震性評価結果によれば、余熱除去系配管に安全余裕が少ないことから、配管に減肉があれば、許容値を超える応力が発生する可能性が高く、東海地震等の大地震が襲えば、同時多発的な配管等の変形や破断が発生する現実的な可能性があると主張する。(p.234)」
「しかしながら、後掲各証拠によれば、防災科学技術研究所及び原子力発電技術機構が実施した実証試験に関し、つぎのような事実が認められる。防災科学技術研究所が実施した配管の振動試験では、立体的に配置した配管試験体(外径114.3mm、肉厚保8.6mm)について、�仝再�のない健全な場合、�△佞燭弔△襯┘襯椶里Δ繊�1か所のエルボの全周に肉厚の48%の減肉をした場合、��2か所のエルボの全周に肉厚の48%の減肉をした場合の振動試験が実施されている。�，任�(700ガルでは10.5Sm及び24.9Sm、1400ガルでは20.6Sm及び12.6Sm、1850ガルでは27.2m及び32.8Sm、ここでSmは通常運転時に発生する発生応力)、入力加速度400ないし700ガルの加振4回及び1400ガル700ガルでは10.5Sm及び12.6Smの加振2回の後、1850ガルの加振13回でエルボの配管外表面のくぼみ発生が確認され、入力加速度1850ガルの加振14回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。�△任�(700ガルでは24.9Sm及び27.4Sm、1400ガルでは49.3Sm及び54.3Sm、1850ガルでは65.0m及び71.5Sm)、入力加速度700ガルの加振1回の後、1400ガルの加振1回目で配管外表面の変化が認められ、さらに1400ガルの加振を1回行った後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。エルボ2のでは、700ガルの加振1回の後、1400ガルの加振2回目で配管外表面の変化が発生し、その後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目に、この部分で軸方向に疲労き裂が貫通した。��では(700ガルでは15.3Sm及び16.8Sm、1400ガルでは30.1Sm及び33.1Sm、1850ガルでは39.7m及び43.5Sm)、700ガルの加振1回及び1400ガルの加振2回の後、1850ガルの加振1回でくぼみ発生が確認され、1850ガルの加振3回目で軸方向に疲労き裂が貫通した。なお、基準地震動S2に対する許容値は3Smである。(p.234-236)」
「また、原子力発電技術機構は、より詳細な条件下で減肉配管の耐震信頼性試験を実施し、減肉した配管が塑性崩壊に至るまでに十分な安全余裕があることを確認しており、�〃鯀瓦幣豺腓砲�15.3倍、��耐震上一番厳しいエルボを部分減肉させた場合には10.3倍、エルボとティのすべてを全周減肉させた場合には7.9倍の安全余裕があると評価している。(p.236)」
「したがって、大地震の地震動が原子炉施設に及ぼす作用の特殊性を考慮しても、同時多発的な配管等の変形や破断が発生する現実的可能性があるとはいえず、原告らの主張は採用できない。(p.237)
(3)疲労
「原告らは、破断のおそれがありながら運転開始以来一度も点検したことがない配管が無数に存在し、ドレン配管のように、耐圧試験でもき裂を発見できないまま漏えいに至った事故が現に発生していることから、検査には限界があり、地震時には枝管が複数破損するおそれがあり、安全上重要な機器に接続している枝管が破断した場合には安全上重要な影響を及ぼし得るとして、地震時において安全上重要な機器につながるドレン配管等の小口径配管が破断し、炉心の冷却機能が低下するおそれがあると主張する。(p.240)」
「しかしながら、被告は、ドレン配管からの漏えい事象を踏まえて、安全上重要な機器に接続する小口径配管を含む広範囲の配管に対して、疲労による影響を評価した上で、必要に応じて溶接方法や振動の発生を抑制するためのサポートを増設するなどの設備対策を実施し、疲労による商工系配管の損傷を防止する対策を講じており、その後安全上重要な機器に接続する小口径配管では漏えいは確認されていない。また、多くの配管等に疲労による劣化が存在する前提で耐震安全評価をすべきとの原告らの主張は、以上の理由等から採用できない。(p.240-241)」
(4)中性子脆化
「原告らは、�仝醜圓寮伐粛渋�式においては中性子の照射速度効果が考慮されておらず、脆性遷移温度上昇が過小評価されている危険があること、�▲哀鵐疋譽皀鵐殴鷂胸厠枠�電所A号機の圧力容器で採取された試験片が、その切り出し位置及び方位によって脆化の程度が著しく異なっていることからすれば、監視試験片の信頼性自体に深刻な問題があり、本件原子炉施設圧力容器の中性子照射による脆化が予測以上に侵攻している可能性があると主張する。(p.243)」
「グンドレモンゲン原子力発電所A号機の圧力容器で採取され試験片の問題は未だ解明されていないが、他の原子力発電所について同様の事例の報告はなく・・・上記実験結果を直ちに受け入れるには根拠が不足しているといわざるを得ない。また、中性子照射速度の効果については、圧力容器鋼中の銅含有量が少ない場合には中性子照射速度の効果の影響が小さいことを示す研究がある反面、銅以外の元素が中性子照射速度の効果に影響する可能性があり、圧力容器鋼中の銅含有量が少ないのに監視試験片の脆性遷移温度が同予測図を上回っている敦賀原子力発電所1号機の例も存在する。しかし、本件原子力発電所1号機で得られている3点の監視試験データはいずれも同予測図を超えておらず、敦賀原子力発電所1号機のような例は他に認めることができない。・・・以上のとおり、原告らが指摘する点はいずれも被告が現在実施している中性子照射脆化に係る対策、運転管理及び点検・検査の合理性を疑わせるまでのものではなく、本件原子炉施設圧力容器の中性子照射による脆化が予測以上に進行している可能性があるとの原告の主張は採用できない。(p.243-244)」
「原告らは、中性子照射による圧力容器の脆化と地震力とが合わさって、圧力容器の脆性破壊が発生する具体的可能性があると主張する。(p.244)」
「しかしながら、圧力容器は中性子照射による脆化の影響を考慮しても必要な強度を維持されるように設計されており、未照射時の強度のみならず、約40年後における推定照射量に基づく材質の変化を考慮しても、なお運転中の種々の荷重や地震荷重に対して必要な強度が維持されるよう設計されているとともに、本件原子炉施設では、建設段階、運転段階において、中性子照射による脆化に対する圧力容器の健全性を確保するために、種々の対策を施すとともに、圧力容器の脆化の状態が確認されている。・・・したがって、中性子脆化による圧力容器の脆化と地震力とが合わさって、圧力容器の脆性破壊が発生する具体的可能性はがあるとまではいえず、原告らの主張は採用できない。(p.244-245)
(5)その他の問題
「原告らは平成13年11月7日に1号機で発生した余熱除去系配管破断事故が、SCC対策として実施された貴金属注入に伴う配管内の滞留が一因となったことを捉え、原子炉施設の老朽化が避けられないばかりか、老朽化に対する対策がかえって原子炉施設の安全性に重大な影響を及ぼしていると主張する。(p.245)」
「同事故の発生は原子炉施設の老朽化とは係わりなく、老朽化に対する対策が原子炉施設の安全性に重大な影響を及ぼしたということもできないから、原告らの主張は採用できない。(p.246)」
「原告らは、1号機インコアモニタハウジングからの漏えい事象を受けて被告が行ったハウジングの拡管やき裂部位へのスリーブの取り付け等の対策は抜本的な対策になっておらず、残ったき裂が熱疲労などの原因で伸張拡大する可能性があり、き裂部分が覆われたため今後の観察が不可能になり、当該部分に新たな熱応力が発生し、劣化が進む可能性があると主張する。(p.246)」
「しかしながら、被告が対策を講じた後に当該部位に漏えいがあったり、劣化が進行したといった事実は確認されていない。原告らの主張は当該配管に起こり得る抽象的な可能性を指摘するものにすぎず、直ちに採用できない。(p.246)」
「原告らは、1号機制御棒駆動機構ハウジングからの漏えい事象と同様の事象は他の配管でも起こり得るのに、被告が同事象の対応として交換を行った配管は漏えいを起こした配管１本にすぎず、超音波探傷試験を行ったのも当該配管だけであるから、根本的な対策が行われていないと主張する。(p.246-247)」
「しかしながら、前述のとおり、被告は、他号機を含めた類似部位について追加試験として目視検査を実施してき裂がないことを確認した上で、被告の各種SCC対策や適切な健全性評価に基づく保全措置煮よって同様の漏えい事象の発生を抑制しているから、同事象に係わる被告の対応は十分に本件原子炉施設の安全性を確保するに足りるものであるというべきである。したがって、原告らの主張は採用できない。(p.247)」
「原告らは、１号機高経年化技術評価報告書における、�．轡絅薀Ε匹梁竸棉床舛�対象外とされていること、��許容応力という基準とは別に、「き裂安定限度応力」という基準が新たに導入され、評価基準が時と場合によって変わっていることなどを指摘して、被告の行った上記報告が信頼できないと主張する。(p.247)」
「しかしながら、被告の行っている高経年化技術評価における耐震安全性評価が、60年の供用を仮定した場合に現在実施している保全内容により経年変化事象が機器の耐震性に影響を及ぼさないように対処できるかを評価するものである以上、それ以前の取り替えを予定しているシュラウドについて耐震安全性評価の対象外とするのは上記観点から不合理ではない。(p.247)」
過去の事故・故障等の事象
「原告らは、これまで述べた老朽化に起因する事故・事象以外にも、本件原子炉施設において発生した事故・故障等の事象が多数存在し、それらを検証すれば、被告による安全確保対策が役立っていないことは明らかであると主張する。(p.247)」
過去に発生した7種の事故・故障を検討した結果、「本件原子炉施設の安全性は各種の事故防止対策によって維持されていたものと評価できるから、被告による安全確保対策が役立っていないとまでいうことはできない。原告らは、証人中澤博文は被告の従業員であり、・・・その証言は信用できないと主張するが、引き抜け事象に関する証言があいまいであったとしても、虚偽の証言があったとは認められないから、同証人の証言が信用できないとの原告の主張は採用できない(p.252)」
「原告らは、被告が本件引き抜け事象という原子炉施設の安全性に影響を及ぼす重大な事象の隠ぺいを行っていたことや、平成7年に3号機再循環配管ひび割れを検出しながらそれを隠していたこと、ひび割れの検査記録を流用していたことなどを挙げて、被告の安全軽視の経営姿勢は明らかであるから、被告には原子力発電所を運転する資格がないと主張する。(p.252-253)」
「しかし、平成7年に3号機再循環配管ひび割れを検出しながら国に報告しなかったのは、ひび割れの原因は製造時に生じた欠陥の可能性が高いと判断したためであり、制御棒引き抜け事象と同列に論じることはできない。(p.253)」
浜岡訴訟判決書から引用。原告証人の実力不足が目立つ内容。
(1)SCC
「原告らは、SCCの検査方法はUTに頼るしかないが、その精度は著しく低いと主張し、証人井野博満も、SCCのひび割れの形状が複雑であること等によりUTによる計測値と実測値との間に大きな相違が生じていると証言する。(p.194)」
「近時発生した低炭素ステンレス鋼製の再循環配管等のSCCによるき裂については、き裂が溶接金属内部にまで進展し、横波を用いたUTではその深さを十分な精度で測定できない場合もあるという知見が得られたことから、縦波等を組み合わせた試験方法、いわゆる改良UTが開発された。この方法は、原子炉安全小委員会により測定精度の検証が行われ、現在では、改良UTが「き裂その他の欠陥解釈」に定められ、UTの信頼性の向上が図られている。(p.195-196)」
「証人井野博満は、福島第二原子力発電所3号機の再循環配管において平成17年の定期検査中に二次クリーピング法によるUTが実施されたが、配管の全周に及ぶひび割れからの超音波信号を配管裏面からの裏波と見誤り、ひび割れとの評価がなされなかった事象を捉えてUTの信頼性に疑問を呈している。(p.196)」
「この事象は、UTでは有意なエコーを検出していたものの、き裂の有無を判定する際にこのエコーがき裂からのものではないと誤って判断したことに起因する事象であって、UT自体の信頼性が損なわれるものではない。(p.196)」
「したがって、再循環配管におけるUTの精度に問題は認められず、原告らの上記主張は採用できない。(p.197)」
「原告らは、シュラウドのひび割れは内部で複雑な形状となるため、UTでは正確な計測値が得られないなどと主張する。(p.198)」
「しかしながら、被告は、前述のとおり、「き裂その他の欠陥の解釈」に基づき、確認されたき裂の両端に板圧分をそれぞれに加えたものをき裂の長さとして設定し、板圧方向の貫通き裂として想定するというモデル化を行うことで、き裂の大きさを実際よりも大きく、すなわち、き裂が存在する断面の残存面積を安全側に設定しているので、UTの測定精度が健全性評価の信頼性に影響を及ぼさないようにする対策が講じられていると認められる。なお、シュラウドリング部については、女川原子力発電所1号機及び柏崎刈羽原子力発電所3号機において採取されたサンプルによって実測されたき裂深さと、UTによって測定されたき裂深さとが、おおむね一致するとの結果が得られている。したがって、シュラウド等のひび割れについてのUT精度に関する原告らの主張は採用できない。(p.198)」
「原告らは、被告の行う検査の対象と頻度が不十分であると主張する。(p.199)」
「維持規格は、国際的にも実績のある米国の機械学会によって策定されたASME規格を参考にして、数多くの専門家によって十分に審議され、さらに原子力安全・保安院によって技術的な妥当性が評価された信頼性が高いものであり、維持規格の定める段階的な点検・検査の枠組みは、点検・検査の結果に応じて柔軟にその頻度や対象を設定できる合理的なものである。また、「き列さの他の欠陥の解釈」も、原子力安全・保安院が、健全性評価小委員会及び原子炉安全小委員会での専門家による審議を経て発出した指示文書であり、SCCについてり最新知見を踏まえた科学的かつ合理的なものであると認める。したがって、「き列さの他の欠陥の解釈」に基づく点検・検査により、経年変化事象が発生したとしても、それを早期に検知し処置を講ずることができるということができ、検査の対象と頻度が不十分であるとの原告らの主張は採用できない。(p.199-200)」
「原告らは、シュラウドには障害物の影響で目視検査の検査率がほぼ0%という箇所が存在すると主張する。(p.200)」
「民間ガイドラインにおいては、点検範囲に関し、点検に用いる通常の水中テレビカメラで対象溶接部の接近可能な部位を点検すれば、未点検部位があったとしても構造健全性に有意な影響を与えることがないことが示されていることをも併せ考えると、被告のシュラウドに関する検査態勢には問題がないものと認められる。(p.200)」
「原告らは、被告が平成7年に3号機再循環配管継手部のひび割れを認識していたにもかかわらず、国へ報告をしなかったことや、被告が平成13年の定期点検時に3、4号機のシュラウドにインディケーションないしひび割れを確認しながら、国へ異状なしとの報告を行っていたことなどを指摘して、被告の行った検査の結果には信頼性がないなどと主張する。(p.201)」
「当時、当該インディケーションが報告義務の対象ではなかったこと(当時の実用発電炉の設置、運転等に関する規則24条2項3号、「大臣通達による軽微な故障等の報告について」昭和63年11月8日付原子力発電運転管理室)からすれば、被告がSCCのインディケーションを確認しながら、国に対して報告しなかったことに不正はなく、原告らの上記主張は採用できない。(p.201-202)」
「原告らは、再循環配管の点検に関し、国が実施する定期検査では「異状なし」と報告されたにもかかわらず、被告の実施する自主点検ではひび割れと判断されている例があるとして、定期検査の結果に信頼性がないと主張する。(p.202)」
「しかしながら、国が実施する定期検査は斜角法のみによって実施されるのに対し、被告の実施する自主検査では、使用する深触子等の機器も多様であり、二次クリーピング法、端部エコー法、フチェーズドアレイ法、縦波斜角法等の手法も必要に応じて採用されるのであるから、定期検査においてインディケーションが発見されず、自主点検においてインディケーションが発見される例があること自体は不合理ではない。原子力安全・保安院も、国と被告の検査結果が異なった原因は、被告の定期検査で採用されている方法が、より感度の高い検査方法であることに起因するものであり、被告の報告等に不正や法令違反の事実は認められなかったとの見解を示している。(p.202)」
「原告らは、原子力安全・保安院がひび割れの基準として示しているDAC100%を越えるひび割れについても国に報告していなかったことは悪質であると主張する。(p.202)」
「しかしながら、国への報告義務が生じるのは、材料、溶接部に関する国の技術基準(通商産業省告示501号及び電気工作物の溶接に関する技術基準を定める省令)に定められている判定基準を超える欠陥とみなされた場合であり、単にDAC100%を越えるインディケーションが観測されただけで国への報告義務が生じるものではないから、原告らの上記主張は採用できない。(p.202-203)」
「原告らは、平成18年2月に3号機の使用済制御棒に確認されたひび割れ等に関し、平成7年の定期検査において、当該部位に指示模様を検知しながら、ひび割れと認識できず異状なしとしたことを捉えて、被告の点検能力に欠如があると主張する。(p.203)」
「しかしながら、IASCCに関する知見が得られていなかった平成7年当時の状況や、当該部位に当時発生していたひび割れの大きさは僅少でであったと考えられることからすれば、ひび割れと認識しなかったとしてもやむを得ない事情があったと認められ、原告らの主張は当たらないというべきである。(p.203)」
「原告らは、本件原子炉施設においてSCCを原因とする漏えい事故があることから、点検・検査によってはひび割れ等を貫通前に発見することができないと主張する。(p.203)」
「しかしながら、昭和63年9月17日に1号機インコアモニタハウジングにおいて発生した漏えい事故はSCCを原因とするものであるが、同号機が建設された当時、溶接における残留応力を除去するようなSCC防止策がとられていなかった。・・・当該漏えい事故が発生した時期に比べ、今日では、点検・検査の手法や精度が向上し、予防対策も進展していると考えられることからすると、当該事故発生に漏えい前にひび割れが発見できなかったとしても、直ちに現在の点検・検査がひび割れを発見するのに不十分なものということにはならない。」(p.203)」
「原告らは、SCCメカニズムは未解明であるからその防止のための対策を立てることができないと主張する。(p.205)」
SCC研究の現状と被告が実施している対策を述べた後、「本件原子炉施設では、1号機及び2号機のシュラウドの一部溶接部につきショットピーニング法が適用され、1ないし3号機の一部溶接部につきレーザーピーニングが適用されている。また、2ないし4号機の再循環配管の溶接部の一部についてIHSIが採用されている。(p.207)」
「原告らは、ショットピーニング法やIHSIなどの技術が用いられた実機でもSCCが発生しているとして、これらの技術の有効性は確認されていないと主張する。(p.207)」
「研究者らの実験により開発されたこれらの技術は、実機に近い条件での実験に基づき、実機でのSCCの発生を完全に防止することはできないにしても、その進展抑制には一定の効果があることが認められるから、原告の上記主張は採用できない(p.207)」
「証人井野博満は、Andersenらの論文や有岡らの研究成果をもとに、水素注入によって腐食電位を低下させても効果がない旨を証言する。(p.208)」
「しかしながら、その指摘の根拠となる論文の著者であるAndersenらは塑性加工を受けたL材においても低電位においては著しくき裂進展速度は低下すると結論付けている。・・・したがって、証人井野博満の上記証言は採用できない。(p.208)」
「証人井野博満は、貴金属注入による配管内の水素の蓄積が平成13年11月7日に1号機において発生した余熱除去系蒸気凝縮系配管破断事故の原因となったとして、貴金属注入を行うことの見直しが必要であると証言する。(p.208)」
「被告は、再発防止策として、配管内に水素を蓄積させないことを基本として、高濃度の水素が滞留し得る箇所であって、水素の燃焼が起こり配管が破断する可能性のある箇所を抽出し、対策を施しており、大きな配管の破断に至るような事象が発生することは考えられないから、同証言を直ちに採用することはできない(p.208-209)」
「原告らは、き裂進展評価の前提となるUTの精度、残留応力分布の解析、応力拡大係数にはそれぞれ問題があり、き裂進展評価に用いるき裂進展速度線図の設定もおよそ科学的なものでなく、かつ、保守的でもないから、予想よりも早くひび割れが進行する可能性があると主張する。(p.210)」
「しかしながら、前述のとおり、UTの測定精度については、シュラウドリング部においてはよく測定できることが確認されており、また、シュラウド胴部においてはUTの測定精度に影響を受けない安全側のき裂進展評価が実施されているのであるから、UTの測定精度を根拠として応力拡大係数に信頼性が欠けるとする原告らの主張は採用できない。(p.210)」
「原告らは、応力拡大係数の決定は近似式によるものであり、先に決められた炉心シュラウドの民間ガイドラインが4次式で近似していたのをさらに手抜きして3次式で近似することにしたものであるから、き裂進展評価に用いられる応力拡大係数には合理性がないかのように主張する。(p.211)」
「しかしながら、維持規格等の規格に定められた3次式と4次式は、いずれも専門家が最新の研究成果を基に、実機評価性等を審議して規格に採用されたものであって、科学的・合理的なものであることから、3次式を評価に適用することが手抜きと評価されるべきものではなく、原告らの蒸気主張は採用できない。(p.211)」
「原告らは、原子力安全・保安院が採用したき裂進展速度線図がNRC-CURVEの傾きを維持したまま日本国内の少数の実験データに合わせてずらしていることに科学的根拠がないこと、NRC-CURVEをずらす根拠とした実験データに硬化層のある試験片のデータがまったくないこと、溶接熱影響部に係わき裂進展試験の結果、低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線を越えるデータが採取されたことなどから、同図を用いたき裂進展評価には科学的根拠がないと主張する。(p.211-212)」
「き裂進展速度線図設定の根拠となった速度データについては、我が国で得られた速度データ以外にも、米国の研究プロジェクトが採取した低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度データのうち、我が国の実機の条件に合致するものが参考にされており、基となる速度データが過少ということはない。実際にも、NRC-CURVE の傾きを採用したき裂進展速度線は結果的にJENESの試験により採取された速度データを包絡していることから、NRC-CURVE の傾きだけを採用することは不合理ではなく、むしろ安全側に設定されているというべきである。(p.212)」
「原告らは、冷間加工を受けた試料が鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を上回る速度データを示していることから、鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図は過小評価であると主張し、証人井野博満も同旨の証言をしている。(p.214)」
「しかしながら、同証人が指摘する論文に引用されている冷間加工を受けた試料の速度データはいずれも当該データと硬さとの関係が不明であり、前提となる腐食環境も国内の原子炉水と異なるものと考えられるから、同論文のデータをもって直ちに鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図が過小評価であるということはできない。(p.214)」
「証人井野博満は、シュラウドの健全性評価に用いるき裂進展速度線図としては低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線図ではなく、鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を用いるべきであると証言する。(p.214)」
「しかしながら、シュラウドについても、モックアップ試験体から採取された試験片での速度データは低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線図に包絡されていることが確認されていることから、シュラウドの健全性評価に用いるき裂進展速度線図に関して溶接熱影響による硬化が確認されている再循環配管母材硬化部と同じように鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を採用すべきであるとする同証人の指摘は採用できない。(p.215)」
「原告らは、耐震設計は機器・配管が新品であることを前提として行われるが、本件原子炉施設の現実の機器・配管には無数のひび割れが存在するし、点検・検査の範囲や精度の限界から、すべてのひび割れを発見することはできないことを考慮すれば、本件原子炉施設の耐震安全性の確認においては、発見されずに存在するひび割れを想定して行うのが当然であり、安全上重要な機器において、最悪のひび割れを想定すべきであると主張する。(p.216)」
「しかし、機器・配管のひび割れについては、原子炉施設の耐震設計とは別に、それ自体のリスクが考慮され、前期のとおり、様々な対策や強度の確認評価等が行われ、これらを併せて耐震安全性の確保が企画されているのであるから、本件原子炉施設の耐震安全性の確認において最悪のひび割れを想定するまでの必要はない。(p.216)」
「これに対し、原告らは、現実の機器・配管の状態でも、ひび割れが存在することにより本件原子炉施設の耐震安全性が確保されないと主張する。(p.216)」
「しかし、個々の施設の強度については、前述のとおり、全般的にかなりの安全裕度が採られて設計・施工されており、特に本件原子炉施設の再循環配管やシュラウドについては相当の余裕があると認められる。(p.216)」
「原告らは、ひび割れにより、より弱い地震動で機器・配管が弾性変形領域から塑性変形領域に入るようになり、その部分の揺れ方が変わるだけでなく、繋がった全体の揺れに影響してくるから、すべての機器が弾性領域において振動することを前提とした被告の耐震安全性評価によっては耐震安全性の確認がされていないことになると主張する。(p.218)」
「しかしながら、再循環配管及びシュラウド等にき裂が存在した場合でも、その剛性が低下しなければ、固有周期が長くなることはなく、機器の揺れ方はき裂が存在しない場合と変わることはないところ、再循環配管及びシュラウド等にき裂が存在することによる固有周期の変化は十分小さく、き裂の存在が再循環配管及びシュラウド等の揺れ方に影響を及ぼさないことが確認されている。(p.218)」
「原告らは、東海地震等の大地震が発生したとき、制御棒のひび割れが制御棒挿入の動作不良を引き起こし、あるいは欠損部分が制御棒挿入を阻害する事態が発生する現実的可能性があると主張する。(p.219)」
「しかしながら、前述のとおり、3号機に関しては、すでに熱中性子照射量4.0×1021n/cm2 を上回る制御棒については全挿入が実施されており、全挿入されていないハフニウム板型制御棒のサイクル末期における熱中性子照射量0.6×1021n/cm2 程度と原子力安全・保安院が提示する4.0×1021n/cm2 よりもはるかに低い値に抑制されており、これらの制御棒に関しては、すでに挿入済みであるから挿入製には問題ないものと認められる。(p.219)」
(1)SCC
「原告らは、SCCの検査方法はUTに頼るしかないが、その精度は著しく低いと主張し、証人井野博満も、SCCのひび割れの形状が複雑であること等によりUTによる計測値と実測値との間に大きな相違が生じていると証言する。(p.194)」
「近時発生した低炭素ステンレス鋼製の再循環配管等のSCCによるき裂については、き裂が溶接金属内部にまで進展し、横波を用いたUTではその深さを十分な精度で測定できない場合もあるという知見が得られたことから、縦波等を組み合わせた試験方法、いわゆる改良UTが開発された。この方法は、原子炉安全小委員会により測定精度の検証が行われ、現在では、改良UTが「き裂その他の欠陥解釈」に定められ、UTの信頼性の向上が図られている。(p.195-196)」
「証人井野博満は、福島第二原子力発電所3号機の再循環配管において平成17年の定期検査中に二次クリーピング法によるUTが実施されたが、配管の全周に及ぶひび割れからの超音波信号を配管裏面からの裏波と見誤り、ひび割れとの評価がなされなかった事象を捉えてUTの信頼性に疑問を呈している。(p.196)」
「この事象は、UTでは有意なエコーを検出していたものの、き裂の有無を判定する際にこのエコーがき裂からのものではないと誤って判断したことに起因する事象であって、UT自体の信頼性が損なわれるものではない。(p.196)」
「したがって、再循環配管におけるUTの精度に問題は認められず、原告らの上記主張は採用できない。(p.197)」
「原告らは、シュラウドのひび割れは内部で複雑な形状となるため、UTでは正確な計測値が得られないなどと主張する。(p.198)」
「しかしながら、被告は、前述のとおり、「き裂その他の欠陥の解釈」に基づき、確認されたき裂の両端に板圧分をそれぞれに加えたものをき裂の長さとして設定し、板圧方向の貫通き裂として想定するというモデル化を行うことで、き裂の大きさを実際よりも大きく、すなわち、き裂が存在する断面の残存面積を安全側に設定しているので、UTの測定精度が健全性評価の信頼性に影響を及ぼさないようにする対策が講じられていると認められる。なお、シュラウドリング部については、女川原子力発電所1号機及び柏崎刈羽原子力発電所3号機において採取されたサンプルによって実測されたき裂深さと、UTによって測定されたき裂深さとが、おおむね一致するとの結果が得られている。したがって、シュラウド等のひび割れについてのUT精度に関する原告らの主張は採用できない。(p.198)」
「原告らは、被告の行う検査の対象と頻度が不十分であると主張する。(p.199)」
「維持規格は、国際的にも実績のある米国の機械学会によって策定されたASME規格を参考にして、数多くの専門家によって十分に審議され、さらに原子力安全・保安院によって技術的な妥当性が評価された信頼性が高いものであり、維持規格の定める段階的な点検・検査の枠組みは、点検・検査の結果に応じて柔軟にその頻度や対象を設定できる合理的なものである。また、「き列さの他の欠陥の解釈」も、原子力安全・保安院が、健全性評価小委員会及び原子炉安全小委員会での専門家による審議を経て発出した指示文書であり、SCCについてり最新知見を踏まえた科学的かつ合理的なものであると認める。したがって、「き列さの他の欠陥の解釈」に基づく点検・検査により、経年変化事象が発生したとしても、それを早期に検知し処置を講ずることができるということができ、検査の対象と頻度が不十分であるとの原告らの主張は採用できない。(p.199-200)」
「原告らは、シュラウドには障害物の影響で目視検査の検査率がほぼ0%という箇所が存在すると主張する。(p.200)」
「民間ガイドラインにおいては、点検範囲に関し、点検に用いる通常の水中テレビカメラで対象溶接部の接近可能な部位を点検すれば、未点検部位があったとしても構造健全性に有意な影響を与えることがないことが示されていることをも併せ考えると、被告のシュラウドに関する検査態勢には問題がないものと認められる。(p.200)」
「原告らは、被告が平成7年に3号機再循環配管継手部のひび割れを認識していたにもかかわらず、国へ報告をしなかったことや、被告が平成13年の定期点検時に3、4号機のシュラウドにインディケーションないしひび割れを確認しながら、国へ異状なしとの報告を行っていたことなどを指摘して、被告の行った検査の結果には信頼性がないなどと主張する。(p.201)」
「当時、当該インディケーションが報告義務の対象ではなかったこと(当時の実用発電炉の設置、運転等に関する規則24条2項3号、「大臣通達による軽微な故障等の報告について」昭和63年11月8日付原子力発電運転管理室)からすれば、被告がSCCのインディケーションを確認しながら、国に対して報告しなかったことに不正はなく、原告らの上記主張は採用できない。(p.201-202)」
「原告らは、再循環配管の点検に関し、国が実施する定期検査では「異状なし」と報告されたにもかかわらず、被告の実施する自主点検ではひび割れと判断されている例があるとして、定期検査の結果に信頼性がないと主張する。(p.202)」
「しかしながら、国が実施する定期検査は斜角法のみによって実施されるのに対し、被告の実施する自主検査では、使用する深触子等の機器も多様であり、二次クリーピング法、端部エコー法、フチェーズドアレイ法、縦波斜角法等の手法も必要に応じて採用されるのであるから、定期検査においてインディケーションが発見されず、自主点検においてインディケーションが発見される例があること自体は不合理ではない。原子力安全・保安院も、国と被告の検査結果が異なった原因は、被告の定期検査で採用されている方法が、より感度の高い検査方法であることに起因するものであり、被告の報告等に不正や法令違反の事実は認められなかったとの見解を示している。(p.202)」
「原告らは、原子力安全・保安院がひび割れの基準として示しているDAC100%を越えるひび割れについても国に報告していなかったことは悪質であると主張する。(p.202)」
「しかしながら、国への報告義務が生じるのは、材料、溶接部に関する国の技術基準(通商産業省告示501号及び電気工作物の溶接に関する技術基準を定める省令)に定められている判定基準を超える欠陥とみなされた場合であり、単にDAC100%を越えるインディケーションが観測されただけで国への報告義務が生じるものではないから、原告らの上記主張は採用できない。(p.202-203)」
「原告らは、平成18年2月に3号機の使用済制御棒に確認されたひび割れ等に関し、平成7年の定期検査において、当該部位に指示模様を検知しながら、ひび割れと認識できず異状なしとしたことを捉えて、被告の点検能力に欠如があると主張する。(p.203)」
「しかしながら、IASCCに関する知見が得られていなかった平成7年当時の状況や、当該部位に当時発生していたひび割れの大きさは僅少でであったと考えられることからすれば、ひび割れと認識しなかったとしてもやむを得ない事情があったと認められ、原告らの主張は当たらないというべきである。(p.203)」
「原告らは、本件原子炉施設においてSCCを原因とする漏えい事故があることから、点検・検査によってはひび割れ等を貫通前に発見することができないと主張する。(p.203)」
「しかしながら、昭和63年9月17日に1号機インコアモニタハウジングにおいて発生した漏えい事故はSCCを原因とするものであるが、同号機が建設された当時、溶接における残留応力を除去するようなSCC防止策がとられていなかった。・・・当該漏えい事故が発生した時期に比べ、今日では、点検・検査の手法や精度が向上し、予防対策も進展していると考えられることからすると、当該事故発生に漏えい前にひび割れが発見できなかったとしても、直ちに現在の点検・検査がひび割れを発見するのに不十分なものということにはならない。」(p.203)」
「原告らは、SCCメカニズムは未解明であるからその防止のための対策を立てることができないと主張する。(p.205)」
SCC研究の現状と被告が実施している対策を述べた後、「本件原子炉施設では、1号機及び2号機のシュラウドの一部溶接部につきショットピーニング法が適用され、1ないし3号機の一部溶接部につきレーザーピーニングが適用されている。また、2ないし4号機の再循環配管の溶接部の一部についてIHSIが採用されている。(p.207)」
「原告らは、ショットピーニング法やIHSIなどの技術が用いられた実機でもSCCが発生しているとして、これらの技術の有効性は確認されていないと主張する。(p.207)」
「研究者らの実験により開発されたこれらの技術は、実機に近い条件での実験に基づき、実機でのSCCの発生を完全に防止することはできないにしても、その進展抑制には一定の効果があることが認められるから、原告の上記主張は採用できない(p.207)」
「証人井野博満は、Andersenらの論文や有岡らの研究成果をもとに、水素注入によって腐食電位を低下させても効果がない旨を証言する。(p.208)」
「しかしながら、その指摘の根拠となる論文の著者であるAndersenらは塑性加工を受けたL材においても低電位においては著しくき裂進展速度は低下すると結論付けている。・・・したがって、証人井野博満の上記証言は採用できない。(p.208)」
「証人井野博満は、貴金属注入による配管内の水素の蓄積が平成13年11月7日に1号機において発生した余熱除去系蒸気凝縮系配管破断事故の原因となったとして、貴金属注入を行うことの見直しが必要であると証言する。(p.208)」
「被告は、再発防止策として、配管内に水素を蓄積させないことを基本として、高濃度の水素が滞留し得る箇所であって、水素の燃焼が起こり配管が破断する可能性のある箇所を抽出し、対策を施しており、大きな配管の破断に至るような事象が発生することは考えられないから、同証言を直ちに採用することはできない(p.208-209)」
「原告らは、き裂進展評価の前提となるUTの精度、残留応力分布の解析、応力拡大係数にはそれぞれ問題があり、き裂進展評価に用いるき裂進展速度線図の設定もおよそ科学的なものでなく、かつ、保守的でもないから、予想よりも早くひび割れが進行する可能性があると主張する。(p.210)」
「しかしながら、前述のとおり、UTの測定精度については、シュラウドリング部においてはよく測定できることが確認されており、また、シュラウド胴部においてはUTの測定精度に影響を受けない安全側のき裂進展評価が実施されているのであるから、UTの測定精度を根拠として応力拡大係数に信頼性が欠けるとする原告らの主張は採用できない。(p.210)」
「原告らは、応力拡大係数の決定は近似式によるものであり、先に決められた炉心シュラウドの民間ガイドラインが4次式で近似していたのをさらに手抜きして3次式で近似することにしたものであるから、き裂進展評価に用いられる応力拡大係数には合理性がないかのように主張する。(p.211)」
「しかしながら、維持規格等の規格に定められた3次式と4次式は、いずれも専門家が最新の研究成果を基に、実機評価性等を審議して規格に採用されたものであって、科学的・合理的なものであることから、3次式を評価に適用することが手抜きと評価されるべきものではなく、原告らの蒸気主張は採用できない。(p.211)」
「原告らは、原子力安全・保安院が採用したき裂進展速度線図がNRC-CURVEの傾きを維持したまま日本国内の少数の実験データに合わせてずらしていることに科学的根拠がないこと、NRC-CURVEをずらす根拠とした実験データに硬化層のある試験片のデータがまったくないこと、溶接熱影響部に係わき裂進展試験の結果、低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線を越えるデータが採取されたことなどから、同図を用いたき裂進展評価には科学的根拠がないと主張する。(p.211-212)」
「き裂進展速度線図設定の根拠となった速度データについては、我が国で得られた速度データ以外にも、米国の研究プロジェクトが採取した低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度データのうち、我が国の実機の条件に合致するものが参考にされており、基となる速度データが過少ということはない。実際にも、NRC-CURVE の傾きを採用したき裂進展速度線は結果的にJENESの試験により採取された速度データを包絡していることから、NRC-CURVE の傾きだけを採用することは不合理ではなく、むしろ安全側に設定されているというべきである。(p.212)」
「原告らは、冷間加工を受けた試料が鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を上回る速度データを示していることから、鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図は過小評価であると主張し、証人井野博満も同旨の証言をしている。(p.214)」
「しかしながら、同証人が指摘する論文に引用されている冷間加工を受けた試料の速度データはいずれも当該データと硬さとの関係が不明であり、前提となる腐食環境も国内の原子炉水と異なるものと考えられるから、同論文のデータをもって直ちに鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図が過小評価であるということはできない。(p.214)」
「証人井野博満は、シュラウドの健全性評価に用いるき裂進展速度線図としては低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線図ではなく、鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を用いるべきであると証言する。(p.214)」
「しかしながら、シュラウドについても、モックアップ試験体から採取された試験片での速度データは低炭素ステンレス鋼のき裂進展速度線図に包絡されていることが確認されていることから、シュラウドの健全性評価に用いるき裂進展速度線図に関して溶接熱影響による硬化が確認されている再循環配管母材硬化部と同じように鋭敏化SUS304ステンレス鋼のき裂進展速度線図を採用すべきであるとする同証人の指摘は採用できない。(p.215)」
「原告らは、耐震設計は機器・配管が新品であることを前提として行われるが、本件原子炉施設の現実の機器・配管には無数のひび割れが存在するし、点検・検査の範囲や精度の限界から、すべてのひび割れを発見することはできないことを考慮すれば、本件原子炉施設の耐震安全性の確認においては、発見されずに存在するひび割れを想定して行うのが当然であり、安全上重要な機器において、最悪のひび割れを想定すべきであると主張する。(p.216)」
「しかし、機器・配管のひび割れについては、原子炉施設の耐震設計とは別に、それ自体のリスクが考慮され、前期のとおり、様々な対策や強度の確認評価等が行われ、これらを併せて耐震安全性の確保が企画されているのであるから、本件原子炉施設の耐震安全性の確認において最悪のひび割れを想定するまでの必要はない。(p.216)」
「これに対し、原告らは、現実の機器・配管の状態でも、ひび割れが存在することにより本件原子炉施設の耐震安全性が確保されないと主張する。(p.216)」
「しかし、個々の施設の強度については、前述のとおり、全般的にかなりの安全裕度が採られて設計・施工されており、特に本件原子炉施設の再循環配管やシュラウドについては相当の余裕があると認められる。(p.216)」
「原告らは、ひび割れにより、より弱い地震動で機器・配管が弾性変形領域から塑性変形領域に入るようになり、その部分の揺れ方が変わるだけでなく、繋がった全体の揺れに影響してくるから、すべての機器が弾性領域において振動することを前提とした被告の耐震安全性評価によっては耐震安全性の確認がされていないことになると主張する。(p.218)」
「しかしながら、再循環配管及びシュラウド等にき裂が存在した場合でも、その剛性が低下しなければ、固有周期が長くなることはなく、機器の揺れ方はき裂が存在しない場合と変わることはないところ、再循環配管及びシュラウド等にき裂が存在することによる固有周期の変化は十分小さく、き裂の存在が再循環配管及びシュラウド等の揺れ方に影響を及ぼさないことが確認されている。(p.218)」
「原告らは、東海地震等の大地震が発生したとき、制御棒のひび割れが制御棒挿入の動作不良を引き起こし、あるいは欠損部分が制御棒挿入を阻害する事態が発生する現実的可能性があると主張する。(p.219)」
「しかしながら、前述のとおり、3号機に関しては、すでに熱中性子照射量4.0×1021n/cm2 を上回る制御棒については全挿入が実施されており、全挿入されていないハフニウム板型制御棒のサイクル末期における熱中性子照射量0.6×1021n/cm2 程度と原子力安全・保安院が提示する4.0×1021n/cm2 よりもはるかに低い値に抑制されており、これらの制御棒に関しては、すでに挿入済みであるから挿入製には問題ないものと認められる。(p.219)」
福井県敦賀半島には、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉（原型炉）「もんじゅ」（原子炉1基）と新型転換炉（原型炉）「ふげん」（原子炉1基、廃炉準備中）、日本原子力発電の敦賀原発（原子炉2基）、関西電力の美浜原発（原子炉3基）が設置されている。
『朝日新聞』は、「関西電力が、敦賀半島沖に存在する長さ1キロメートルから20キロメートルの計31本の活断層のうち、16本について過小評価していた」（2007年11月19日付朝刊）と報じた。
この場合の過小評価の意味は、活断層の長さの過小評価でなく、活断層の長さからマグニチュードで示される地震規模を推定する評価式に起因する過小評価。
関西電力が過小評価したということは、同じ国の安全審査指針に則り、『設置許可申請書』を作成した日本原子力研究開発機構（当時、動力炉・核燃料開発事業団）と日本原子力発電にも同様の問題があったと受け止めるべき。それだけではなく、今日、新潟県中越沖地震との関係で俎上に挙げられている「褶曲構造」の褶曲度の解釈によっては、活断層の長さまで過小評価していた可能性が浮上。
関西電力は、当時、国の安全審査指針に則り、「松田の式」（1975年に東大教授の松田時彦が提案）によって活断層の長さから地震規模を推定。松田は、当初から、5キロメートル以下の長さの活断層に適用すると、過小評価になると指摘していた。その場合には、いくつかの活断層が同時に動くとし、関係活断層の合計の長さから地震規模を推定すべきと主張。
過小評価は、そのまま、耐震設計の想定地震として定義される「設計用最強地震」（活断層から評価した現実に起こりえる地震）と「設計用限界地震」（「設計用最強地震」に約3割の余裕を見込んだ地震）の評価に直結。
今回発覚した過小評価問題を受け、原子力安全委員会は、「電力会社が実施してきた推定方法では過小評価になる。今後は認めない」（前出『朝日新聞』）とコメントしているが、過小評価の根源は、原子力安全委員会が作成した安全審査指針と安全審査の考え方にあり、責任を負わなければならないのは、原子力安全委員会。原子力安全委員会は、あたかも第三者のように振舞っているが、それは社会への背信行為。
『朝日新聞』は、「関西電力が、敦賀半島沖に存在する長さ1キロメートルから20キロメートルの計31本の活断層のうち、16本について過小評価していた」（2007年11月19日付朝刊）と報じた。
この場合の過小評価の意味は、活断層の長さの過小評価でなく、活断層の長さからマグニチュードで示される地震規模を推定する評価式に起因する過小評価。
関西電力が過小評価したということは、同じ国の安全審査指針に則り、『設置許可申請書』を作成した日本原子力研究開発機構（当時、動力炉・核燃料開発事業団）と日本原子力発電にも同様の問題があったと受け止めるべき。それだけではなく、今日、新潟県中越沖地震との関係で俎上に挙げられている「褶曲構造」の褶曲度の解釈によっては、活断層の長さまで過小評価していた可能性が浮上。
関西電力は、当時、国の安全審査指針に則り、「松田の式」（1975年に東大教授の松田時彦が提案）によって活断層の長さから地震規模を推定。松田は、当初から、5キロメートル以下の長さの活断層に適用すると、過小評価になると指摘していた。その場合には、いくつかの活断層が同時に動くとし、関係活断層の合計の長さから地震規模を推定すべきと主張。
過小評価は、そのまま、耐震設計の想定地震として定義される「設計用最強地震」（活断層から評価した現実に起こりえる地震）と「設計用限界地震」（「設計用最強地震」に約3割の余裕を見込んだ地震）の評価に直結。
今回発覚した過小評価問題を受け、原子力安全委員会は、「電力会社が実施してきた推定方法では過小評価になる。今後は認めない」（前出『朝日新聞』）とコメントしているが、過小評価の根源は、原子力安全委員会が作成した安全審査指針と安全審査の考え方にあり、責任を負わなければならないのは、原子力安全委員会。原子力安全委員会は、あたかも第三者のように振舞っているが、それは社会への背信行為。