認知症の高齢者が地域社会で専門的な医療や介護を受けられるよう、厚生労働省は、全国の介護支援の拠点150カ所に認知症介護の専門職員を置き、認知症専門医師との連携体制を整備する方針を固めた。要介護状態のお年寄りの2人に1人は認知症の傾向があると言われ、認知症の人を抱える家族のサポートを目指す。
厚生労働省の有識者会議「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクトチーム」が30日に示す認知症総合対策の最終とりまとめ案に盛り込まれる。同省は連携体制の整備に必要な財源を10億円程度と見込み、来年度予算の概算要求に盛り込む方針。
厚労省によると、要介護状態の高齢者のうち、日常生活に支障をきたす認知症の人は02年に149万人。推計では15年には250万人に増える。専門の医師や医療機関は不足しており、診断の遅れや不適切な投薬による症状の悪化、診断後も適切な介護サービスが提供されないという問題が生じている。
医療分野では、地域の認知症対策の中核として、全国150の病院を「認知症疾患医療センター」に指定。患者の積極的な受け入れや専門医師の育成、標準的な治療方法の普及などを図る。
この医療センターと介護分野が連携をとれるよう、全国約3800カ所に設置された「地域包括支援センター」を活用する。保健師やケアマネジャーらが高齢者の介護予防や福祉を包括的にサポートする拠点で、150カ所に新たに認知症の介護施設での実務経験者らを医療との連携担当者として配置。医療センター側の担当者と協力して地域の認知症患者を把握し、医療から介護への切れ目ないサービスを提供する。
患者数を正確に把握するため、09年度に大規模な実態調査をする。
このほか、現役世代で発症する若年性認知症について、電話で相談を受けるコールセンターを1カ所設置する。(中村靖三郎)