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【ズームアップ】減らぬ校内暴力 背景にコミュニケーション不足

2008.6.29 02:43

 「教師の胸ぐらをつかみ、いすを投げつける」「学校で飼育している動物を虐待する」…。これらは和歌山県内の学校で起き、県教委に報告された校内暴力だ。文部科学省のまとめによると、和歌山では小中学校の校内暴力の発生率が全国平均の2倍に達しているという。何が子供たちを暴力に駆り立てるのか。背景と対策を探った。(大森貴弘)

 ■キレる子供

 最近の暴力で特徴的なのは普段はおとなしく見える子供が突然キレて、手が付けられなくなるケースが多いことだ。自分自身のコントロールが利かず突発的に暴力に至る。こうした子供たちについて、県教委小中学校課の高幣泰男指導主事は「最近はささいなことが、暴力に発展する傾向にある。自己表現が下手で、相手に言葉で十分伝えられない」と説明する。社会の中で他人とのかかわりが少なく、コミュニケーションの不足が暴力の背景にあると分析する。

 また、かつては教師への暴力や生徒同士のけんかが起きると、必ず止めに入る生徒が現れたが最近は減ってきたという。高幣指導主事は「止めに入ることで、自分が巻き込まれることを恐れるからではないか」といい、他人とかかわりを持ちたがらない人間関係の希薄さを嘆く。

 ■暴力の芽を摘む

 校内暴力は、対教師暴力▽生徒間暴力▽対人暴力▽器物破損−の4つに大別される。文科省は項目ごとに具体的な事例を挙げて基準を示し、都道府県はそれに基づいて調査をしている。県教委のまとめによると、県内の小中学校では平成18年度、761件の校内暴力が確認された。1000人あたりに換算すると6・2件で、全国平均3・1件の2倍に達している。

 こうした現状に対して県教委は昨年度から、校内暴力などの問題が深刻な和歌山市や橋本市などの中学校10校に教師や警察OBを配置する事業を始めた。当初は単年度事業だったが、生徒の問題行動が減るなど成果があったため、今年度も5校で継続している。

 また県警は14年から、警察官を小中学校に派遣し社会のルールを教える授業を、クラス単位で実施している。子供たちの規範意識を高めることで、校内暴力の芽を摘む取り組みだ。

 さらに県教委は今年度から「市民性を育てる教育」として、地域の人にも学校教育に参加してもらう“共育”コミュニティーの形成を目指し、地域ぐるみで校内暴力に歯止めをかけるねらいだ。

 ■小さな学校の実践例

 他人との関わりを避けたがる子供たちに対して、地域の人たちが濃密な関係を持つことで、暴力を排除できているケースがある。

 広川町の山間にある町立津木中学校は、約20年前からホタルの保護活動を通じて地域社会との“共育”を実践している。長年同校で指導してきた大橋信之教諭(47)=現・有田市立箕島中=は、「学校と地域との相互貢献が大事」と話す。ホタルを増やすという地域への貢献が住民の理解を得られ、学校まで頻繁に足を運んでくれるようになったという。

 「全校生徒約20人の小規模校だからできた部分もある」と大橋教諭は説明するが、ホタル保護活動を始めて以降、生徒たちは住民に積極的にあいさつするようになり、校内暴力とは無縁だ。地域が一丸となって子供を育てるしくみが、暴力がない学校実現に向けたモデルケースになるかもしれない。

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