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野生イノシシ肉がE型肝炎感染源に 厚労省「火通して」

2008年4月7日

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グラフ

 E型肝炎の感染源の一つが野生イノシシ肉であることが、国内で初めて遺伝子レベルで確認されていたことが分かった。全国的にE型肝炎ウイルス(HEV)感染者が急増するなか、野生イノシシの5〜10%がHEVを保有している可能性があるとされ、厚生労働省は「野生動物の肉を食べる際は十分に火を通すなど注意してほしい」と呼びかけている。

 HEVの感染源が遺伝子レベルで確認されたのは、05年1月に福岡県筑豊地方で夫が捕ってきた野生イノシシ肉を焼き肉にして食べた当時50代の女性。同年3月、倦怠(けんたい)感や食欲不振を訴えて病院に行ったところ、E型肝炎に感染した疑いがあると診断された。

 自宅の冷凍庫にイノシシ肉が保管してあったことから、国立感染症研究所(東京)が肉と女性の血清から検出したHEVの塩基配列を比較。配列がほぼ一致し、イノシシ肉が感染源と特定された。十分に火を通していなかったなどの理由が考えられるという。

 E型肝炎は従来、開発途上国を旅行した人が水などから感染するケースが多いとされてきたが、02年以降、国内での感染が疑われるケースが急増している。

 朝日新聞社が各都道府県などに尋ねたところ、99〜01年の3年間で全国で3件しか発生していなかったE型肝炎は02年約20件、03年約30件、06年には約70件と大幅に増加。このうち国内での感染が疑われるケースは02〜04年が20件前後、06年は44件になった。

 地域的には北海道が最も多く71件。ついで東京が23件、愛知16件、神奈川13件と続いた。一方、秋田、石川、岐阜、島根、香川などでは感染の報告はなく、青森では今年2月に1件報告があった。

 福岡県保健環境研究所は06、07年度の2年間、県猟友会の協力を得て野生イノシシなどを対象にHEV遺伝子について調査した。07年度分は検査中だが、06年度分はイノシシ77頭のうち1割強にあたる9頭からHEV遺伝子が検出された。

 厚労省によると、各地の同様の調査では地域差はあるものの、野生イノシシの5〜10%からHEV遺伝子が検出されているという。イノシシ以外にも03年に兵庫県で冷凍したシカの生肉を食べた4人がHEVに感染したほか、北海道では市販の豚レバーからHEV遺伝子が検出されたケースもあるという。

 感染の報告数が増えたのは、高感度なHEV遺伝子の検出法などが広まったことが背景にあるとされる。厚労省食品安全部監視安全課は(1)野生動物の肉の生食は避け、しっかり火を通す(2)生肉に触れたまな板やはしは熱湯消毒する――ことなどを呼びかけている。(渡辺翔太郎)

     ◇

 〈E型肝炎〉 HEVに汚染された水や食べ物から経口感染し、吐き気や食欲不振などの症状が出る。通常は一過性で慢性化しないが、まれに劇症化し死亡することがある。約100年前に英国から輸入された豚と一緒に国内に入ってきた可能性があるとの研究結果があり、シカ肉や豚レバーによる感染例や、輸血で感染した例も報告されている。加熱すると感染性を失う。

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