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脊椎動物の祖先はナメクジウオ 「ホヤ」との論争に決着

2008年6月19日2時17分

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 背骨をもつ脊椎(せきつい)動物の祖先はホヤでなく、ナメクジウオだった。京都大、国立遺伝学研究所が米英などの研究機関とナメクジウオの全遺伝情報(ゲノム)を解読し、ヒトやホヤのゲノムと比べた結果、進化の順番が明らかになった。19日付の英科学誌ネイチャー(電子版)に発表する。

 ナメクジウオは浅い海底にすむ体長3〜5センチほどの生物で、日本では瀬戸内海などにいる。背骨(脊椎)はなく、脊索(せきさく)と呼ばれる筋が頭から尾まで貫いている。「頭索(とうさく)動物」に分類される。

 一方、ホヤは、生まれた直後はオタマジャクシのような形をしていて、尾にやはり脊索がある。「尾索(びさく)動物」に分けられ、尾の脊索は成体になると消失してしまう。

 ヒトなどの哺乳(ほにゅう)類や、爬虫(はちゅう)類、魚類などの脊椎は脊索が進化してできたとされ、ヒトも大きくはナメクジウオやホヤと同じ「脊索動物」に属する。これまでは最初にホヤが生まれ、その後、形態がより脊椎動物に近いナメクジウオが現れたと考えられていた。

 研究チームは今回、ナメクジウオのゲノムをすべて解読して、約2万1600個の遺伝子を見つけた。これらを、すでに解読ずみのヒトやホヤのゲノムと比べたところ、ナメクジウオが最初に生まれたことが確認できた。

 研究リーダーの一人、京都大の佐藤矩行(のりゆき)教授によると、遅くとも5億2千万年前、脊索動物の共通の祖先からナメクジウオが分岐し、その後、脊椎動物に進化した。ホヤはその過程で分かれ、独自に進化したと考えられるという。

 また、ヒトの遺伝子の9割がナメクジウオにもあることも、今回、わかった。

 佐藤さんは「脊索動物の進化と脊椎動物の起源について、最終決着がついた。新たな学説はもう生まれない」と話す。(香取啓介)

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