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原爆症認定訴訟、長崎地裁でも被爆者20人が勝訴

2008年6月23日13時36分

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写真勝訴の知らせに喜ぶ支持者たち=23日午前11時8分、長崎地裁、恒成利幸撮影写真勝訴の知らせに涙を流して喜ぶ支持者=23日午前、長崎地裁、恒成利幸撮影写真判決後の原告団による報告集会は、全面勝訴でなかったため重苦しい雰囲気で開かれた=23日正午すぎ、長崎市、恒成利幸撮影

 原爆症の認定申請を却下された長崎県内の被爆者27人が不認定処分の取り消しなどを求めた集団訴訟の判決が23日、長崎地裁であった。田川直之裁判長(須田啓之裁判長代読)は放射線と病気との因果関係を認め、20人の却下処分を取り消した。7人の請求は棄却した。

 4月に運用が始まった新基準で積極認定する5疾病(がん、白血病、副甲状腺機能高進症、放射線白内障、放射線に起因する心筋梗塞(こうそく)以外の病気の11人では9人を原爆症と認定した。

 とくに国が「肝臓は放射線の影響を受けにくく、被爆後、何十年も経過した後に肝機能障害が生じることはない」と主張していた慢性肝炎4人と肝硬変2人について、判決は「慢性肝炎、肝障害は放射線起因性が認められる」として原爆症と認めた。

 関節障害やガラス摘出後遺症などの3人も原爆症と認定した。5月の大阪高裁に続いて5疾病以外の不認定を不当とする判断が示されたことで、国は新基準やその運用の見直しを迫られそうだ。

 原発性心筋症などは「放射線以外に原因があり現在の知見では放射線との関連が示されていない」として認めなかった。また5疾病の16人のうち5人については「被爆地点からすると、健康に影響を与えるほどの初期放射線に被曝(ひばく)したとは考えられない」などとして退けた。初判断となった胎児被爆者については「母親が放射線による急性症状を発症したと認められる証拠はない」として棄却した。1人300万円の損害賠償については全員の請求を棄却した。

 これまで「総合的に判断している」としてきた国の審査について、判決は「原因確率以外の要素が実際にどの程度考慮されているか、明らかでない」と不透明さを指摘した。

 さらに、審査にあたる医療分科会に対して、「算出した推定被曝線量だけで判断しており、その他の事情について、全く考慮の余地なしとする扱いをしたと考えられる。残留放射線による被曝や内部被曝は、被爆者に対して推定線量を超えた被曝をもたらしている蓋然性(がいぜんせい)が高い」と、国の審査方針を「不適切」とした。

 原告は長崎への原爆投下時に爆心地から0.5〜4.8キロにいた被爆者ら27人(うち8人が死亡)。11人(申請後にがんになった1人を含む)が新基準によって4月以降に原爆症に認定され、判決でも認められた。

     ◇

 <原爆症認定と集団訴訟> 原爆の放射線が原因で発病するか治癒能力が低下した(放射線起因性)、医療が必要な状態にある(要医療性)の2要件を満たす人を厚生労働相が認定し、月額約13万7千円の医療特別手当を支給する。被爆者健康手帳を持つ約25万人のうち、認定者は約2200人。認定申請を却下された被爆者305人が03年から、処分取り消しを求めて17地裁に提訴し、国は8連敗していた。国は旧基準で、爆心地からの距離を基に被爆者が浴びた放射線量を算出して「原因確率」を導き、機械的に認定していた。4月からは、五つの疾病のいずれかを発症し、一定条件を満たせば「積極認定」するよう基準を改めた。22日までに新基準で原告135人の136件を含む373件が認定された。

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