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【第33回】 2008年06月19日

宮崎勤の死刑執行で鳩山法相を批判した反対派議員の筋違い

 死刑反対を唱える議連や弁護士会は、4月までに10人の死刑執行を行なっていた鳩山法相と法務省の動きに危機感を強めていた。そのため、5月に入ってからある策を講じて対抗することになる。それが死刑反対派弁護士などによる確定囚への「再審請求」の提出だ。

 こうした抵抗手段は大いなる効果を発揮した。鳩山法相と法務省は、度々、予定されていた死刑確定囚への執行を見送らざるを得ない羽目に陥ったのだ。

実際に執行できる
死刑囚は限られている

 皮肉なことに、死刑反対派にこうした「再審請求」という戦術を可能たらしめたのは、鳩山法相の行なった司法改革であった。

 じつは、確定囚が100人を超えたといっても、実際に執行可能な死刑囚は限られている。

 まず、免田事件のような古い事件で、ほとんど自白のみで逮捕され死刑が確定したようなケースだ。当時の捜査手法への信憑性の問題もあり、こうした事件は冤罪の可能性がぬぐえない。よって確定囚への執行は除外されてきた。

 また再審請求がすでに提出されている死刑囚への執行も同様だ。さらには、極左暴力による政治・思想犯的な死刑確定囚への執行も敬遠されがちだ。そして組織犯罪の死刑囚に関しても、死刑執行は極めて困難な状況にある。

 たとえば、オウム真理教事件のように未だ逃亡犯がいる場合だ。なぜなら、仮に逃亡犯が捕まった時、主犯格の確定囚・松本智津夫(麻原彰晃)が死んでいたらどうだろうか。それは、重要な証人を失うことになり、公判維持にも影響を与える可能性がある。さらに次のようなことも考えられる。

 まだ逃亡犯がいる最中に、松本死刑囚への死刑を執行したとしよう。その場合、逃亡犯らによる報復テロ、あるいは執行した鳩山法相や法務省、及び家族と関係者を狙い撃ちした報復攻撃も考えられる。現に過去、鳩山法相は中核派のターゲットになり、本郷の事務所と音羽の実家を爆破されている。

 そう考えると、すべての逃亡犯の身柄を確保するまで、全関係者に対して何十年にもわたって警護を付けなくてはならないことになる。

 このように、執行しにくいケースを除き、さらに時系列で考えれば、消去法的に次回の被死刑執行者が絞られる。

関連キーワード:社会問題 政治

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執筆者プロフィル

写真:上杉隆

上杉隆
(ジャーナリスト)

1968年福岡県生まれ。都留文科大学卒業。テレビ局、衆議院議員公設秘書、ニューヨーク・タイムズ東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。「官邸崩壊 安倍政権迷走の一年」「小泉の勝利 メディアの敗北」「田中真紀子の恩讐」など著書多数。

この連載について

永田町を震撼させる気鋭の政治ジャーナリスト・上杉隆が政界に鋭く斬りこむ週刊コラム。週刊誌よりもホットで早いスクープ情報は、目が離せない。

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