岩手・宮城内陸地震は22日、10人が行方不明のまま、最も多くの人員を投入した陸上自衛隊の捜索が打ち切られた。道路の寸断で現場に重機が少ないため、泥まみれになりながらバケツなどを使って作業してきた。行方不明者の家族らの胸中には、無念と感謝の思いが交錯した。【山衛守剛、須藤唯哉、鈴木一也】
5人が遺体で発見された宮城県栗原市の「駒の湯温泉」では、従業員の佐藤幸雄さん(62)と高橋恵子さん(55)が行方不明のまま。佐藤さんの姉、大内正子さん(70)は毎朝、仏壇に手を合わせ、「早く体をきれいに洗ってあげたい」と祈り続けた。撤収の知らせに「あきらめきれない。なぜ撤収するの」と言葉を詰まらせた。
高橋さんの兄、秋山三千男さん(58)は、「懸命に泥だらけになりながら捜索していただいて感謝している。ただ、引き揚げる前に見つけてほしかった」と肩を落とした。
白糸の滝付近で不明になった森正弘さん(61)の妹、古谷文子さん(59)は22日午後に栗原市役所で、ほかの行方不明者の家族と一緒に佐藤勇市長から撤収を知らされた。「『99%生存の可能性がないため』と言われた。私たち家族は少しでも望みがあるうちは絶対にあきらめたくない。あと1週間、人数を減らしてもいいから、自衛隊の皆さんには続けてほしい」と願った。
打ち切りについて、村井嘉浩宮城県知事は県災害対策本部会議後、「ぎりぎりまで捜してもらったが、限界だと思う。苦渋の選択だった」と述べた。
また、捜索打ち切りを受けて会見した佐藤市長は、行方不明者の家族に伝えた際、「9日目で打ち切るのは早い」との声も出たことを明らかにした。佐藤市長は「捜索を続けてほしいと言い続けてきた。家族のご理解をいただくのは難しいと感じているが、これまでの捜索活動に心から感謝したい」と話した。
一方、この日の駒の湯温泉の捜索では、柱が折れそうなため、チェーンソーを使って建物を解体した。作業を中断している夜間に雨で建物周辺に泥水がたまり、午前中は排水作業に追われるなど困難な状況が続いている。
毎日新聞 2008年6月22日 21時17分(最終更新 6月22日 23時39分)