おサイフケータイの活用も視野
電子マネー機能は,将来的には拡張する計画がある。というのも,taspoとは異なる規格を採用した非接触ICカードが普及し始めているからだ。
taspoの非接触ICカードは,タイプAと呼ぶ規格を採用している。安価にカードを製造できる利点はあるものの,現在普及し始めたFeliCa対応のおサイフケータイなどとは規格が異なる。
日本たばこ協会では将来を見越し,「自動販売機の読み取り機は,ソフトウエアの更新でタイプA以外にも対応できるようにしている」(日本たばこ産業の梶部長)。おサイフケータイへの対応は,「2008年度の稼働後に検討を開始する」(同氏)という。
圏外の自販機は人手でデータ更新
taspoの仕組みは携帯電話のエリアに依存するという弱点がある。FOMAモジュール「UM01-KO」は,通常のFOMAが使う2GHz帯だけでなく,山間部などでも電波が届きやすい800MHz帯にも対応。NTTドコモが地方で展開する「FOMAプラスエリア」で使えるため,圏外に設置される自動販売機はそれほど多くないという。
それでも圏外になる自動販売機は残る。特に対応が難しいのはビル内など屋内に設置された自動販売機。地図上では圏内でも,ビルの階が違うだけで圏内になったり圏外になったりするからだ。「ビルの中は実際に行ってみないと判断できない。場所によっては指向性の強いアンテナを使うなどして対応していく」(システムの構築を統括するNTTデータ 製造・流通ビジネス事業本部の田代裕三VMAIプロジェクト推進室長)。
日本たばこ産業の梶部長によると,今のところ圏外になるのは「全体の数パーセント」。圏外では無効カード情報が配信できず,不正使用が防げない。そこで圏外の自動販売機は,人手によるデータ更新を検討している。
“即時接続”で応答時間を短縮
日本たばこ協会は,携帯電話モジュールを使用するに当たり,NTTドコモのリモート・アクセス・サービス「ビジネスmoperaアクセスプレミアム FOMAタイプ」を採用した。このサービスを使って,日本たばこ協会のデータ・センターとFOMAネットワーク間を専用線で接続する(図2)。
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図2●taspoの利用するネットワーク環境
taspo対応たばこ自動販売機はFOMAのネットワークを経由して日本たばこ協会のデータ・センターに接続する。NTTドコモのリモート・アクセス・サービス「ビジネスmoperaアクセスプレミアムFOMAタイプ」を利用する。
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taspoの電子マネーは通信が不可欠なため,ダイヤルアップ接続にかかる時間はユーザーの使い勝手を大きく左右する。この時間を短縮するため日本たばこ協会は,ビジネスmoperaアクセスプレミアムのオプション機能である「即時接続機能」を使った。
即時接続機能とは,PPPのセッションを端末側と交換機側で維持したままの状態にして,再接続の時間を事実上なくすもの。一定時間データ通信が発生しなければ,通信用チャネルをいったん待ち受け用チャネルに移す。そこでデータ通信が再度発生した場合は,ダイヤルアップせずに,待ち受け用チャネルから通信チャネルに移って通信を始める仕掛けだ。
この機能を使うことで,taspoカードを自動販売機の読み取り機にかざしてからカード残高などを表示するまでの時間を3秒から4秒に抑えた。通常のダイヤルアップ接続よりも,時間を短縮できたという。