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大阪・あいりん地区:日雇い労働者の高齢化で生活保護急増 20年で7倍、5人に1人

 日本最大の日雇い労働者の街・あいりん地区(大阪市西成区)で、生活保護受給者が急増している。20年前の約7・4倍にも達し、現在は5人に1人以上が受給者だ。大阪市全体の増加率は2・6倍で、同地区の急増ぶりが際立っている。背景には、大阪万博のあった70年ごろに全国から集まった労働者が高齢化しているという現状がある。生活格差の広がりは深刻さを増している。

 西成区保健福祉センターによると、同地区の生活保護世帯は89年度末には910世帯だったが、00年ごろから急激に増え始め、01年に3000世帯を突破。今年3月には6725世帯になった。この間、同地区に住む人はほぼ3万人で推移しているとされ、現在は、5人に1人以上が保護を受けている計算になる。

 最も大きな要因は住民の高齢化だ。同地区には、高度成長期から大阪万博の特需にあたる時期(60年代~70年代初頭ごろ)に働き盛りの人たちが流入。こうした労働者の高齢化が進み、同地区の高齢化率(29・9%、05年)は大阪府(18・5%)や全国平均(20・1%)に比べ突出して高い。「50歳を過ぎると仕事は見つけにくい」とされ、生活保護に頼らざるを得ない人が増えている。

 また、旅館と見なされるため生活保護の対象外だった簡易宿泊所が安価なアパートに転用され、流入者が増加している。保護受給者からは確実に家賃が得られるため部屋数は年々増えている。アパートは昨年3月現在で71棟約6700室。物価が安く、支援活動もあって暮らしやすい面もあるため、保護を受ける目的で市外から移住する人も少なくない。他の自治体の窓口で片道の交通費をもらい、移り住む人もいる。しかし、独居が多く、介護が必要となった場合の対応が懸念される。

 一方、西成区の男性の平均寿命は73・1歳(05年)で全国の市区町村で最も短い。西成区の担当者は「その日暮らしで、病気やけがをするとすぐに生活が成り立たなくなる人が多い。(平均寿命は)あいりん地区の結核の罹患(りかん)率の高さなどが影響している」とみる。

 同市は「保護世帯の急増は、市の財政にも影響する。労働・雇用施策の充実など、生活保護の手前で食い止める受け皿の整備を考えないといけない」と話している。【田中博子】

 ◇非営利組織「釜ケ崎支援機構」の山田実理事長の話

 高齢化して働き口が見つからなくなった労働者に対して、今は生活保護しかセーフティーネットがなく、福祉予算ばかりが膨らむ悪循環に陥っている。労働は、収入を得る手段であるだけでなく、生きがいや健康維持にもつながる。国や地方が企業の協力を得ながら、社会的事業として高齢者の就労の場を作ることが求められる。

毎日新聞 2008年6月21日 大阪夕刊

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