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【eye】秋葉原無差別殺傷事件 “記念撮影”する傍観者たち (1/2ページ)

2008.6.18 07:41
このニュースのトピックス秋葉原通り魔事件
事件から4日経った現場近くの献花台では、学生が手を合わせに来る姿も見られた=12日午前、東京・外神田(中川春佳撮影)事件から4日経った現場近くの献花台では、学生が手を合わせに来る姿も見られた=12日午前、東京・外神田(中川春佳撮影)

 こんな会話が耳に飛び込んできた。

 「すごいの見てるんだよ。血も撮れたかも。いますぐ送るね」

 「倒れてるところ見たよ。ブログに載せようか」

 8日午後2時すぎ、東京・秋葉原で無差別殺傷事件が起きた直後だった。高架になっているJR秋葉原駅前の歩行者用通路に、多くの人が群がっていた。ちょうど事件現場が見通せる場所で、われ先に携帯電話をかざし、現場を撮影しようとしていた。

 その多くは20代とみられる若い男女。電話で様子を伝える人もいれば、撮った写真を送信しているのだろう、画面を見ながら親指をせわしなく動かしている人たちも。ひとしきり写真を撮ると、何ごともなかったかのように、その場を立ち去っていく。

 それは、妙に冷え冷えとした狂騒だった−。当時、現場の路上にいた男性会社員(36)も「(周囲の人々の様子は)興奮というより、冷めた感じで不気味だった。『自分には関係ない』という空気を強く感じた」と振り返る。秋葉原に頻繁に通っている彼は、「アキバに集まってくる若者はアニメやゲームといったメディアで死体を見慣れている。しかもアキバという“劇場”で起きたから、リアリティーに乏しく、虚構の出来事のように思えたのでは」と話す。

 現場に無造作にレンズを向けていた彼らの姿からは、被害者の痛みに対する想像力は感じとれない。自分や家族が刺されたかもしれないという恐怖感も伝わってこない。どこか異様な風景だった。

 ■別人格の“軽さ”

 携帯電話などデジタル機器が普及し、インターネット環境が整ったことで、メディアの姿は大きく変わった。掲示板やブログなどを使って、誰でも情報の発信者になれる時代。そんなメディアの変化は、人々の価値観もいやおうなく変えつつある。

 現実感や当事者感覚に乏しい人が増えているのは確かなようだ。東大大学院情報学環の西垣通(とおる)教授(情報学、メディア論)は「3年ぐらい前から、誰でもブログが簡単に作れるようになったことと関係があるのでは」と話す。

 西垣教授は「ネット上では、別の人格になりきって注目されれば、自信を取り戻したり、劣等感を解消することも可能」とブログの特徴を指摘したうえで、こう警告する。「ネット上のバーチャルな世界が本来の自分の姿だと錯覚するようになると、生きている重みを実感しづらくなってしまう」

 一方、ネット上に限った問題ではないと指摘するのは立教大社会学部の是永論(これながろん)教授(情報行動論)だ。「ブログやネットが『想像力』を奪っている、というより、むしろ今まで『公共の場の発言』がどのような影響力を与えるか、きちんと考えたり訓練する場が乏しかった」。インターネットが仲間内だけの対話ツールではなく、不特定多数に向けられたメディアで、一定の「公共性」があるという感覚は、たしかに薄いのかもしれない。

このニュースの写真

事件から4日経った現場近くの献花台では、学生が手を合わせに来る姿も見られた=12日午前、東京・外神田(中川春佳撮影)
献花台に手を合わせる人たち=14日午後、東京・秋葉原
送検される加藤智大容疑者=10日午前10時27分(中鉢久美子撮影)
万世橋署から送検される加藤容疑者(真ん中)=10日午前10時21分、東京・千代田区(撮影・緑川真実)
東京・秋葉原の無差別殺傷事件の現場を訪れ、献花台前で犠牲者の冥福を祈る自民党の麻生太郎前幹事長(左)=13日午前
事件現場となった道路のすぐとなりにも、献花台と同様大量の花が供えられていた=12日午前、東京都・外神田(中川春佳撮影)
現場に残された容疑者が使った2トントラックを調べる警視庁捜査員=6月8日午後3時5分、東京都千代田区外神田(大井田裕撮影)
販売されているダガーナイフ=10日午後4時46分、大阪市北区梅田の「フォルクス」(甘利慈撮影)
両刃で殺傷力の高いダガーナイフ=東京・上野のナイフ専門店「マルキン商店」

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