RSS 1.0
全blogこのblog   ブロックブログの新サービス > > 格安レンタルサーバ サポートBBS 携帯でblogを見る 用語解説 ヘルプ BLOCKBLOG

2005/04/21

トリプルチーム(1)[気がついたら自分がネトアになっていた。]

僕は天才であった。
疑う余地の無い天才であった。
けれどもそれは昔の話で、今では凡人に成り下がった。
















>半角英数さんはとても素敵です。
メールが来ていた。
いやあ、これはezだ。

これは、ワナだ。
ちょうどその頃、僕のブログは荒れに荒れていた。
間違いなく、ワナだ。
僕はそんなものに騙されるようなnoobじゃあない。


いかにもありがちな本名っぽいハンドルネームと、プロバイダーのメールアドレス。
10行と少しの文章に、よろしければと言い訳をして返信を求める締めの一文。

僕は賢明であるからして、その意味を一瞬で悟った。
これは、熱心な海外ボツニュースのファンが僕を陥れる為に差し向けた、少し大掛かりだが陳腐なワナだ。その手には乗らない。暇で執念深い海外ボツニュース信者。全てお見通しだ。


適当なメールを返した。
出来る限り適当なメールを返した。

来たメールを丸々引用した返信メールの一番上に、
「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」
と、あからさまに定形文な1行を付け加え、そのまま返信ボタンを押した。

その間、約20秒。
秒殺。なんて強さだ。




1つ想定外だったのは、それに返事が来た事だろう。
返信を感謝する書き出しと20行足らずの文章に、よろしければと言い訳をして返信を求める締めの一文。ワンパターンだ。執念深い奴。


まあ、こういうのはよくある事なのだろう。
海外ボツニュースのような巨大なウェブサイトには熱烈な信者がいる。
その内の1人の狂信的で暇な奴が僕から何かを引き出して貶めようとしているだけだ。

馬鹿は放置に限ると、僕はそのメールを無視した。
なんとなくゴミ箱に放り込む事はしなかったものの、無かったものとして処理した。
気がかりだったのは、メールアドレスがフリーメールのものではなかった事と、その日本語が完璧であり尚且つ美しかった事。だがこれはワナだ。
大学は出たものの就職し損ねたニートか何かの仕業だろう。






それから1週間ほどして、またメールが来た。
そこには、僕がブログに投稿した文章を褒める言葉と、丁寧な考察が書かれていた。
それは幾らかは当っており、幾らかは外れていた。
まあ、どうでもよかった。
適当におだてて誘き出すという作戦なのだろう。
なかなかに悪知恵がはたらく奴だ、とだけ思った。
けれども褒められた事が嬉しくて、ついつい返信してしまった。

返信ボタンを押して、
「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。」
とだけ書いて返信ボタンを即押し。

その間、約15秒。
なんて強さだ。
もはや作業だ。






翌日、またメールが来ていた。
けれども僕はそんなくだらないものを気にする必要は無かった。
これは誰かが仕組んだちょっと手の込んだ大掛かりだけど陳腐なワナで、僕の時間と日常を傷つけるのが目的。あわよくば個人情報でも引き出して晒して笑う魂胆なのだ。

そこには、返信が来ると嬉しいのだといった事がおべんちゃら交じりに整然とした日本語で書かれており、それに続いて自己紹介が書かれていた。
そして奴はついに馬脚を現した。


「簡単なもので構わないので、自己紹介お願いします。」
来た。
ワナだ。
真性引き篭もりという生業、hankakueisuuという無個性な、
「IDは半角英数でお願いします」
というブログ登録時の文章から引っ張り出したハンドルネーム。
それを破壊して個人情報を引き出して笑いものにするつもりなんだ。
僕はproだ。noobじゃない。その手には乗らない。


個人情報を要求する行をコピーして、
「お断りします。」
と7文字。

その間、約20秒。
見事な処理能力。





翌日、またメールが来ていた。
まったく、馬鹿な奴だ。
こちらは全部お見通しなのに。

ネカマだろ、ネカマ。
女を装って近づいて、キモい発言を引き出して笑う。
真性引き篭もり、中卒、ブリザドニスタ。
ハメるにはもってこいのターゲットって事だろ。

しかし、その努力は徒労に終わる。
何故なら僕はそんなものにホイホイと引っかかるような馬鹿ではないからだ。
来るメール来るメール、一瞥しては鼻で笑い、1分足らずで処理をする。
その手には乗らない。

長々とお詫びやらブログとhankakueisuuを褒める文章やらが続いたあとで、
「下の名前だけでも教えていただけませんか?」
lol


その行をそのままコピーして、
「お断りします。」

その間、約20秒。
さすがに疲れてきた。






またメールが来ていた。

気になる点は3つに増えていた。
・プロバイダーのメールアドレスである事、
・日本語がやけに美しい事、
・年齢が僕より2回りも上な事。
解せない。

普通ネカマを装うのなら、15〜22くらいだろう。
なんでそんなに上なのだろうと、かなり悩んだ。

けれども、ある事に気がつき僕は笑った。
リサーチ、市場調査、敵情視察。
検索エンジンでララ+フリン+ボイルと打ち込んでEntr。
35歳、なるほどね。そういう事か。


そのメールには個人情報を問うた事への丁寧なお詫びの言葉と、うんざりする程に続くブログの投稿を褒めながら解説する文章が書かれており、「メッセでお話しませんか?」。


その行そのままコピーして、
「お断りします。」

その手には乗らないってば。
メッセのログを晒すんだろ。
僕は馬鹿じゃない。

----
トリプルチーム(2)

posted at 2005/04/21 16:27 | 真性引き篭もりhankakueisuu |

トリプルチーム(2)[気がついたら自分がネトアになっていた。]

またメールが来ていた。

いかにもありがちな女性の名前、フリーのメールアドレス。
昨日までとは別の人。
世も末だ。


その頃、僕のブログは酷く荒れていた。
解りやすい展開だ。

荒れる、暴れる、女を装いメールを寄越す。
インテリジェンスの欠片も無いワンパターンなやり口。

「半角英数さんの文章はとても素敵です」
ワンパターン。
「名前だけでも教えてくれませんか」
ワンパターン。
「無理しないでください」
ワンパターン。


捻りが足りないね、捻りが。
もっと利口なやり口というものを手取り足取り教えてやろうかと思ってしまうくらいのnoobが2匹。

やるならば、勝てる相手を選ぶべきだ。
確実に勝てる相手を選択し、労力をつぎ込むべきだ。
選んだ相手が悪すぎる。
僕はnoobじゃない。proだ。一発だ。見破った。


何通目かで、彼女は唐突に言った。
「私はアメリカ在住です」
lol
ダウト。
なにそれ。
ありがちなワナ。








しばらくして、またメールが来ていた。

ありふれた名前、プロバイダーのメールアドレス、昨日までとは別の人。

本文は一行。
「よろしくやりましょう!」



新しいパターン、新しいスタイル、新しいやり口。
なかなかに利口だが、リアリティ無さすぎ。
送付された2枚の画像にはずば抜けた美人。
ウェブ上で拾ったものだろう。


手の込んだ事をやるもんだ。
とりあえず画像をMyPictureに証拠資料として保存した上でメールは無視。
そんなワナにはハマらない。
その手には乗らない。
馬鹿は相手にすると付け上がるからな。
無視に限る。









数日後、気がついたら僕は3人の何者かとメールをしていた。
僕をハメようとしている奴は一体何人いるんだ?
1人か?2人か?3人か?
わからなかった。


理解できていたのは、僕には敵が大勢おり、僕を罠にハメて遊ぼうとする暇な奴はインターネット上に大勢いるという事実だけであった。その日も、次の日も、また次の日も僕のブログはいい塩梅に荒れており、その荒れ様だけが僕に正気を保たせていた。


そのコメント欄の荒れ様、嘲笑と罵倒が行きかう様こそが、本来あるべき姿であった。
僕の鞄は不完全なサッカーボールでしかなかったし、半径一メートルに近づいたら負けであり、登校する度に鉛筆で大きくバカと書き直された机が常にあったし、事実馬鹿であった。
それは疑う余地の無い真実であったし、紛う事無きナチュラルボーンであった。


悪夢のように思えるが、それは悪夢などではなく、1つの正しい才能であった。
親しげに呼び寄せる声は下水処理場横の水藻漂うドブ川へとランドセルごと突き落とす為のトラップだ。そうやって僕は賢くなった。誰よりも用心深く、誰よりも執念深く、誰よりも汚く、誰よりも4K.Grubby。

その手には乗らない。
これは、ワナだ。
手の込んだワナだ。






何がいけなかったのかはよくわからない。

DOTA allstarsの無くなった日常というものは余りにも暇でネカマの迷惑メールを相手にするくらいに暇だった。相手は僕を罠にハメようとしている悪意のあるネットオタクだから、何一つ気を使わなくてもいいし、ブログの投稿のように推敲しなくてもいい。好き放題、吐き放題だ。その位に暇だった。

彼らのメールを読んでいると、その暇さが一瞬とはいえ綺麗に消費された。
非生産的で無価値な事だとわかっていたが、DOTA allstarsの空白よりは幾分か精神的に楽だった。
1行だった返信メールがやがて2行になり、3行になり、4行になった。


ある時強烈な自己嫌悪を覚えて全て無視してみたら、三者三様丁寧に謝られた。

「読んでくれるだけでいいので、メールさせてください」
ふざけるな。

「お断りだ!」
と返した。

「そんな事言わないで下さい」
と返ってきた。






もう、滅茶苦茶だった。

ブロガーはモテるというのは有名な事実だ。
とあるブロガーなどはチビデブ不細工の狸ブロガーをのっぽのナイスガイだと風説に流布し、寄ってきた女どもを片っ端からハメ撮っては飲み会と称してハメ撮りビデオの鑑賞会を開いているというのは有名な事実であり、WinMXとかでAブロガーシリーズと称されてバンバン流れまくっている。70番くらいまである。けれども、それは極一部の限られたブロガーのみで僕とは無縁の世界の話だ。

真性引き篭もりだぞ。
真性引き篭もり。

じゃあこれは、一体なんなんだ。
僕のメールボックスを埋める色とりどりのメールの山は……わかった。

ワナだ。
答えは1つ。
執念深いネカマのワナだ。




彼女ら、。彼女らは言った。

「切込隊長さんは好きだけど半角さんはもっと好きなの。」
ちょっと待て、おい。
いくらなんでも落差ありすぎだろう。

第一志望イエール州立大学第二希望大阪モンゴリアン馬術大学校(専門学校相当、学費2年で780万円)みたいな瀑布だ。第一志望が仲間ゆきえで第二志望が細木和子かよ。デビ婦人以下かよ。ありえないだろ。もっと中間のよさげな所を狙い撃てよ。F18ホーネットで屋台の射的のキャラメルの的を狙い打つような真似してんじゃねーよ。ちゃんと戦闘機狙えよ、戦闘機。費用対効果を考えろよ。凄まじいまでのoverkillだろ。スライムにミナディン唱えてどうすんだよ。そんなに力を誇示したいのか。何が狙いだ。何が狙いだ。

ワナ、だ。

まったく、困ったもんだ。DOTA allsatarsの無さに耐えかねてヒトフデをクローンしていた時だってそうだ。あいつの配下の旗本の眼鏡デブが迷惑なメールを寄越して来たのに慌てふためき撤収したのだ。コンクリートの鉄壁があればコンクリートの鉄壁ごしに警察呼べば済むのだろうが、こっちは外堀も内堀も二の丸も本丸も畳に立てた業物刀の一本も無い身分であるからして、白兵戦に持ち込まれマウントとられてボコボコだ。しかも3マウント。ほじくりだされた五臓六腑があちらこちらに散らばってんだ。おまけに、バラモスゾンビや能登七星城までもが緑色に染まってやがる。腐ったインターネットだ。どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。どいつもこいつも。

どう考えても。








僕は彼らの罠に見事に嵌り、心安らぐ平穏な日常生活というものを失っていた。
気がついたら、僕は3人とメッセをしていた。デスクトップ画像は、DOTA allstarsのロード画面からメール送付の画像に差し替えられていた。PCの電源を入れなおす毎に、MSNメッセとYahooメッセとSkypeが立ち上がった。

一人が僕にこう言った。
「わかる?貴方が好きなの。」

----
トリプルチーム(3)

posted at 2005/04/21 16:27 | 真性引き篭もりhankakueisuu |

トリプルチーム(3)[気がついたら自分がネトアになっていた。]

もう一度、1ページ目に戻るべきだと僕は思った。
少しずつ狂い始めているものを、元の鞘へと収めるべきだと判断した。

仮にこれがワナだとすれば、今まで通りにしていればよい。
飽きた人からフェードアウトして行くだろう。思惑通りに。
その日まで適当に暇つぶしの道具として利用していればいいのだ。

けれども、もし、これがワナではなかったとしたら。
彼らの言う荒唐無稽なプロフィールが全て本当の事だったとしたら。
だとしたら。




だとしたら、僕は。

僕は誰の人生にも干渉するつもりは無い。
僕が不幸にするのは極めて閉じた範囲の回避不能であった不運というものに見舞われた数人は当面仕方が無いとしても、それをより広い範囲へと被害を拡大させるつもりは無いのだ。そのように傲慢ではないし、冷酷無比でもない。
必要なのは身分相応をわきまえるという正しさだ。
ジェットコースターに乗るつもりは無いのだ。

追いかけてくる奴がいたなら逃げる。
好かれたならば嫌われる。


逃げる術を知らず、捕まってしまった僕に出来る事はただ1つ。
嫌われるように努力する事だけであった。


これまでも、努力を重ねてきた。
丸めた布団を相手に背筋と身振りの練習をし、手鏡を盗んできては笑窪の出来ない自然な笑顔の作り方を練習し続けた。鼻が高くなるようにと左手で引っ張り続けてみたり、想定される全ての会話を紙に書き出してそれの返事をノートに書いて、寝る前に3度づつ抑揚をつけて小声で復唱したり、枕の下に「大丈夫」と6Bの鉛筆で書いた紙を敷いて寝たりといった徒労を積み重ねて生きてきた。
人に好かれんとする努力というものを繰り返してきた。
そうしても尚、嫌われ続けた。

それは天賦の才だと思われる程に、好かれる事など一度も無かった。
その力は真性引き篭もりhankakueisuuというブロガーの手により全て奪われ、嫌われる人からは嫌われ、好かれる人からは好かれる凡人へと成り下がった。

僕は思い上がっていたのだ。
自分は天才だと。
自分は特別な存在だと。

けれどもそうではない事を悟った僕は、嫌われようと努力をした。



「返信の来るメールの書き方」
というものを検索して調べ、そこで例として出されていた悪いメールというものの書き方をそのままなぞって嫌われ返事がもらえなくなるような文章でメールを書いた。

けれども、どうしてか返信が来た。
しかも、喜ばれた。
「私の為に苦手なメールを無理して書いてくれているのが伝わってきて、感激しました」
狂ってる。
何脳だよ。
エロゲー脳かときメモ脳かアンジェリーク脳か。なんなんだ。




チャットにおいては、ウォークラフト3で最も嫌われた有名なプレイヤーの口調をそのまま真似した。JK_69という彼の特徴は、ゲームの開始から終了まで全て大文字の英文で相手を罵倒し続けるというプレイスタイルであり、彼のリプレイが挙げられる度、リプレイサイトのコメント欄は荒れに荒れていた。

それは非常に素晴らしい嫌われのモデルケースであり、僕はそれを真似した。

「黙れ!」
「失せろ!」
「お断りだ!」
3つを繰り返した。

というか、なんか今見直すと物凄く嫌われそうな発言だな。
まあ・・・そりゃあそうか・・・嫌われようとしていたのだから。


それでもどうしてか嫌われなかった。
絶え間なくメールが届き、絶え間なくメッセに誘われ、絶え間なく暴言を吐いて尚、彼らはそれを止めなかった。ゲームをする暇も無いくらいに。








ブログにパソコンが壊れそうだと書くと、
「壊れたら半角さんの文章が読めなくなるからお姉さんがパソコン買ってあげる」
と来た。とりあえずもう大丈夫だという事にして、うまくあしらい断った。
刺激しないようにと、壊れかけたパソコンの事を書くのを止めた。

しばらくして、彼女はパソコンの北北東を進んできた。
「部屋借りてあげるからこっちに来ない?」
間髪入れず、「お断りだ!」と返した。
なにか、悲しそうな文章がしばらく続いて「考えといてね」と時間を与えられた。


彼女の話はつまらなかった。
誰よりもつまらなかった。

ある時、切込隊長と自分を比較しだした。
彼女の主張は切込隊長なんて、実は大した事無いというものだった。
自分の学歴が如何に優れているかを延々と説いた後で、それと比べればあんなの大した事無いの、「半角さんにはわからないでしょうけれど」私の方がずっと凄いのよ、と締めた。
どうでもよかった。
まったくもって興味が無かった。


彼女は、10分ごとに時間を気にした。
「まだ大丈夫?」
「今大丈夫?」
「悪くない?」
「いいの?」
僕が何か物凄い忙しい人間であると思い込んでいる様子だった。
ブログタイトルくらい読めよと強く思ったが、適当に無視していた。

ある時から、真面目に日本語をタイピングするのもうざくなって、
「a」
と打つようになった。
キーボードの左端に位置するそのキーを左の指で叩き、エンターキーを押すだけで、僕の時間を気遣っていたその姿は消え、解き放たれたようにつまらない話をし続けた。


上司の無能さ、同僚の馬鹿さ、男の愚かさを延々喋り続けた。
「今の職場は私一人で持っているようなものよ」誇らしげに言った。
いい加減読むのもうざったくなり、クロウルの背後で放置した。
再びフォーカスを戻すと「半角さんみたいな人はどこにもいないの」とあった。




ある日、彼女は唐突に映画を見たと言ってきた。
「マイケルダグラスがかっこよかった」
って一体何が言いたいんだ。

あんたの読んでるブログの管理人は全然マイケルじゃないしダグラスでもないわけ。
真性引き篭もり。真性の引き篭もりなの。わかる?物凄く引き篭もってるの。
もう、わけがわからなかった。
自分の身に何が起こっているのか理解が出来なかった。




突然、彼女は永遠に続くかと思われた愚痴と罵倒と嘆きを止めた。
「10年以上前の事だけど、」
と、昔の恋愛の話を始めた。

どこを歩いただとか、何を見上げただとか、どこに泊まっただとか、そういう興味のまったく沸かない話が延々と続き、その時僕が何をしていただろうかと少し考え、憂鬱になった。その彼がいかに優れた人物であったかを、延々と褒め称え続けた。
高学歴で体躯が良くて二枚目で、頭もセンスも優れていて、尚且つ正直だったらしい。



「彼とは、別れてからもいい友達だった」
「半角さんが好きなの」
ちょっと待て。
あんたは誰と話をしているんだ?

僕は中卒で、背が低くて、梅雨に2晩打たれた照る照る坊主みたいな体で、救いようの無い馬鹿で醜く嘘つきで、尚且つ数年誰とも口を聞いたことが無いような真性引き篭もりだぞ。
統合性がまったく取れていなかった。



彼女は突然言った。
それはあまりにも脈絡が無く、長い同僚への愚痴の直後に、
「まだ大丈夫?」
と時間を気にした後の事だった。


「結婚しましょう」
メッセを切断し、終了した。

----
トリプルチーム(4)

posted at 2005/04/21 16:27 | 真性引き篭もりhankakueisuu |

トリプルチーム(4)[気がついたら自分がネトアになっていた。]

STFU。
STFU。
plspls。
これは一体なんなんだ。
好き放題ブログを書きたいだけなのに。

3人のうちの1人が、ある時ご丁寧にも好きな投稿ランキングというものを送りつけてきてくれた。その一覧を眺めて、こういうものを書いてはいけないのだなと僕は学習した。
というか、書けなくなった。

テキストエディタのアウトラインには、大量に投稿のあらすじとフレーズだけが溜まって行った。しばらく前ならば、喜び勇んで投稿していただろう内容の下書きが次から次へとbyteを埋めた。
けれども、それを書こうとすると、どうしてか指が進まなくなった。
クロウルをダウンロードして、ゴミ箱に捨てて、tfをダウンロードして、ゴミ箱に捨てて、IEを立ち上げて、IEを閉じて。違う投稿を書き上げて、書く事リストだけが溜まり続けた。


彼女らは口を揃えて言った。
「昔のログも全部読んだ」
いい迷惑だ。だからなんだ。
たかがブログを読んだくらいで何もかも知ったつもりか。
というか本当に読んだのだろうか。
真性で、引き篭もりで、狂気をはらんでいる。
まともな神経があったならばメールなんてしないだろうに。


「昔の方が好きだった。けれども今も好き。」
昔の方が、とういのは僕の方向転換が成功している事を示していた。
けれども、というのはそれが決定的な効果を発揮できていない事を示していた。



彼女らは明らかに僕を好いていた。
目的は、嫌われる事。
傷つける事ではなかった。
それは途方も無く困難な作業で、ただただ僕を消耗させた。







しばらく、日を置いた後、彼女は丁寧に切り出した。
自分がいかに生活力があるかを説明し、ネットゲームだけやっていればいいの。
いてくれるだけでいいの。だから一緒になろうよ、と。

そこから2つに分岐した。
1つめは、前にも聞いた部屋を借りてあげるからというもの。
2つめは、すぐに離婚しても半角さんはこれだけ得をする、というものだった。




「一日でいいの、一日で」
そう繰り返した。1日、1日と。

彼女は唐突に月10万円だと・・・と、1日の離婚で得た金で何年引き篭もれるかを数字に書き始めた。「10万円(笑)」と僕が笑うと、慌てて月20万円だと・・・と計算しだし、「一生は無理か」と寂しそうにつぶやいて、勢いを失った。



「働いてもっと稼ぐから」
彼女は話は致命的なまでにつまらないながらもそれなりに美人で、とても魅力のある人だった。にもかかわらず、彼女は金の話をし続けた。服も靴も送ってあげるといいだし、こちらに来ればゲームだって好きなだけ出来るし、サッカーだって見られると、その利を説いた。



「私は貴方を救えるの」
あまりにも短絡的だと思った。
白馬の王子様が来ないから、白馬の王子様になってやるって寸法なのはよく理解できたが、選ぶ相手を間違えているとしか思えなかった。

彼女は自分の稼いだ金が自分自身を幸せにはしていないという事は理解しているようだった。けれども、その自分自身すら救えない金というものが他の誰かを救えると頑なに信じている様子だった。確かに、救えるのかもしれない。他の誰かならば。









彼らとのメッセは非常に楽だった。
僕が何1つ喋らずにいても、町を流れる電光掲示板のようにピコンピコンと発言が続いた。気が向いたらそれを適当に読み漁るだけで、1分2分の暇は潰れたし、チャットなんかした事の無い僕にとっては適当に発言すればそれへのレスポンスが5秒足らずで返ってくるというのは結構新鮮で、面白かった。

うざくなったら、即落ちればよいだけだった。
「昨日は長い間ありがとうございました」
といった的外れなメールが届き、それまで通りの関係が続いた。
嫌われる事はなかった。傷つけたかどうかはわからないが。


彼らからのメッセが入った時、完璧に断れる台詞があった。
「今ブログ書いてる」
と言えば、丁寧な謝罪が寄越されて、僕がブログを書き終えるまで彼らは待っていた。
いや、実際にブログを書いていた事など一度として無かったのだが。
1時間でも2時間でもした後で、適当にこちらから発言すれば、「もう大丈夫?」と気遣われ、何事も無かったかのようにメッセが始まった。
何が大丈夫なのか理解が出来なかった。















彼女が4通目か5通目のメールで「アメリカ在住です」と突然に奇想天外な妄想を繰り広げた時からしばらくして、僕は彼女ともメッセをするようになった。


「半角さんって頭いいよね」
同意を求めるような文章から始まった。

「私なんか馬鹿だから」
確かに馬鹿だなと思った。



彼女はいかに自分が馬鹿なのに比較して、真性引き篭もりhankakueisuuというものが知的で優れているかを褒め称え始めた。

「貴方の全てが知りたいの」
間髪入れず「お断りだ!」と返した。
彼女はハハハと笑っていた。



「私は本とか読んだ事が無くて・・・」
と始まり、偉い、凄い、賢いと続いた。一体誰がだ。
それは一体誰に向かって言っているのだ。
どこか他のブログを読んでいるとしか思えない発言が続いた。

頭を抱えた。
どうすれば嫌われるのか考え悩んでみたものの、答えは出なかった。



ある時、どういうきっかけか、とある作家の名前が出た。
その作家は、昔好きだった映画の原作者だった。

僕がその映画で好きだった点は、屈強な男どもがドス黒い血を流しながら無慈悲な叫びを上げつつ倒れていくシーンである。そのシーンをビデオで何度も見ては「皆殺しにしてやる……皆殺しにしてやる……」とぶつぶつ呟く健全な少年時代を過ごしていた。
その映画のそのシーンは僕の頼りすがる希望の具現化した姿であった。

僕は少し興味が出て、彼女に問いかけた。
「邦訳で読むの?それとも、原文で読むの?」

間髪入れずに彼女は答えた。
「両方よ!」

物凄い自信だった。
「当たり前じゃない!好きな人のは全部読みたいでしょう?」
何が当たり前なのかまったく理解が出来なかった。
ゲームに対する1日20分の制限が取り払われてからというもの、僕は読書というものが出来なくなった。5分も読めば目がかしばみ、心と体がゲームを渇望した。
彼女が当たり前だと言った世界は、RingOfRegenerationをリングオブレギュレーションと読む程度の力しかない僕には存在していないようなものだった。

「本なんか読んだ事なくて」
という作り上げられたディテールはあっという間に崩れ落ち、何か途方も無い知性がそこにいた。僕は彼女が恐ろしくなり、どこかに隠れようとしたものの隠れる場所などどこにもなく、メールとメッセが逃げ場無く届き続けた。




誰かと同じように切り出した。
「一緒に住もう。」
おいおい。
いい冗談だ。
そこはアメリカだって設定だろ。

「月2万5000円、ルームメイト。」
どうしてか、ドルではなくて円だった。

金を出すという人と金を出せという人。
どちらも狂っていると思った。




「この国では男も女も老いも若きも強くなるの」
私は強い、と自分を評した後に彼女は続けた。

彼女の言う強さとは一体何なのだろうかと思った。
真性引き篭もり相手にメールをし続けるというのは弱さの象徴のように思えた。なのに彼女は強いと言った。何がだ。強さとは自分を偽る傲慢さなのか。
それならば僕もそれなりに強い
いや、そんな国は御免だ。


「私は貴方を癒す事が出来る。」
ブログの更新は心労でしょう。
と、ブログを更新する事の辛さに理解を示した後でそう言った。
一番心労なのは、ブログでは無くて他の何かだった。
だんまりを決め込んだ。


「私だけはずっと貴方の味方だ。」
ブログが荒れに荒れている時、彼女はそう言って寄越した。
丁度同じ頃、似たようなメールが他に2通あった。
僕を癒してくれるものは敵のみだと知った。


「世界は本当に素晴らしいの」
突然、引き篭もりを非難した。
なんだってあるの、なんだって。
それをまるで万能薬のように褒め称えた。
そんなに外の世界というものが素晴らしいのなら、それに救いを求めろよと思った。
真性引き篭もりにメールするよりまず先に。










何が狙いだ。
どうすればいいのだ。
どのような対応をしても、メールやメッセが止む事は無かった。

「今日は半角さんと話をするために残業せずに帰ってきたの」
うーん、、。
これは一体なんなんだ。

「今日は半角さんと話をするために30分早く起きたの。よかった、いてくれて。」
さっぱりだ。
さっぱりわからない。


何が言いたいんだ。
何がしたいんだ。
どうしたいだ。

3人のオンライン時間はずれており、望めば絶え間なくチャットをし続ける事が可能だった。しかもそのうち1人は一方的とはいえエロチャットだった。
高麗和男を罵る裏でエロチャットをする真性引き篭もり。
自分の正義が大きく揺らいだ。
倫理的危機だった。





ある時、3人同時にメッセをするハメに陥った。
物凄くうざったかったので、コピーアンドペーストで切り抜けた。

左の発言を真ん中に、真ん中の発言を右に、右の発言を左に。
そういう事を数時間繰り返した。
彼女らは嬉しそうに喋り続け、その中でタイピング速度の速さを褒めた。
「半角さんって凄い」


やがて「長い間相手をしてくれて本当にありがとう」と口々に言い、静寂が戻った。
なにかいけない事をしてしまったかのような罪悪感に捕らわれた。
何も悪い事なんてしていないのに。








「よろしくやりましょう!」
で始まった彼女との電信はまったくもって奇妙なものだった。
彼女からのメールには必ず画像ファイルが添えられていた。
真性引き篭もりをバイオのノートで閲覧中の画像もあった。
よく出来たコラージュだな、とネカマの技術力に感心した。


彼女の言い分は少し違った。
「これは愛なの」
これ、ってのが何なのかは解らなかった。
とにかく、彼女は愛だと称した。


全てが奇妙だった。
「歯を磨いてくる!」
と言っては、磨いてあげるとしつこく付き纏った。
どうあしらえばその付き纏いが終了するのか理解できず、色々苦難してみたものの、1つわかった事は、彼女が飽きるまでその付き纏いが続くという事だった。かと言って無視を決め込むと、無視するな無視するなと延々文句が流れ続けた。音声で。
挙句の果てに嘘泣きを経て嬌声。
うざいので切断すると、すぐに幼稚な嫌がらせのメールか、大人びた謝罪のメールが届いていた。どちらにしろ、少しほぐれた画像が送付されていた。


「風呂に入ってくる!」
と言っては、一緒に入ろうと言い出した。
どうあしらえば終わるのか想像も出来なかった。
新しい形の苦痛であった。



冗談じゃなくて、と前置きして彼女は言った。
「本当にこれは愛なの」
本当に迷惑だった。


彼女は突然真面目に自分の男性遍歴を書き始めた。
「私、男運が悪くて」と、これまで付き合った人間がどれ程までに極悪非道の所業を成したかを、彼女には似つかわしくない文章で長い時間をかけて淡々と書き続けた。
僕は「a」すら挟む事が出来ずにそれをただ只管読んだ。

やがて、あらかたを語り終えた彼女は唐突に言った。
「真性引き篭もりさんはそういう人じゃないから」
それは男運が悪いのではなく、男を見る目が無いのではという疑問が芽生えた。
けれども、言わずに飲み込んだ。
飲み込むしかなかった。



彼女のメールは奇妙だった。
メッセとはまったく違う折り目正しい段落づいた文章と、それに似つかわしくない画像ファイルが添えられていた。冷静に考えれば、2人一組で僕をハメようとしている罠だとしか思えないくらいにメールとメッセの文章の間には、越えられない位の差異があった。その埋められないかに思えた差異は、yahooメッセのビデオチャットによって埋められた。彼女は1人だった。丁度、真性引き篭もりhankakueisuuと僕が1人であるように。



ある時僕にどんな音楽を聴くのか?と聞いてきた。
あまりにもしつこいので、あまり好きではない古い歌手の名前を出した。

彼女のリアクションはドン引きだった。
明らかにテンションが落ちており、嫌われる兆候だった。
趣味悪いね、と言いたげだった。


2日ほどして、彼女からメールが届いた。
そこには、その歌手のアルバムを買った事、そしてその歌詞が寂しさと喜びと愛に満ち溢れたものである事、半角さんも寂しいのね、と書いた後で、私も寂しいと続き、愛していますと終わっていた。

僕もそのアルバムを持っていた。
一番出来の悪いアルバムだった。

僕が持っているその歌手のアルバムは全て英語版で、歌詞の意味なんてまったくわからなかった。唯一好きな点は、かき鳴らされる弦楽器の不協和音のみであり、歌詞なんてまったく知らなかった。彼女は特徴的な弦楽器に触れる事はなく、歌詞ばかりを褒めた。

英語を聴き取れるのか?それとも、邦訳を読んだだけか?
と問いただしたかったのだけれど、おそろしくてやめた。
もし、「英語を聞き取った」という回答が返ってきたら、立ち直れないくらいのダメージを被るような気がしたからだ。

とりあえず僕はその歌手のオフィシャルサイトに行き、邦訳の歌詞を少し読んだ。少しも心が動かされない平凡な詩がそこにはあった。
何から何まで、ずれていた。





「聞いて?」
と念を押し始まった文章はもっと理解できなかった。

「私、半角さんと出会ってからセックスしてないの」
いや、待て、待つんだ。
そもそも、出会っていない。
お前は何が言いたいのだ。

「これって、凄い事なのよ?わかってる?」
解らなかった。
そもそも異性に触れた記憶すらない。
セックスって何?食べれるの?ってレベル。
それ以前にオナニーって何?ってくらいに体力が無い。

というか、誰と喋っているんだ?
誰とメールしているんだ?
誰とメッセしているんだ?
誰にエロチャットを仕掛けているんだ?
真性引き篭もり、わかる?
真性引き篭もり。
つまり、物凄く引き篭もっているわけ。

「半角さんはいい人」って、ブログ読んでる?
何をやっているか本当に見てる?
どこがいい人なの?
どこが?
ねえ。
マジで。
誰と喋ってんの?
誰に脳内片思いしてんの?





「交通費は出すから」
同棲、同棲、と繰り返した。
それがいかにばら色の日々であるかを説明しだした。
聞けば聞くほど地獄としか思えないような解説が続いた後「今すぐ!」と続いた。

「今すぐ来て!もう我慢できない」
我慢しろ。


「私は貴方を幸せに出来る」
との主張が繰り返し成された。
幸せの意味を履き違えていると僕は思った。
何から何までずれていた。重なる部分はまったく無かった。


自分が性欲の対象として見られているという事に気がついた。
それは、恐怖だった。

夜道で足音やカブのエンジン音が後ろから迫る恐怖というものに不必要に怯える女性がいるように、真性引き篭もりhankakueisuuを褒める言葉の全てが恐怖に見えた。
執拗に当ブログを読み続けている場違いな大人の男達がもし飢えた女性だったとしたら、彼らも同じように襲い掛かってくるのかといった奇妙な妄想に取り付かれ、少し萌えて少し悶えてかなり恐ろしくなり、想像してその気持ち悪さに吐きそうになった。

----
トリプルチーム(5)

posted at 2005/04/21 16:26 | 真性引き篭もりhankakueisuu |

トリプルチーム(5)[気がついたら自分がネトアになっていた。]

何もかもが狂っていた。
2月の14日にはメールが3通届き、1枚はケーキ、1枚はチョコレート、1枚は半裸だった。写真、写真、写真、メール、メール、メッセ、メッセ、声、声、声。

「声を聞かせて!マイクくらいあるでしょう!」
あるわけ無いだろ。
真性引き篭もりだぞ。

「なら買ってあげる!」
STFU。





何故真性引き篭もりなのだ。理解が出来ない。それだけの職、それだけの学歴、それだけの世界、それだけの責務、それだけの容姿というものを手に入れる所まで努力しておきながら、どうしてそこで真性引き篭もりを狙うんだよ。志が低すぎるだろ。
真面目に生きろよ。一度きりの人生だろ。
自分自身の努力に報いる相手というものを探せよ。


何故真性引き篭もりなのだ。理解が出来ない。よろしくやりたいなら、mixiだとかアバターだとかリネージュだとかFFXだとかそういうところへ駆け込めよ。対話機能搭載の穴付きおっぱいとしか見ていないようなのが大勢いるから。
山のようにいるから。
うようよいるから。
対話機能搭載の穴付きおっぱいキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!ってこれでもかってくらいに寄ってくるから。やりたい放題ちやほやされるから。


何故真性引き篭もりなのだ。理解が出来ない。
まったくもって理解が出来ない。
狂ってる。
馬鹿だ。
誠実さの欠如だ。
人生の浪費だ。
腹立たしい。
真面目に生きろよ。
ふざけるな。
幸せにしてあげるって僕はあれか、フェレットか。それともハムスターか。たまごっちか。ピカチューか。ポケットモンスターか。いろんな意味でポケットモンスターか。
お前らはお前らで勝手に幸せになれよ。
他人を巻き込むなよ、他人を。
なんで立派な大人が揃いも揃って中卒無職の真性引き篭もりを必死で口説いてんだよ。頭おかしいだろ。もっとまともなのいくらでも釣れるだろ。行くとこ行けよ。ちゃんとしろよ。幸せは掴み取るもんだろ。いや、掴み取ろうとしているのかもしれないがそれ方法論として間違ってるだろ。もっとちゃんとしろよ。











私の事どう思ってる?
「うざい!」
うざい?
うざいんだ(笑)


「失せろ!」
やだ!
「失せろ!」
やだ!
「消え失せろ!」
やだやだやだやだやだ!!

なんだこれ、一体。
まったくもって、馬鹿げていた。



ねえ!
「?」
なんでもない。

馬鹿げていた。
人にShift+/を押させるだけの労力を要求しておきながら、一体全体何様だ。



一人は4月に来いと言い、一人は5月に、一人は8月に会おうと言った。
それが無理なら12月に、ってどれだけロングスパンなんだ。
「怖がらなくていいから」怖かった。途方もなく怖かった。
それ自体ではなく、その想いが怖かった。








疲れた。
何かに疲れた。
そりゃあ、まあ、疲れるか。
壁紙にして毎日読んでメッセに追われて声聞いて動画見て擦り切れた。





嫌われようと努力してもまったく嫌われないというのは、
好かれようと努力してもまったく好かれなかったこれまでよりも辛かった。


そもそも、本当に嫌われたいのかどうかも疑わしくなっていた。
よろしくやりたいリストのブログは消し飛んで、表彰台には彼らがいた。気がついたら、一番馬鹿で一番愚かで一番強欲な一番平気で嘘をつく女に惹かれていた。何故ならば、僕自身が馬鹿で愚かで強欲で、平気で嘘をつく人間だからである。

僕と彼女に1つの差異があるとすれば、彼女は自分自身の欲望に忠実であったのに対し、僕は正しさに忠実であった。そう、僕を救ってくれるのは正しさのみだ。


世界は格子に仕切られている。
その秩序こそが正しさだ。
人はそれ相応の人生を送るべきである。
まともな大人の社会の人が、真性引き篭もりと夜な夜な話し込むなどは、言語道断馬鹿げてる。








全部やめにしようと思った。
どうすれば終わるのかを考えた。
名案が浮かんで、その通りにした。






「もし連絡してきたら真性引き篭もりを即閉鎖する」
と真性引き篭もりhankakueisuuを人質に取って断絶を告げた。

それだけじゃあ、あまりにも酷いかなと思ったので、1人には頭痛の種類を適当に、彼女が心配しなくて済むようにと実情よりはかなり軽くして書き記した。
1人には好きな本を10冊、検索エンジンでロシア+文豪で検索して出た結果をそのままコピーして、それじゃああまりにも悪いかと最後に1冊英語の絵本を入れて告げた。
1人には好きな食べ物を適当にでっちあげ、きびだんご、胡麻豆腐、刺身こんにゃく、酢昆布、といった絶対に調理不可能なラインナップのあとに、彼女が話の中で今日作って物凄くおいしかったと言った料理を入れて告げた。



「真性引き篭もりを即閉鎖する。」
その効果は絶大だった。
ものの見事に3人皆して足並みそろえて連絡が途絶えた。
綺麗さっぱりと途絶えた。
清々しい気持ちに包まれ、霧散しそうになった。


彼女らが求めていたのは真性引き篭もりというブログでありhankakueisuuというブロガーの独占的所有権なのだ。最初から解っていた事なのだけれど。
もっとはやくに気がつくべきだったのだ。いや、気がついていたのだけれど。




画像を全部削除し、メッセのログを削除し、メールを削除し、綺麗さっぱり身軽になった。受け入れがたい現実だけが残った。


「真性引き篭もりなんか閉鎖してもいいからよろしくやりましょう!」
みたいな展開があるものだと期待し、それに縋っていた僕自身の愚かさと馬鹿さとまぬけさと、唯一たった一つといってもよい弱さというものが憎かった。

3人来たら誰を選べばいいんだろう、といったエロゲーのファーストプレイにおける迷いのような展開は無かった。
荒唐無稽な話の末の、エンディングだけは等身大だった。



馬鹿げたメールで幕を開けた馬鹿げた騒動は、至極真っ当な結末へと辿り着いた。
何も無くしていないのに、喪失感だけが残った。
望んでいた平穏を得たのに、安らぎを手に入れたのに。




一体、なんだったのだろう。
10万アクセスしているサイトを見ると「1人」。
20万アクセスしているサイトを見ると「2人」。
100万アクセスシテイルサイトを見ると「10人」。
そういう偏見の眼差しだけが身についた。



他に得たものは何も無かった。
ゴミ箱復元ツールをダウンロードしてきて、画像や音声ログを蘇らせられないだろうかと色々触ってみたのだけれど、0byteのファイルしか出てこなかった。
デスクトップ画像は元のDOTA allsatarsの読み込み画面に戻った。
DOTA allsatarsのロード画面なんて、もう一生見ないだろうに。





もしも僕がこれまでの人生において一秒たりとも努力を怠らずに生きてきていたならば、真性引き篭もりhankakueisuuなどというブロガーが生まれる事などなく、それ即ちブリリアントな階層の行き送れた人間に付きまとわれる事もなかったという事なのだろう。

もしも弛まぬ気力の果てに、人並みの人生というものを手に入れていたならば、偏差値47の地方の寂れた小さな大学でかすみちゃんブルーに並ぶような青春で、今頃アフィりながらパチスロ攻略サイトを漁っていたのだろう。
寂しさをゲームで紛らわし、よろしくやりたいと思うだけの日々が待っていたのだろう。
彼女らとの接点など無いままに。



それと比べれば、この現実は遥かに幸せだ。
真性引き篭もりなどではないまともな人間とよろしくやっている3人の未来の姿を想像する事が許された今日というものは。幸せだ。間違いなく幸せだ。





いつだってこうだ。
常に僕を突き動かし、摩耗の末に疲弊させ、傷つけ追い立てたのは無償の愛だ。
いや、そうではなくて、無償の愛に見せかけた対価の要求だ。




寂しくなってtfsrcをタイピングして時間を埋めようとしたけれど、それすら2分と手につかず、ブログも書けずに時間が過ぎた。適当なゲームをやっている事にして、数日分の投稿を埋めた。元通りにならねば、元通りにならねばとそれだけを考え、ぐら乳頭と三浦あいかと松山まみを探し出し、なんとかしようとしたけれど微動だにしなかった。なにか大切な物を落としてしまったかのような錯覚を受けた。大丈夫、これは罠だ。巧妙に仕組まれた罠だ。


僕は今して尚、騙されて続けているのだ。
冷静に分析算段し、出た答えは巧妙に仕組まれた罠にハマった一人の馬鹿だ。
常識的に考えればそうだ。とってつけたようなヘルメットを被り大成功の看板を持った3流タレントが満面の笑みで現れる頃合だ。そういう時間だ。
もう、なにがなんだかわからないけれど、どうでもいいや。
陰謀論に時間を貸す奴は馬鹿だ。







少なくとも、僕は間違いなく正しかった。
優先されるべきは正しさなのだ。私利私欲は下の下だ。

もし3人でなくて、1人だったら、とか、もし東京アメリカ東京でなくて、もっと近くだったら、とかそういう問題ではない。僕の正しさが、正しかったという事だけが正しいのだ。

真性引き篭もりhankakueisuuの正しさと、真性引き篭もりhankakueisuuの誤りと、真性引き篭もりhankakueisuuの愚かさだけが僕を癒し、救ってくれるのだ。





ブログを始めてすぐに訪れた冬をまんま覆った三叉の横恋慕は終わりを告げ、賑やかな荒らぶる春が来た。DOTA allsatarsも、他の何もかも、今はもう無い。

残ったのはブログだけ。
だから僕は真性引き篭もりhankakueisuuを続ける。
書ける限りにブログを書き続ける。
それが好いて信じた人を人質に取るという卑劣なやり方で断絶を告げられた彼女らに対して僕が出来る、たった一つの償いでもあるからだ。

残ったものは、真性引き篭もりhankakueisuu一人。

posted at 2005/04/21 15:09 | 真性引き篭もりhankakueisuu |
最新記事
特定の日が何曜日なのかを七分の一の確率でピタリと当てる7つの方法。
後悔ばかりしている。
成長するということ。
一日一千のエントリーは読めるけれど、一日一千のブログは読めない。
没案
season13雑記。
なあなあ、なんでみんな本文読まんと言いたいことだけ言っていくん。
近頃ちょっと思ったこと。
てきとうってコメンテーターがうざいのでいい加減死ね。
生の斑鳩、死の斑鳩。
幸せいっぱいのブログを読むと幸せいっぱいな気分になるからみんなもっと幸せいっぱいなブログを書いてください。
暑い。
雑記。
働くって、辛いね。
泣いても泣いても涙が止まらなかった夜、僕は何を考えていたのだろう。
"∴"でgoogleしても結果が出ない。
Followingが全員男な奴はリア充。
アウトライン無惨
840万が美しすぎて思い浮かべる度にうっとりする。
ブログを書ける人が羨ましい。
最近のゲームは3D。
光明
あんたは「努力しろ」「努力しろ」って口を酸っぱくして言うけどさ、あんたの言う努力ってのは「真似をしろ」ってことじゃねえか。
無題
あー、やっぱりゲームがしたくなる。
「姜尚中マジギレでメガドラを破壊!!
ゲームだ、ゲームだ、御託はいいからゲームをよこせ。
のぞんでもよいもの。
雑記
鮫とマンボウのサバイバル
頭の中の文章を読めない人と、読める人。
ブログの移転先はどこがいいのか。
私信・id:naoyaへ
信者はGoogleに乗って。
けっして書かれる事の無いものの強さ。
ブックマーク出来ない。
死なないゲームと死ぬゲーム。
身内読者を苦痛に感じるブロガーと、よそ者読者を苦痛に感じるブロガー。
自分の名前ではてなダイアリーキーワードを作成し、自作自演で明らかに不自然な自画自賛を書きまくっている奴を見つけた。
さくらさく
コメントの削除を行いました。
個人ニュースサイトで取り上げられても全然嬉しくない。
海開き
陰謀論。
実名でブログを書かれると困る。僕が困る。
投稿ボタンを押したら文章飛んだ。
嫌いな人が嫌いな人を褒め称えているのを目にすると、とても幸せな気分になってしまうのは、なぜなんだろう。
ゴールまで一歩の距離で。
ずるいでござる。
方針転換のお知らせ。
戻るで飛んでしまった文章を再び書くのは、どうしてあんなにも困難なのだろう。
コメントに対して全返レスを行う事にしたその日に酷い目にあった。
戻るで文章飛んだ。
不安、不安、高揚感。
2月はものみなあらたに。
愛故に。
おやすみなさい。
はてなブックマークのコメントがあまりにもずれすぎているのでそれに対するコメント。
眠るのが怖い。
ああ胸くそ悪いなあ。
wc3lを見る為のまとめ。
ブログが書けなくなった。
金輪際スポーツを見るのを辞める事にした。
世界中をはしゃがせた男をはしゃがせた男こそが、男の中の男である。
前を向いて歩こう。
www.youtube.comにアクセスするとjp.youtube.comに飛ばされてしまう。
うまくいっているときに何が出来るかではなくて、うまくいかないときに何が出来るか。
ゲームが無ければ一昨日死んでいた。ブログが無ければ昨日狂っていた。
人生を楽しみたい人はiknowよりESL見ようぜ。
夢が希望に成り果てる時。
雑記
タイピング雑記。
【嫌絡み】と、【粋絡み】。
決意をしない人が強い。
真性引き篭もり全文配信rss
EAizm,
貧しさに負けてしまわないために。
ブログを書きたくない。とても。