医師不足にどう対応していくか、中長期的な方向性を探る舛添厚労相の私的諮問機関「安心と希望の医療確保ビジョン」の報告書が18日、まとまった。最大の焦点だった医師不足については、医学部の定員削減をうたった1997年の閣議決定を覆し、「医師養成数を増加させる」と明言した。
報告書は、医師不足などに端を発する医療崩壊の現状を深刻にとらえた内容。経済財政諮問会議の「骨太の方針08」が17日に社会保障費への歳出を確保するとしたことと併せて、「医師数や医療費は増やすんだ、という国の姿勢が固まった」(舛添大臣)といえそうだ。 ただ、財源には道路特定財源の一般財源化分をあてにしていると見られており、実現可能性は不透明。今後の予算の分捕り合戦で、関係者がどこまでやれるかにかかっている。 医学部定員増について、会見で今後の見通しを話す舛添厚労相=18日18時、東京・霞ヶ関の厚生労働省(撮影:軸丸靖子) 特に医師不足については、現状では単に医師の絶対数を増やすだけでは解決せず、医療従事者、患者・家族・国民で医療を支えていく姿勢が必要、としている。 ただ、医師養成数の具体的な期限や人数については明言されず、会議後の記者会見で、「大学の教員数や予算の諸条件を考え、他省庁との調整の上で数字を出す」とされた。 医学部の定員は現在年に約8000人。1997年の財政構造改革の議論では、医師数は将来的に余るとされ、大学医学部の整理・統合、医学部の定員減に取り組むことが決定されていた。ただ現実には、医療技術が高度化するほど、従事者の数は必要になる。これが現在の医師不足問題の一因になっていた。 具体的な提言内容は以下の通り。 (1)医師養成数の増加や臨床研修制度の見直し、女性医師の離職防止・復職支援といった医師養成策の促進。同時に、高度なスキルを持つ看護職の育成や院内助産所の普及、医療秘書の推進など、チーム医療を充実させる。過剰とされる歯科医は適正需給を検討。麻酔科医の標榜資格は規制を緩和。「入院患者16人に対し医師1人」などと定められている必要医師数の算定方式も見直す (2)地域全体で救急患者のトリアージ(重症度・緊急度による区分)を行うなど、救急医療の効率化と充実をはかる。医師の疲弊を防ぐため、救急の交替制勤務、夜間・救急医療の適正化の推進。1つの医療機関がすべてのニーズに対応する「医療機関完結型」から地域の医療機関が連携して対応する「地域完結型」への転換。介護との連携など地域医療の充実を進める (3)医師と患者・家族の相互理解を深め、コミュニケーションの改善を進める。医療は公共財で有限であるとの認識を広め、不必要なコンビニ受診を控える、妊婦検診を適切に受診するなどの啓発を行う。併せて「患者塾」、「病院探検隊」、学校教育を通じて、病院や医療の役割について社会的な理解を広める
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