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演劇:新派120年記念 六月新派公演(新橋演舞場) 所作が流れるように美しい波乃

 新派誕生120年を記念しての2本立て。実力がよく発揮された舞台となった。

 昼がドイツ語学者の早瀬主税と元芸者のお蔦(つた)の悲恋を描いた「婦系図(おんなけいず)」(泉鏡花作、大場正昭演出、齋藤(さいとう)雅文補綴(ほてつ))。

 お蔦の波乃久里子の所作が、流れるように美しく、場面ごとに心情に応じた変化を見せる。「湯島境内」では無邪気に喜ぶお蔦に仁左衛門の主税が別れを切り出すのがつらくなる様子がよく表れた。仁左衛門はすっきりとした中に情味があり、名セリフの数々が無理なく胸にしみこむ。

 「めの惣」では波乃、紅貴代の妙子、水谷八重子の小芳がいい取り合わせ。八重子が母の気持ちを出し、紅が娘らしいかれんさだ。安井昌二の酒井が剛直な師匠ぶり。一條久枝、柳田豊の夫婦が良く、田口守、只野操、永久保一男、鈴木章生らが脇を固める。

 夜が「鹿鳴館」(三島由紀夫作、戌井市郎演出)。朝子(水谷)が夫の影山伯爵(市川團十郎(だんじゅうろう))を欺き、その政敵であるかつての恋人の清原(西郷輝彦)と息子の久雄(井上恭太)を助けようとする。

 舞踏会でクライマックスに至る作劇が見事だ。相手と場所に応じての水谷の変わりようが見どころ。朝子の影のごとき草乃を、波乃が抑制のきいた演技で見せた。團十郎の押し出しが立派で、西郷に鋭さがある。安井の飛田が不気味で、英太郎の大徳寺侯爵夫人に格調がある。井上と瀬戸摩純の恋人が初々しい。29日まで。【小玉祥子】

毎日新聞 2008年6月18日 東京夕刊

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