白樺(中国名=春暁)ガス田の採掘施設=5月、朝日新聞社機から、恒成利幸撮影
日中両政府は18日、懸案となっていた東シナ海のガス田の共同開発で合意した。高村外相と甘利経産相が同日夕、外務省で記者会見して発表した。中国側が先行開発している白樺(しらかば)(中国名・春暁)ガス田に日本法人が出資し、日本側が主張する「日中中間線」をまたぐ北部の海域で新たに共同開発に着手する。
5年前に中国が白樺の開発を始めて以来、世論も巻き込んで両国が対立してきたガス田問題は一応の決着を見た。最大の対立点だった白樺では、日本側が権益の一部を確保することになる。
福田首相は記者団に「東シナ海を平和、友好の海にしていこうという趣旨にのっとって、相互協力してガス開発を進めていきたい」と合意を歓迎。中国の国営新華社通信は18日、「中国と日本が対等の立場による協議を通じ、東シナ海問題で原則的な共通認識に達した」と伝えた。
合意は、(1)白樺を開発する中国企業に日本法人が出資する(2)翌檜(あすなろ)(同・龍井)ガス田の南側の日中中間線をまたぐ海域に共同開発区域を設け、合意した地点で共同開発を行う。東シナ海の排他的経済水域(EEZ)の境界問題は棚上げする。白樺への日本側の出資比率や権益の配分などについては今後詰める。
両国の外交当局は今回の合意を受けて、正式な条約の締結に向けた交渉を始める。双方の世論などが反発する事態もあり得るため、両国が条約を批准して共同開発が実際に動き出すまでにはなお曲折も予想される。翌檜のほか、中間線付近にある「楠(くすのき)」(同・断橋)、「樫(かし)」(同・天外天)の各ガス田の取り扱いは継続協議となった。
EEZの日中境界線を巡っては、両国の海岸線から等距離をとった「中間線」を主張する日本側と大陸棚の末端(沖縄トラフ)を主張する中国が対立している。今回発表された合意文書は「境界が確定されていない東シナ海を平和・協力・友好の海とするため、境界画定が実現するまでの過渡的期間に双方の法的立場を損なうことなく協力することで一致し、その第一歩を踏み出した」としている。
日中外交当局は04年から東シナ海ガス田をめぐる協議を開始。11回にわたる局長級協議では事態は行き詰まっていたが、5月の胡錦濤国家主席来日による首脳会談時にはほぼ原則合意に達した。協議筋によると、中国側は軍や国民感情を刺激しかねないとの理由で首脳会談時の発表を嫌い、双方の協議の結果、発表を先送りしていた。(塚本和人)