最近、中国経済終末論的な本や雑誌の記事が特に目立つ。水・大気・食品の汚染、所得格差の拡大、党・行政組織幹部の汚職や株式市場バブルなど、ネガティブな情報が氾濫(はんらん)している。だが、党と行政が一体化した中国の経済運営には機動力と一貫性があり、民主主義国家の尺度では測れない、したたかさがある。
中国の党と行政組織は、中央政府から鎮(村)に至るまで金太郎飴(あめ)のように同じである。毎年、党(政府)中央の方針や政策が発表されると、党と行政の組織を通じて地方の党・行政組織に伝達され、各段階で徹底的な「学習」が行われる。中国は昔も今も官僚国家だが、これが党と一体化することで効率的・統一的な経済運営が可能になっている。
7千万人と言われる共産党員の多くは優秀で官公庁に所属し、経済の実態を体験しながら党との間でローテーションを繰り返して昇進する。従って、党幹部の感覚も現実から遊離することが少ない。
地方都市の実態はどうか。党の書記や市長は、地域経済が成長すると党や行政組織内での成績が上がり昇進しやすくなるので、実によく勉強し担当地域をまめに歩いて問題の解決にあたっている。間違いが起きると部下と連帯責任を問われるだけに目配りは真剣である。最近は世代交代が進み、バイタリティーにあふれた40歳代の人材が活躍している。これらの幹部は計画的に先進国へ勉強に出されており、民主主義国家の非効率もよく理解している。
このような中国の経済運営体制は、我々に無い利点を持っていると言え、日本が経験し、多くの開発途上国が直面しているのと同様の問題をはらみつつ、中国経済は成長を続ける。(皓)