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社会

強制連行の歴史刻む「神戸港平和の碑」除幕 7月 

 太平洋戦争中、中国や朝鮮半島から強制連行された人たちや捕虜として日本に連れて来られた連合国軍兵士が神戸港で荷役作業などをさせられ、過酷な労働下、事故や病気で大勢が亡くなった事実を刻む「神戸港平和の碑」が七月、神戸市内に建てられる。強制連行犠牲者らを追悼する記念碑の建立は近年、全国に広がっている。背景には当時を知る人が減ってきている今、歴史を形にして残そうとする関係者の思いがある。(坂本 勝)

 「朝四時から夜十二時まで毎日ふらふらになるまで働いた」「ろくに食事が与えられず、日本人の食べ残しで飢えをしのいだ」-。碑を建てる市民団体「神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会」は一九九九年の設立以来、強制連行を体験した生存者への聞き取りや中国、韓国での現地調査、文献調査を続けた。

 判明しただけで、神戸港周辺の企業などには、朝鮮人連行者五千三百五十二人▽中国人連行者九百九十六人▽連合国軍捕虜五百四十五人がいたという。調査結果をまとめ、「神戸港強制連行の記録-朝鮮人・中国人そして連合軍捕虜」(明石書店)と「アジア・太平洋戦争と神戸港」(みずのわ出版)を二〇〇四年に出版した。

もう一つの悲願

 神戸港での強制労働などを掘り起こして出版する一方、記念碑の建立ももう一つの悲願だった。

 同会は当初、神戸市有地の貸与を求め、市と交渉した。企業による労働者募集に始まり、官のあっせんや国民徴用令と、戦時中に官民が進めた強制連行について、行政の責任を求める狙いがあった。しかし、市の許可は得られなかった。

 民間の土地で場所を探し、神戸華僑総会の林同春名誉会長(82)の協力で、神戸中華総商会ビル(神戸市中央区)前の用地を借りることができた。港に面する用地には、神戸港に入港する外国艦船に非核証明書の提出を求める「非核神戸方式」を顕彰する記念碑「平和のみみ(美海)ちゃん」像が立っており、その隣に碑が設置される。

 朝鮮人のほか、中国人や連合国軍捕虜の犠牲者も合わせて追悼する碑は全国でも珍しく、調査する会代表の安井三吉神戸大名誉教授は「碑の建立後、追悼行事を毎年開く予定。設置協力者に感謝し、将来の運営について意見を出し合いたい」と話す。

広く知らせたい

 大阪市港区の天保山公園には、強制連行され、大阪で命を落とした中国人八十六人を追悼する「日中友好の碑」が〇五年に建てられた。

 建立した「大阪中国人強制連行受難者追悼実行委員会」は、追悼会を毎年開催。強制連行された生存者や遺族ら約二百五十人に手紙で報告している。感謝を記した返事もあるが、「強制連行された中国人は日本の侵略の犠牲者だ。碑文ではそのことが明確になっていない」と厳しく批判する文章もある。

 事務局の桜井秀一さん(59)は「日本の侵略でもたらされた強制連行という実態が(碑の用地を所有する)大阪市との交渉の中で十分に表記できなかった」と前置き。「碑を建てて終わりでなく、犠牲者が大勢いたことを広く知らせていくことが必要だ」と強調する。

 神戸の碑の設置場所確保に尽力した林名誉会長は「強制連行という悲しい出来事がかつてあり、二度とこのようなことをしてはいけないと警鐘を鳴らすことになる」と意義を強調。「道行く人が振り返り、歴史を思い返す契機になれば」と話している。

 調査する会は、設置費用など三百万円を目標に募金を呼び掛けている。送金先は、郵便振替口座「00920-0-150870 神戸港調査する会」。事務局の神戸学生青年センターTEL078・851・2760

 神戸港平和の碑 「神戸港における戦時下朝鮮人・中国人強制連行を調査する会」が神戸市中央区海岸通3、神戸中華総商会(KCC)ビル前に建てる。7月21日に除幕式を開き、中国人の強制連行犠牲者遺族2人を招く予定。

(6/13 09:22)

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