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【正論】初代内閣安全保障室長 佐々淳行

2008.6.11 02:55
このニュースのトピックス正論

 ■早急に内閣で「通り魔審議会」を

 ≪天地も許さざる悲劇≫

 8日の日曜日、東京・秋葉原の「歩行者天国」がわずか5分間で無差別大量殺人の「地獄」と化した。トラックで人々をひき倒し、サバイバル・ナイフで次々に刺すという天、地、共に許さざる惨劇である。今、秋葉原は世界のアキハバラである。2016年五輪の最終候補地の中で東京が最も治安のいい都市として世界的に認められたばかり、洞爺湖サミットも目前なのに、何たることか。

 京都、奈良よりアキハバラと、米国、中国からの観光客や、修学旅行でも賑わうという秋葉原を狙っての通り魔事件とは、かつて日本赤軍の岡本公三らが敢行したイスラエルのテルアビブ・ロッド空港乱射事件に次ぐ凶悪犯罪である。外国人被害者が出なかったことがせめてもの慰めだ。

 何の罪もないのに殺された7人の方々に心からの哀悼の意を表し、重軽傷を負われた10人の方々の一日も早い回復を祈るばかりだ。

 明らかにこの事件の容疑者、加藤智大(かとうともひろ)(25)は「模倣犯」だ。過去5年間に全国で起きた通り魔事件は30件に及ぶが、今年も、東京・品川の戸越銀座では包丁による5人の傷害事件があり、茨城県土浦市のJR荒川沖駅で指名手配殺人犯が8人を殺傷した事件は記憶に新しい。今回もこれら事件をネットで精査したうえでの犯行のようだ。

 ≪ネット上の反社会的言説≫

 今日、ネット上では「人を殺せば刑務所に入れると思った」とか「殺人は17歳までにやれば絶対死刑にならない」といった許し難い反社会的言説が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。

 刑罰が軽すぎるのである。刑法第39条の「心神喪失又は耗弱は、免刑又は減軽」という、加害者の人権を擁護するあまり被害者のそれを軽視する、誤れる「教育刑主義」に通り魔の再発を促す要因がある。今回も、恐らく数日を出ずして人権派・死刑廃止派の弁護士たちが、この容疑者は刑法39条該当者だとして無罪を申し立てることだろう。

 この際「人を殺せば死刑」という人類古来の自然法に則る「応報主義」でこの殺人に臨み、早く裁判にかけ、「模倣犯」の悪い連鎖を今度こそ断ち切らなくてはいけない。死刑廃止の機運は4月、東京・渋谷で夫を殺害、バラバラに遺棄した妻の戦慄(せんりつ)すべき所業にDV(配偶者間暴力)犠牲者の情状を認め、一部心神喪失として15年の刑とした東京地裁判決で助長されてはいるが、今回の犯人に酌量すべき情状は何一つない。

 再発防止策がいつものように論じられているが、「歩行者天国へのパトロール強化」「防犯カメラの設置」「ナイフの取締罰則強化」など、激しい怒りと被害者への感情移入が感じられない陳腐な彌縫(びほう)策ばかりで再発防止は困難という「敗北主義」を感じる。多年にわたり「応報主義」の極刑による抑止を主張してきた筆者は、この機会に法務省、検察庁、警察庁、さらには総理官邸、裁判官、刑法学者、マスコミを加えての「通り魔事件根絶のための審議会」を直ちに立ち上げ、「刑法第39条」の改正、あるいは少なくともその運用面における適用凍結の申し合わせを行い、「模倣犯」の出現を早期に抑止する刑事政策の転換を提言したい。警察だけでは無理だ。総合行政で内閣が取り組むべきである。

 ≪警察内部の規律乱れも≫

 今回、警視庁万世橋署地域安全課の荻野尚巡査部長(41)の防刃衣3カ所を切られながらの勇気ある現行犯逮捕の執行務には、速やかに論功行賞を行い、第一線警察官の士気を鼓舞することが肝要だ。彼が逮捕しなければ犠牲者はもっと増えただろう。まさに逮捕術の模範演技の如き見事な逮捕であった。

 だが…どうも筆者ら“警察戦国時代”のOBからみると、現職の警察官は弱腰で勇気が欠けているように思える。例えば、05年2月、フジテレビ本社前で棒を振りまわす暴漢から逃げる姿をテレビ放映され、時の小泉総理を激怒させた制服3人組がいた。07年5月には、愛知県長久手町で元妻を人質に拳銃を持って立てこもった暴力団員に撃たれた巡査部長を約5時間放置し、ついには有為のSAT隊員を殉職させてしまうという事案もあった。

 JR荒川沖駅事件では、茨城県警は170人の警戒体制で、駅にも8人の私服を張り込ませていたのに、指名手配殺人犯に8人の市民を殺傷させてしまった。6月3日、埼玉県川越市で起きた強盗犯人乗用車立てこもり事件も、解決まで8時間もかかった。

 どうも警察組織も、上層部がかかわると「慎重」「人権」の美名の下で不決断、不作為、保身が事件解決を長引かせている。今回、矢代隆義警視総監の陣頭指揮は評価されるが、上層部の「危機管理」の再教育も必要なようだ。(さっさ あつゆき)

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