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[2005年12月5日]                         最新のニュースへ
JA厚生連『最後の大事業』に群がる危ない面々

本体工事の入札めぐり飛交うウワサの数々
 白河総合厚生病院の移転に伴う新病院建設は、11月22日に入札参加企業の現地説明会が行われ、12月6日に入札が実施される。更に、同14日には地鎮祭が行われる予定で、いよいよ平成19年12月完成、同20年4月の開院を目指した工事が本格化した。
 今回の入札は、建物本体、電気、空調、衛生の各部門に5社ずつが参加し、分離発注方式で実施された。ただ、入札をめぐっては今夏以降、県内の建設業者やJA関係者の間から、
 「既に、前田(前田建設工業)と佐藤工業のJVで決まっている」
 「(中央会)内部で混乱が起きているようだ。佐藤工業とJVを組む大手ゼネコンの選定で混乱し、佐藤工業と地元企業数社のJVに変更になったと聞いた。佐藤工業は福島市のNHK社屋建設の時、JVを組んだ大手ゼネコンと利益配分でもめて、大手ゼネコンから総スカンを食っている。それで、厚生病院の建設でも佐藤工業とJVを組むゼネコンがいないため、中央会が困っているらしい」
 「安田さんは、仕事にありつくために訪れる業者とは『だれとでも会う』といって会っているようだが、それが誤解を招いている。先日も入札に入らなかった業者が文句を言いにきたが、『だれにでも良い顔していると誤解されますよ』といっているのだが・・・」
 など、多くの推測、批判が飛び交ってきた。
 また、入札を控えた11月8日には、仙台市内に支店を構える大手ゼネコン4社に1枚の文書がFAXされた。内容は、白河厚生病院の建設について「11月14日現地説明会、同21日入札で実施する」というものだった。
 ところが同日の夕方、今度は一転して「先に案内した入札は中止する」との内容のFAXが送られるという不可思議な出来事が起きている。この件について県厚生農業協組連合会の江花真一総務部次長は、
 「それは全く分からない話ですね」
 と述べた上で、
 「入札スケジュールは、理事会と経営管理委員会に諮り、既に了承を得ています。11月22日現地説明会、12月6日入札予定です」(11月21日時点)
 とコメントしていたが、中央会内部に詳しいある人物は、
 「それ(FAXの件)は事実だよ」
 と指摘。その上で、
 「要は、単純ミスだが大きな問題が起きた。FAXしている途中で気付いたので4社しか送っていないはずだ。混乱の要因は、前田(建設工業)と佐藤工業のJVで決まっていたのが、前田が『今回は受けられませんので指名から外して頂きたい』といってきたこと。それで、出ないお化け(前田建設工業)でゴチャゴチャしてしまったわけだよ」
 と、一連の経緯を暴露している。更に、入札についても元々は「中央大手ゼネコン5社」のAグループ、「福島県内大手企業5社」のBグループ、それに「地元・白河市内企業5社」のCグループに分け、A、B、Cの各グループから選んだ3社でJVを組む手はずだったという。
 ところが、前田建設工業の入札参加辞退によって再度、入札の枠組みを変更して経営管理委員会を開いた上、本体については「大手企業と白河の地元企業4社によるJV」、電気、空調、衛生各部門は分離発注にする、との枠組みを決定し、11月18日に入札案内を出し直したといわれる。
 本誌が事前に入手した情報によると、約70億円の本体工事は清水建設、大成建設、西松建設、竹中工務店、佐藤工業(福島市)の5社が入札に参加し、福島市の佐藤工業が落札すると見られる。その下に地元白河市の三金興業、福島県南土建工業、兼子組、それに棚倉町の藤田建設工業が付くといわれている。しかし、各社の取り分は佐藤工業が全体の70l、残り四社が30l(兼子組5l・福島県南土建工業5l・三金興業10l・藤田建設工業10l)で、
 「地元4社の儲けはほとんどないでしょう。佐藤工業の独り占めといったところですよ」(ある建設業者)
 といわれる。
 また、各部門も既に電気はユアテック、空調が三晃空調、衛生・設備が新菱冷熱工業で決定しているといわれる。
 いずれにしても、いままでの経緯を振り返ると、
 「何しろ、160億から200億に及ぶ大事業だから業者側も必死だよ。仕事にありつくため大手ゼネコンを筆頭に相当の札束が乱れ飛んだという話だ。安田さんには『既に億単位の金が入っているのではないか』とウワサする人もいるし、現に仕事を取るために1,000万円を直接手渡した、という人物も知っているよ。『悪いようにはしないから』というのが安田さんの口癖で、それでみんな仕事がもらえると思ってしまう」(別の建設業者)
 の指摘通り、業者による「安田詣で」が盛んに繰り返されてきたのは間違いない。

安田壽男JA福島五連会長


安田会長誕生の影で乱れ飛んだ札束
 そもそも「JA福島厚生連最後の大事業」といわれる今回の白河総合厚生病院の移転工事に絡む利権の奪い合いは、
 「いまから3年前の中央会会長選から始まっている」(あるJA関係者)
 という。安田会長は平成11年(1999年)のJA福島五連会長選で、下馬評では“安田有利”といわれていたが、最終的に現職で3選を目指していた石村義光氏に5対4で破れた。(本誌1999年7月号参照)
 その後、合併農協の組合長15人の意思表明によって実施された前回(2002年6月)の会長選では、石村氏が後継指名した井上賢一氏(当時のJA伊達みらい組合長)を8対7の1票差で破り、念願の会長に就任した経緯がある。この時の安田会長誕生の立役者が、それまで石村氏の側近だった永沼幸人氏(当時のJAあぶくま石川組合長)だった。ちなみに、永沼氏は安田会長誕生後、副会長に就任するが、永沼、安田両氏を引き合わせた立役者は故・古川悟郎元JAたむら組合長だったといわれる。
 当時の様子を永沼氏は、次のように振り返っている。
 「私は、ずっと石村さんを推してきたが、会長を辞めると決めた後は、故・井上伊達みらい組合長を会長にし、永沼を副会長することで調整していた。最後には、永沼が会長で井上さんが副会長でもいい、ということになった。ただ、これからの五連のことを考えると、故・古川悟郎たむら農協組合長の働きかけもあったが、安田さんを会長にすべきだということになった。それで、安田さんが『先にオレに会長をやらせてくれ』というので、先に会長に就いてもらったわけです。安田・永沼連合が強かったのは、永沼も会長を目指し、全県の組合長に選挙運動を展開して票固めをした上で、最後に安田さんに譲ったからだろうね。安田さんと組んで選挙をやったけど、安田さんのためにやったわけではなく、私の将来のためにやったから強かったわけです」
 だが、こうした表向きの話とは別に、安田会長誕生の影では過去のJA五連会長選の歴史を引き継ぐように金品、接待による票の奪い合いが繰り返されたのも事実だ。永沼氏と親しいというある情報提供者は、
 「安田会長を誕生させるため、中通りと浜通りの組合長に金品を配り接待した。ある企業から資金として提供された1,500万円をバラまいた」
 と暴露。その上で、会長選が実施される前年(2001年)の初秋、浜通り地区の組合長2人を、また、その1ヵ月後には郡山市・磐梯熱海温泉のある旅館に中通り地区の4人の組合長を招いて接待し「安田支持」の了承を得た、と詳細を述べている。
 更に、この磐梯熱海温泉の旅館・栄楽館では、安田会長はいなかったが永沼氏(当時のJAあぶくま石川組合長)と4人の組合長が同席する中、安田会長が誕生した時には、この情報提供者に資金提供した企業に白河厚生病院の建設工事を担当させるとの約束も交わしたとして、
 「安田さんは何もかも知っている。ところが、会長に就任した途端、態度が一変した。当時の様子を録音した証拠のテープも持っているが、会長に就任するため1,500万円も使っているのだから約束は守ってくれというのがオレの言い分だ」
 と本誌の取材にコメントしている。


永沼氏は安田会長にハメられた?
 ところが、永沼氏は2004年のJAあぶくま石川組合長選で高原喜国現組合長に敗れ、翌2005年6月のJA福島五連の総会で副会長を退任する。永沼氏は2002年当時、単協の組合長を兼任したままでは五連の役員になることが出来なかったため、JAあぶくま石川の組合長を辞め、JA福島中央会の副会長に就任した経緯がある。
 単協の組合長と五連役員の兼任禁止は、金融機関の混乱によって国から金融部門を持つ五連には県信連という金融部門があるため、兼職になるので好ましくないとの指導があったことによるものだ。だが現在は、ある農協関係者が、
 「信連、経済連、共済連、厚生連とも全国組織と統合しているので、いまは五連会長といっても前と全然違って、別法人である中央会の会長です。それぞれの組織の県本部の指導機関ということです」
 と語るように、県信連が農林中金に統合されて兼職禁止に抵触しない状態になったため、組合長が役員になっても良くなり、その中で、単協の組合長に就任しないと中央会の役員に就任出来ない、という流れが出来上がってきた。
 この点についてJA福島中央会の田中隆雄総務部長は、
 「副会長の選任は単協の組合長でなくても、推薦委員会の推薦があれば可能です。推薦委員会のメンバーは15人で、安田会長はメンバーに入っていませんが、主に合併農協の組合長によって構成されています。今年(平成17年)も年度当初から開催され、6月の総会まで人選が進められてきました」
 と述べるが、推薦委員会で推薦される役員の顔触れが単協の組合長に限られているのが実態だ。
 話は戻るが、当然、永沼氏はJAあぶくま石川組合長に選任された後、今年6月にスタートした2期目の安田体制でも引き続き副会長に就任するものと見られていた。だが、2004年5月に開かれたJAあぶくま石川の理事会で予想外の出来事が起きた。
 JAあぶくま石川の理事は、石川、浅川、古殿、玉川、平田各町村から22人の理事が選出されているが、そのうち半数以上の13人が永沼氏支持を表明していたことから、当初、組合長は選挙ではなく話し合いによって永沼氏が組合長に選任される手はずだった。組合長を選出する前日には、永沼氏宅に13人の理事が集い、1人ずつ永沼支持を表明し、
 「明日はよろしく頼む」
 と言って分かれたのだという。ところが翌日、話し合いでの組合長選任が突然、「無記名での選挙」に変更され、その結果、永沼氏は11対10の1票差で現在の高原組合長に敗れたのだった。
 永沼氏自身は、この時の経緯を次のように語っている。
 「組合長選の前日の夜に、自宅に理事22人のうち13人が集まった。過半数が集まったわけだが、それがひっくり返ってしまった。投票じゃなければ勝てたけど、それはすごかった。年長者が議長になったが、この人は選挙後亡くなったけど、自殺だといわれている。11対10の1票差で負けてしまった。五連の会長選は公選法(に抵触するもの)ではないのでそれなりの金が動くが、単協の組合長選であれだけの金が動くことはない。3万円とか5万円なら分かるが、ビニールハウスの入り口に100万円がぶら下がっていたという話を聞いた。札が束で飛んだというからね。どこから、何のためにその金が出てきたか分からない」
 なぜ、前夜まで「永沼支持」を表明していた理事が高原組合長の支持に回ったのか? 一部の理事は、自宅敷地内のビニールハウスの入り口に札束があったので驚いたことを認めているが、農協関係者の間では、
 「安田さんが永沼排除に動いた。その手助けをしたのがJA白河の小室だよ。高原さんは一度、引退した人物。本人も組合長になる気はなかったはず。結局、白河厚生病院の事業を独占的に推し進める上で、安田にとって永沼は目の上のタンコブだったということだよ。会長選で世話になったことの負い目もあって、とにかく(永沼氏が)目障りだった。それで金を打って落選させたというウワサだよ。それに、次(の会長)は永沼、というのは安田、永沼の間では暗黙の了解事項だった。安田さんはその約束も反故にしたわけだよ」
 という指摘が聞かれている。ちなみに、一連の真相について本誌は小室信一JA白河組合長に取材を申し込んだが、
 「厚生連のことなのでコメントは控えたい」
 との返答に止まっている。


白河厚生病院は本当に地域住民に貢献出来るのか?
 今年6月に2期目のスタートを切った安田体制は、副会長だった永沼氏が退任、代わって佐藤七郎JA会津みどり組合長が副会長に、鈴木昭雄JA東西しらかわ組合長が代表監事に就任した。
 永沼氏が去ったいま、農協関係者の間からは、
 「副会長の佐藤七郎さんはチェックする能力はない。しかも、七郎さんは脳梗塞で倒れ、いま入院中ですからね。いまの中央会にはチェックマンがいなくなってしまった。石川農協組合長選で永沼前副会長が敗れ、いいで農協の菊地前組合長はチェック能力がある人だが組合長を外されてしまったので、だれもいなくなってしまった。菊地さんは、会長に裏切られたのではないか。何の証拠もないが、安田会長が後ろから手を回して対立候補を推したのではないか。かつてのように大物組合長がいなくなってしまった」
 という声が聞かれている。また、今回の白河厚生病院の建設に当たって県厚生連は、全国の経審と福島県内の経審の平均点を出して、なおかつ東北6県で20,000平方b以上の病院を建設した実績がある企業、そして一生懸命に厚生連に通ってくれた企業、更に県内に出張所、支店があり、厚生連に「指名資格審査願い」を提出している企業−という6項目にわたる選考基準を設定して業者の選定を進めてきたという。だが、その実態はある建設会社社長が、
 「白河厚生病院の建設に関連する利権は当然、安田さんがすべて掌握している。安田さんは勉強家で、農協の運営から建設関連のことまですべて熟知しているから、石村(前会長)さんより性質が悪い。周囲に悟られず、確実に利益が自分の懐に入る仕組みを知り尽くしている」
 と分析するように“安田会長の独り舞台”との指摘がもっぱらだ。
 このほか、安田会長については病院建設予定地の用地買収を担当した福島市内の不動産会社(有)ユニオン企画の大内隆夫社長との“蜜月ぶり”も取り沙汰されている。両氏の関係については、
 「(安田会長と大内社長は)30年来の付き合いじゃないの。安田さんが農政連の事務局長で、大内さんが故・佐藤達也元福島市長さんの秘書をしていたから信頼関係も厚いでしょう」(ある農協関係者)
 の声とともに、
 「安田さんの“代貸し”の立場で、白河厚生病院の工事全般を取り仕切っているのが大内さん。『大内さんにあいさつに行かないと仕事にはありつけない。仕事にありつくには、まずは大内さんにあいさつに行くことだ』というのがもっぱらの評判ですが、1民間会社の社長が厚生連の仕事を仕切っていること自体、大きな問題ではないか。不動産関連の仕事ならば、JA白河も『白河リース』という子会社を持っているし、第一、厚生連の職員がやるべき仕事でしょう」(白河市内の建設業者)
 といった指摘も聞かれている。
 これらのウワサについて大内社長は、
 「(安田会長とは)30年来の付き合いだよ。単なる付き合いじゃなく、オレの爺さまは信連の会長で、叔父もいまでいう厚生連の参事を務めたから、農業組合との長い関係がある。木村守江の4、5回目の選挙と松平の1、2回目の選挙は、農青連の事務局長だった安田さんと佐藤達也の秘書だったオレの2人で母体作りをして仕切ったようなものだよ」
 と昔話を語り、更に、
 「今回の用地買収も厚生連の職員では無理だし、地元や郡山の不動産屋でも無理。会社更生法の成井農林や鑓水砂利なんかを抱えているわけだから、あそこまでまとめるのは、ほかの不動産屋では無理だったな」
 と述べ、その上で、
 「(安田会長とは)だれよりも(信頼関係が)ある。ただ、オレも恒山会の事務局長をしていたが、政治的な絡みは何も分からないよ。用地買収をしてくれ、と依頼されて請け負っただけだから。安田さんとの関係の中では、信頼関係はあるとしても突っ込んで良いことと悪いことの判断くらいは出来る。今回(白河厚生病院)は儲けなしだよ。それもこれも安田さんとの関係だから(用地買収を)やったわけだから」
 と一連のウワサを全面否定し、単に用地買収を請け負った一業者であることを強調している。
 いずれにせよ、今後、厚生連はもちろん、五連全体でも白河総合厚生病院に匹敵する規模の事業は出ないといわれる中、主役であるはずの組合員、地域住民の意向を完全に無視する形で多くの利権がうごめき、一部の人間だけが“甘い蜜”を吸っているとすれば由々しき問題であることは間違いない。
 まして、その“甘い蜜”を先頭に立って集積しているのがJA福島中央会、厚生連、信連、全農県本部、全共連県本部の頂点にいる安田会長自身だとすれば、これは組合員、地域住民に対する明らかな背信行為だ。ちなみに、本誌は安田会長に一連の事実関係について取材を申し込んでいるが、秘書室を通して、
 「取材を拒否するつもりはないが…。もう少し時間を頂きたい」
 としてコメントは得られていない状況だ。
 JA福島厚生連が掲げる理念には、
 「保健・医療・福祉事業を通して、農家組合員・地域住民の健康を守り、豊かな地域づくりに貢献する」
 と記されている。果たして一部の人間だけの利権を最優先して建設が進められている白河総合厚生病院は、本当に地域住民に貢献する病院になりえるのか否か−。甚だ疑問といわざるを得ない(本誌特別取材班)

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