「平沼新党」勝負のとき:平沼赳夫<対談>関岡英之(4)
2008年6月9日(月)18:17←前のページ 1 | 2 | 3 | 4 | 5 次のページ→
積極論で日本の政治をリードしたい
関岡 さて政局の話になりますが、私はふだん永田町に出入りしているわけでもない政治のド素人ですが、庶民の直感で申しますと、日本の保守政治はいま、派閥や政党の枠を超えて3つの極に収斂しようとしているように見えます。
1つは小泉純一郎さんとか小池百合子さん、あるいは民主党の前原誠司さんなど、アメリカ的な市場原理を信奉する新自由主義派ですね。政策新人類といわれた塩崎恭久さんや渡辺喜美さんなどもイデオロギー的に近いのかなと思います。
もう一方は加藤紘一さんや山崎拓さん、民主党の仙谷由人さんなど「ラーの会」ですね。親中リベラルという立場では古賀誠さんや二階俊博さんや公明党も近いように思えます。そもそも保守と呼べるかどうかも疑問ですが。
平沼 北朝鮮に対してもこのグループは、圧力より対話、と非常に迎合的です。
関岡 小泉グループはアメリカの軍事力と資本力に頼ろうとする傾向が認められ、加藤・山崎グループは中国、韓国・北朝鮮との結びつきやそのマンパワーに頼ろうとする傾向を感じます。新自由主義とリベラルはイデオロギー的には正反対ですが、どちらも日本の自立を志向するのではなく、外国頼みという点では違いがないように思います。
その、どちらにも飽き足りない、どうしても保守の第三極が必要だと感じている国民が、とりわけ草の根の保守層に増えているように感じます。その衆望を浴びているのが日本の主権と伝統を重んじる平沼さん、麻生太郎さん、中川昭一さん、安倍晋三さん、4人のイニシャルから付けられた「HANAの会」で、日本を再生してくれる真の保守政治家として国民が期待しているように思うのです。
平沼 私は成すべき改革は大胆に成すべきだと思っています。ただしその改革は、どうやって外国のヒトやカネを日本に入れて助けてもらうかではなく、若者も、壮年も、女性も、高齢者も、日本人誰もが生き生きと自信をもって、底力を発揮できるようにするものであるべき、と信じているんです。
同時に私は保守政治家ですから、守るべきは守るということでは絶対に譲れないものがあるはずだという信念をもっています。なぜなら日本の伝統、歴史、文化は世界に誇りうる、むしろ世界が羨むような素晴らしいもので、守るべき価値に満ちているからです。
その原点は何かといえば、やはり私は御皇室だと思います。世界最古、古今無双の皇統こそ日本独自のもので、それは日本の歴史そのものです。日本の政治家、少なくとも保守政治家たる者は、これを絶対にお守りしなければならない責務を負っている。そのためには「千万人といえども吾往かん」という覚悟が必要だと思いますが、アメリカに頼りたがる人や中国に頼りたがる人は、この辺の意識が希薄です。
関岡 新自由主義派は、なぜか女系容認派と重なりますね。
平沼 そうですね。それから私は近々、超党派の「国語を考える国会議員懇談会(国語議連)」を立ち上げるんです。最近の国語の乱れようは目に余るものがある。敬語の乱れや「食べれる」などといった「ら抜き言葉」の氾濫など、由々しき状況です。われわれは言語で思考するわけですから、言葉が乱れているということは、思考が乱れている、精神が乱れているということにほかなりません。精神を正すためには、国語も正しい伝統に回帰すべきです。たとえば50音の「ゐ」や「ゑ」は廃止されていますが、本来それに当てはまる音があった。それが忘れられ、発音できなくなってしまったんです。
関岡 東京大学名誉教授の小堀桂一郎先生も旧漢字、旧仮名遣いの復活を提唱され、自ら実践されています。たしかに旧漢字、旧仮名遣いを知らないために、私のような物書きでさえ、戦前の文献を読むときには苦労しますから。
平沼 戦前の文献が読めないということは、戦前の日本人の知的遺産、知的な蓄積から分断されているということです。ましてや古典からはもっと切り離されている。古典は日本の先人たちの叡智の結晶、知恵の宝庫ですよ。
そもそも旧漢字、旧仮名遣いが廃止されたのは占領軍の圧力です。文字改革というのは非常に左翼的な手法で、たとえば毛沢東が人民共和国を建国してすぐ、繁体字を廃止して簡体字にしました。以来、一般の中国人は、『論語』や『孟子』など自国の古典を読めなくなってしまった。人民が古典を読んで知恵を付けると、『毛沢東選集』の空疎さ、貧困さに気づいてしまうのでまずいわけです(笑)。
関岡 日本人の潜在力、底力を引き出すにはどうしたらよいとお考えですか。
平沼 いまの政治家は国民に夢や希望、やる気を起こすことができなくなっています。私と同じ当選9回の自民党議員の演説を聴いていたら、「日本はもう逆立ちしても2パーセント以上の経済成長を遂げることはできません、だから増税です、消費税を10%に上げざるをえません」なんていっている。これは財務省の役人の論理ですよ。悲観的なことばかりいって、増税に導こうとしているわけです。
849兆円というのはたしかに大変な借金で、そこだけ見ていると絶望的な気持ちになるのもわかりますが、国家財政だって両建てで、バランスシートで見れば債務に見合う債権がある。日本は世界最大の債権国ですよ。外貨準備が100兆円、年金準備金も250兆円もある。債務から債権を差し引いた純債務は国内総生産の半分以下で、ヨーロッパ諸国の水準と変わらないのに、財務省の役人はめったにそれを国民に開示しない。アメリカの格付け会社が日本の格付けをアフリカのボツワナより下に格下げしたとき、反論材料として初めて開示しましたが。なんといっても日本には対外債務が1円もない。個人金融資産も1600兆円ある。ラテンアメリカ諸国などとは違うんです。
アメリカのクリントン政権は、発足したとき巨額の双子の赤字を抱えていましたが、投資減税、中小企業減税や研究開発減税と、IT産業への戦略的な傾斜配分という積極策で財政赤字を解消しつつ好景気をもたらしました。私は日本の保守の第三極も、悲観論ではなく積極論で日本の政治をリードすべきだし、そうできると考えています。
関岡 そうですね、日本はせっかく積み上げてきた莫大な債権、資産を活用できていない。国家予算を上回る外貨準備をもっているのに、アメリカ国債を買って、アメリカの赤字を支えることに費消している。日本人の底力が埋もれているのに、とくに若者、専業主婦、高齢者の潜在力が活用されていないですね。泣き言をいいながらも案外心地よい無為に身を委ねるのをやめ、否が応でも覚醒しなければならない時運が内外から熟成してきているように思います。
積極論で日本の政治をリードしたい
関岡 さて政局の話になりますが、私はふだん永田町に出入りしているわけでもない政治のド素人ですが、庶民の直感で申しますと、日本の保守政治はいま、派閥や政党の枠を超えて3つの極に収斂しようとしているように見えます。
1つは小泉純一郎さんとか小池百合子さん、あるいは民主党の前原誠司さんなど、アメリカ的な市場原理を信奉する新自由主義派ですね。政策新人類といわれた塩崎恭久さんや渡辺喜美さんなどもイデオロギー的に近いのかなと思います。
もう一方は加藤紘一さんや山崎拓さん、民主党の仙谷由人さんなど「ラーの会」ですね。親中リベラルという立場では古賀誠さんや二階俊博さんや公明党も近いように思えます。そもそも保守と呼べるかどうかも疑問ですが。
平沼 北朝鮮に対してもこのグループは、圧力より対話、と非常に迎合的です。
関岡 小泉グループはアメリカの軍事力と資本力に頼ろうとする傾向が認められ、加藤・山崎グループは中国、韓国・北朝鮮との結びつきやそのマンパワーに頼ろうとする傾向を感じます。新自由主義とリベラルはイデオロギー的には正反対ですが、どちらも日本の自立を志向するのではなく、外国頼みという点では違いがないように思います。
その、どちらにも飽き足りない、どうしても保守の第三極が必要だと感じている国民が、とりわけ草の根の保守層に増えているように感じます。その衆望を浴びているのが日本の主権と伝統を重んじる平沼さん、麻生太郎さん、中川昭一さん、安倍晋三さん、4人のイニシャルから付けられた「HANAの会」で、日本を再生してくれる真の保守政治家として国民が期待しているように思うのです。
平沼 私は成すべき改革は大胆に成すべきだと思っています。ただしその改革は、どうやって外国のヒトやカネを日本に入れて助けてもらうかではなく、若者も、壮年も、女性も、高齢者も、日本人誰もが生き生きと自信をもって、底力を発揮できるようにするものであるべき、と信じているんです。
同時に私は保守政治家ですから、守るべきは守るということでは絶対に譲れないものがあるはずだという信念をもっています。なぜなら日本の伝統、歴史、文化は世界に誇りうる、むしろ世界が羨むような素晴らしいもので、守るべき価値に満ちているからです。
その原点は何かといえば、やはり私は御皇室だと思います。世界最古、古今無双の皇統こそ日本独自のもので、それは日本の歴史そのものです。日本の政治家、少なくとも保守政治家たる者は、これを絶対にお守りしなければならない責務を負っている。そのためには「千万人といえども吾往かん」という覚悟が必要だと思いますが、アメリカに頼りたがる人や中国に頼りたがる人は、この辺の意識が希薄です。
関岡 新自由主義派は、なぜか女系容認派と重なりますね。
平沼 そうですね。それから私は近々、超党派の「国語を考える国会議員懇談会(国語議連)」を立ち上げるんです。最近の国語の乱れようは目に余るものがある。敬語の乱れや「食べれる」などといった「ら抜き言葉」の氾濫など、由々しき状況です。われわれは言語で思考するわけですから、言葉が乱れているということは、思考が乱れている、精神が乱れているということにほかなりません。精神を正すためには、国語も正しい伝統に回帰すべきです。たとえば50音の「ゐ」や「ゑ」は廃止されていますが、本来それに当てはまる音があった。それが忘れられ、発音できなくなってしまったんです。
関岡 東京大学名誉教授の小堀桂一郎先生も旧漢字、旧仮名遣いの復活を提唱され、自ら実践されています。たしかに旧漢字、旧仮名遣いを知らないために、私のような物書きでさえ、戦前の文献を読むときには苦労しますから。
平沼 戦前の文献が読めないということは、戦前の日本人の知的遺産、知的な蓄積から分断されているということです。ましてや古典からはもっと切り離されている。古典は日本の先人たちの叡智の結晶、知恵の宝庫ですよ。
そもそも旧漢字、旧仮名遣いが廃止されたのは占領軍の圧力です。文字改革というのは非常に左翼的な手法で、たとえば毛沢東が人民共和国を建国してすぐ、繁体字を廃止して簡体字にしました。以来、一般の中国人は、『論語』や『孟子』など自国の古典を読めなくなってしまった。人民が古典を読んで知恵を付けると、『毛沢東選集』の空疎さ、貧困さに気づいてしまうのでまずいわけです(笑)。
関岡 日本人の潜在力、底力を引き出すにはどうしたらよいとお考えですか。
平沼 いまの政治家は国民に夢や希望、やる気を起こすことができなくなっています。私と同じ当選9回の自民党議員の演説を聴いていたら、「日本はもう逆立ちしても2パーセント以上の経済成長を遂げることはできません、だから増税です、消費税を10%に上げざるをえません」なんていっている。これは財務省の役人の論理ですよ。悲観的なことばかりいって、増税に導こうとしているわけです。
849兆円というのはたしかに大変な借金で、そこだけ見ていると絶望的な気持ちになるのもわかりますが、国家財政だって両建てで、バランスシートで見れば債務に見合う債権がある。日本は世界最大の債権国ですよ。外貨準備が100兆円、年金準備金も250兆円もある。債務から債権を差し引いた純債務は国内総生産の半分以下で、ヨーロッパ諸国の水準と変わらないのに、財務省の役人はめったにそれを国民に開示しない。アメリカの格付け会社が日本の格付けをアフリカのボツワナより下に格下げしたとき、反論材料として初めて開示しましたが。なんといっても日本には対外債務が1円もない。個人金融資産も1600兆円ある。ラテンアメリカ諸国などとは違うんです。
アメリカのクリントン政権は、発足したとき巨額の双子の赤字を抱えていましたが、投資減税、中小企業減税や研究開発減税と、IT産業への戦略的な傾斜配分という積極策で財政赤字を解消しつつ好景気をもたらしました。私は日本の保守の第三極も、悲観論ではなく積極論で日本の政治をリードすべきだし、そうできると考えています。
関岡 そうですね、日本はせっかく積み上げてきた莫大な債権、資産を活用できていない。国家予算を上回る外貨準備をもっているのに、アメリカ国債を買って、アメリカの赤字を支えることに費消している。日本人の底力が埋もれているのに、とくに若者、専業主婦、高齢者の潜在力が活用されていないですね。泣き言をいいながらも案外心地よい無為に身を委ねるのをやめ、否が応でも覚醒しなければならない時運が内外から熟成してきているように思います。
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