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野生シカ飼育へ 奥多摩町

2008年05月27日

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野生のニホンジカを捕獲して飼育するためにつくられた囲い=奥多摩町

 シカ肉料理の「特産品」化をめざしている奥多摩町で、野生のニホンジカを捕獲後に飼育し、食肉にしようという試みが始まった。町は駆除のために捕獲したシカを食肉加工施設で処理して町内の民宿や旅館に卸しているが、需要が多い夏から秋にかけては品薄になる。肉の安定供給が狙いだが、飼育できる頭数は限られることから、売り出しの「切り札」になるかどうかは未知数だ。(上林格)

 ニホンジカを93年から有害鳥獣として駆除してきた奥多摩町は、「食害転じて観光の目玉に」と、シカを食肉処理する「森林恵工房(もりのめぐみこうぼう) 峰」を06年に完成させた。ところが皮肉なことに、今度はシカが思うように手に入らない。同年度は158頭だったが、昨年度は102頭に。処理量は合計で458キロから235キロと半減に近い。

 原因は様々ある。銃で撃たれたシカは商品にならないことが多い。ももと背の肉が主に食用とされ、銃でその部位を撃たれると商品にできないからだ。1頭から食肉に利用できるのは体重の約12〜13%。昨年度は約320頭を駆除したが、3分の2は商品にならなかった。駆除を始めてからはシカが町外に逃げ、頭数も減っているという。

 気温も体温も高い夏場は、運搬する間に肉が変色してしまう。そうなるとストックに頼ることになるが、冷凍処理されたシカ肉の賞味期限は現在3カ月。夏から秋にかけての観光シーズンは品薄状態になる。

 安定した食肉確保策が急務となった町は、北海道・阿寒湖周辺で野生のエゾシカを餌付けして食肉用に飼育している方法を参考にした。

 町内の標高千メートル近くにあるジンギスカン用の羊牧場跡地の周囲をフェンスで囲み、1.8ヘクタールのおりをつくった。扉が3カ所あり、フェンスのなかの草地にはシカが好む鉱塩をまいてある。寄ってきたシカを少しずつ慣らし、最後に扉を落として捕まえる作戦。銃を使わないので肉が傷まないのが最大の利点だ。4月から始めて数頭のシカが立ち寄った形跡も確認された。

 ただ、目視できる範囲の平地に2千頭のシカがいる阿寒湖周辺と、険しい山に1300頭前後しか生息していない奥多摩町では捕獲する条件が違いすぎる。

 「捕獲して飼育できるのは数頭だろうが、それでも有効に利用したい」と担当者。町では3年をめどに、さらに活用法を模索するという。

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