今春、札幌市の中学校が女子全員の制服をスラックスに統一した。スカートとの選択制を採用する学校が少しずつ増える中、夏の一時期を除いた、ほぼ「完全義務化」に踏み切ったのは全国でも初めてと見られる。女子のスラックス制服は広がるのか。【清水優子】
札幌市立南が丘中は、今春入学の女子からスラックス制服の着用を義務づけた。スカートは夏季の約3カ月半のみ認めた。
最大の目的は「健康管理」。冬の女子の登下校スタイルは素足にソックスか、短めのスカートの下にジャージーをはく「はにわルック」が定番。佐々木穣(みのる)教頭は「本当は寒いのに我慢する姿は悲惨。はにわルックはみっともなかった。体に影響する恐れもあり義務化した」と説明する。アンケートでは「足が冷えずいい」「動きやすい」「暑い」など賛否両論が寄せられたが、おおむね好意的だった。
冬季(11~3月)限定で義務化したのは新潟県立久比岐高(上越市)。06年4月の開校当初からだ。小林勝也教頭は「海風が強い地域性のうえ、選択制では定着しないと判断したようだ」と説明する。当初、一部生徒が「ダサい(格好悪い)」などと反発。駅でスカートにはき替える女子も現れたが、今は受け入れられているという。
昭和女子大付属昭和高(東京都世田谷区)は7年前、制服を一新したのを機に、正装のブレザーとスカートに加え、スラックスも選べるようにした。英国メーカーの特注品だが、全生徒630人のうち、スラックス派は1割にも満たない。
時々、スラックスをはく谷口裕香さん(3年)は「私生活もズボンが多いし、動きやすく違和感はないが、校外で行き交う人に『男女どちら?』と注目されることが多い」。スカート派の高見知可さん(2年)は「スラックスは動きやすい」と利点を認めながらも「女子の制服=スカートのイメージは強い。この格好ができるのは今しかない」と力説。会川恵志(けいし)教諭は「選べることが一番大事。機能性の高いスラックスも選択肢の一つ」と話す。
イラストレーターで制服研究家の森伸之さん(47)は「防寒や防犯対策のほか、ジェンダー(性差)をなくす目的で採用する学校も多い」と分析する。「着る人が増えるかは疑問。スラックスは着る人の体形を選び、スカート派大勢の中で抵抗もある」と定着に悲観的だ。
スラックス制服はどのぐらい広まっているのか。制服生産量日本一の尾崎商事(岡山市)の平尾周二・開発本部マーケティング部長は「納入先約1万校のうち、導入は数十校程度」と話す。採用が増え始めたのはここ5、6年で、雪国を中心に大阪など関西でも多いという。「やめる学校はなく、徐々に広がるのでは」と見ている。
毎日新聞 2008年5月23日 13時00分(最終更新 5月23日 14時20分)