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荒瀬ダム存続方針に戸惑い、再考求める声上がる

撤去から一転、存続の見通しとなった県営荒瀬ダム

 蒲島知事が県営荒瀬ダムの撤去凍結、発電事業存続の意向を表明した4日、県の突然の方針転換に、撤去を要望してきた地元関係者には驚きや戸惑いが広がり、再考を求める声が上がった。

 荒瀬ダムを巡っては、地元の旧坂本村(現・八代市坂本町)で事業継続に反対する運動が活発化。02年9月には同村議会がダム継続に反対する請願を全会一致で採択し、村の総意として撤去を求めた経緯がある。

 運動を進めた住民団体「荒瀬ダムを考える会」の本田進会長(74)は「ダムによってアユ漁などの産業が失われ、汚泥がたまり水害もひどくなった。撤去は何十年も前から住民の念願。知事が変わった途端に凍結とは……」と驚きを隠さない。今後も撤去を求める方針で、近くメンバーで協議するという。

 一方、自民党県議団のプロジェクトチームも02年12月、撤去を求める提言をまとめ、当時、撤去を表明した潮谷義子知事の決断を後押しした。代表を務めた西岡勝成県議は「環境対策や施設更新にかかる費用のめども立つなど、提言当時とは状況が変化しており、知事の方針は一つの方向として受け止めている」と理解を示した。

 撤去を決めた県は、専門家も交えて具体的な工法などを話し合う検討委員会を発足。20回以上議論を重ねてきた。地元代表で参加する八代市の自営業出水晃さん(63)は「失望した。検討も終わり、あとは着手を待つだけだった。海や川の再生など撤去がもたらすメリットは計り知れない。住民の総意を無視したトップダウンのやり方だ」と憤りをあらわにした。

 八代市役所にも衝撃が走った。市には4日朝、突然県から方針が伝えられたといい、出張中の坂田孝志市長は「あまりに唐突で、真意を直接聞きたい。判断には住民の意思が反映されていない。地元と協議した上で発表してもらいたかった」とのコメントを出した。

2008年6月5日  読売新聞)
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