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B型肝炎のワクチンが品薄 大手の自主回収で

2008年06月05日08時40分

 母子感染や医療関係者が誤って注射針を刺す事故で感染するB型肝炎ウイルスのワクチンが品薄になっている。約4割のシェアを持つ製品が自主回収されたためだ。不足分が、生産再開などで解消されるのは早くても秋以降で、大学病院などで接種を延期するなど影響が出始めている。

 自主回収されているのは、明治乳業製B型肝炎ワクチンの「明乳」。製造工程の無菌性を確認する試験の方法に不備が見つかり、厚生労働省が3月に基準不適合とした。同社は、工程の改善が確認されるまで製造を中止し、06年7月以降に出荷された製品36万1千本の自主回収を4月10日から始めた。夏までに改善を目指すが、再検査や製造にさらに時間が必要で、販売再開のめどはたっていないという。

 B型肝炎ワクチンを製造するほかの2社も製品在庫は十分でない。製品シェア約6割の化学及血清療法研究所(熊本市)は、増産を含めた対応を検討中だが、「不足を補完するだけの製品在庫はない」という。

 品不足の影響が、大学病院などに出てきた。京都府立医科大(京都市)では、実習前の医学生、看護学生ら500人以上が接種対象者となる。半年に1人3回の接種が必要なため、今年は1500本以上のワクチンが必要だが、一部しか入手できていないという。横浜市立大では、医学科、看護学科の新入生約160人を対象にした接種が入手困難を理由に延期された。

 明治乳業は、製品には抗菌剤が添加され「微生物汚染などによる健康被害のおそれは非常に低い」としながら、念のために自主回収を決めたという。早急に接種の必要がある場合は「健康被害は考え難いことを担当医や接種者に了承していただき、在庫品の供給で対応したい」とする。

 しかし、京都府立医科大付属病院の藤田直久・感染対策部長は「安全性に問題がないなら回収の必要はないはずで、自己責任で従来品も接種可能というのは製造者の責任逃れともとれる対応だ。代替品の供給体制や供給再開の見通しを示したうえで回収するなどメーカーとしての責任を果たして欲しい」と話している。(林義則)

     ◇

 〈B型肝炎〉 主に血液を通して感染し、急性肝炎が劇症化すれば死に至る場合もある。国内の感染者は100万人以上と推定され、出産時の母子感染防止のほか、医療従事者が誤って針を刺してしまう事故による院内感染予防に、ワクチン接種が欠かせない。厚生労働省研究班の調査によれば、ベッド100床あたりの年間針刺し事故は約4件。針刺し事故で、C型肝炎に感染する率は数%、エイズに感染する率は1%以下に対し、B型肝炎では約30%と危険性が高い。

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