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アイヌ国会決議:懇談会参加めぐり、駆け引き

 「今日は新生日本を迎える時が来たと感極まった」。アイヌ民族の先住民族認定を求める国会決議が採択された6日、国会内で記者会見した北海道ウタリ協会の加藤忠理事長(69)は歴史的な転換点を迎えた喜びをこう表現した。ただ、具体的な先住権の内容などを検討する政府の「有識者懇談会」設置へ向け、メンバーにアイヌ民族を入れるよう求めるアイヌ側と、オブザーバー参加にとどめたい政府側との駆け引きが早くも始まり、先行きには不透明感が漂っている。【千々部一好】

 「当事者抜きの議論はおかしい。アイヌ民族の代表を複数入れて、政府、有識者の3者で検討を進めていくことが大切」(秋辺得平・北海道ウタリ協会副理事長)

 「自分たちのことを話し合う場にアイヌ自身が参加できないとしたら納得できない」(北原きよ子・関東ウタリ会前会長)

 会見は決議の歓迎ムードに満ちていたが、有識者懇談会のメンバー選定に話題が及ぶと一転、政府をけん制する発言が相次いだ。

 アイヌ問題を検討する政府の有識者懇談会は95年にも設置されたことがあるが、この時のメンバーにアイヌ民族は選ばれなかった。同懇談会はアイヌの「先住性」「民族性」を認め、北海道旧土人保護法に代わるアイヌ文化振興法制定のきっかけとなったが、先住民族認定は実現しなかった。昨年9月に国連が採択した「先住民族の権利宣言」には先住民族が政策決定に関与できる権利(18条)が明記されたこともあり、「今度こそ」の思いがメンバー入りを求める声につながっている。

 今回の国会決議を主導した超党派の議員連盟「アイヌ民族の権利確立を考える議員の会」の会合でも、アイヌ民族のメンバー入りを後押しする発言が相次いだ。民主党の鳩山由紀夫幹事長は「懇談会ではアイヌの代表がど真ん中に座って発言すべきだ」、新党大地の鈴木宗男代表も「懇談会のメンバーは3分の1がアイヌ民族かその関係者とすべきだ」と主張した。

 政府が警戒するのは、先住民族認定が国連宣言に盛り込まれた土地や資源、自治など46項目に及ぶ権利要求につながることだ。町村信孝官房長官は6日の記者会見で「ウタリ協会の方は国会の議席がほしいとか、土地をどうかしてくれとか、そんなことまで要求していないと聞いている」とけん制してみせた。

 これに対しウタリ協会側は「懇談会の議論を見守りながら短期、中期、長期の課題をそれぞれ整理したい」(加藤理事長)と具体的な先住権の内容には踏み込んではいない。早い段階で権利を要求すると、政府と対立し、先住民族認定が進まなくなる懸念があるからだ。それだけに、懇談会の議論には自ら参加して意見を反映させたいという思いが強く、今後、政府との駆け引きが激しくなりそうだ。

2008年6月7日

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