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◆競泳 ジャパンオープン(6日・東京辰巳国際水泳場) 「最速水着」驚きの威力―。10種目の決勝が行われ、男子百メートル平泳ぎで英スピード社の「レーザー・レーサー(LZR)」を初試着した04年アテネ五輪王者の北島康介(25)=日本コカ・コーラ=が、59秒44の日本新をマーク。05年7月に自身が出した記録を、0秒09更新する今季世界最高記録をたたき出した。ほかにも、LZRを着た北京五輪日本代表4選手が日本新を連発。五輪本番の水着について話し合う10日の常務理事会を待たずに、LZRの解禁は決定的となった。
4月末から日本中を騒がせている水着騒動だが、実戦テスト初日で早くも出すべき答えが見えた。北島は日本新を樹立後、プールから上がる際、「やばい」と不敵な笑み。そのひと言がLZRの威力を物語っていた。
決勝。初めて腰から足首までを覆ったグレーのLZRに身を包んだ。北島は水面を流れるような泳ぎで、日本記録を0秒26上回る28秒03でターンすると、後半もスムーズな泳ぎでこの種目では約3年ぶりの日本新だ。「ミズノで勝負したい気持ちは強いが正直、この水着は素晴らしい」と本音が漏れた。
調子は良くなかった。5月中旬、練習中に右肩に炎症を起こした。12日に出発する米国での高地合宿も考え練習の質、量とも抑え「この大会は高いものは望めない」と自覚していた。だが“魔法の水着”が五輪王者の底力を引き出した。「この日本新はビックリ。五輪も燃えてきた。もっと良い記録で優勝できるようにやりたい」。平泳ぎでは、前人未到の五輪2大会連続2冠へ向け自信を深めた。
ただ、水着ばかりが注目される騒動には疑問を呈した。決勝直前。日本のエースは自らの思いを発信した。入場で着た上着を脱ぐと、胸に文字の言葉の入った白いTシャツを披露した。「I AM THE SWIMMER 泳ぐのは僕だ 是我在遊泳」。所属事務所に頼んで作ったもので、世界中で過熱する水着騒動に「選手が主役。もっと選手の頑張りを見て欲しいと、世界にメッセージを送りたかった」。
10日、日本水泳連盟は国内3社以外の水着着用も認める結論を出すことが濃厚。だが、北島はミズノ社との個人契約があり、現状では同社の水着しか着られない。この日午前の百メートル予選も同社の新水着で出た。北島の所属事務所関係者は、「ミズノとは事前に話をし、今大会に関しては(LZR試着の)了承を頂きました」と説明。五輪については「これからいろんなお話をしたい」とした。
もし、北島が万全の状態でLZRを着たら…。03年7月以来の世界記録奪回も現実味を帯びる。だが、LZR効果で59秒台のライバルも今季、4人に増えた。平井伯昌コーチ(45)は「LZRを着ないと勝負にならない」と五輪での着用を熱望した。「高いレベルの勝負をしたい。それに向けての準備はすべてしたい」と北島。8月、最高の舞台で世界最速の泳ぎを披露する。
中村礼子(女子百メートル背泳ぎ)「日本選手権で悔しい思いをしたので絶対記録を出したかった。タイム? もうちょっと狙いたかった。59秒5を切らないとメダル争いに入れない」
上田春佳(女子二百メートル自由形)「電光掲示板を見て、すごいビックリしましたよ。LZR? 始めの50メートルからキックがすごい楽で、空回りしてるのかと思ったほどでした」
奥村幸大(男子二百メートル自由形)「オリンピックは選手にとっては4年に一度。悪い言葉で言えば“戦争”。自分に合った水着をだれしもが着たいと思ってる」
◆レーザー・レーサー ○…英スピード社が米航空宇宙局(NASA)などの協力を得て開発した競泳水着。水の抵抗軽減のために生地は極薄で表面が滑らか。体の締め付けも非常に強い。ポリウレタン素材も用いて超軽量で水をよくはじく。今年に入って着用した選手が長水路(50メートルプール)で個人・リレー合わせ18の世界新記録を出した。これまで無名選手も記録を出したため、水着自体に浮力があるのではと疑惑も呼んだが、国際水連は規則違反はないと発表した。フェルプス(米国)ら世界のトップ選手の多くが着用する。
ミズノ社「今日の結果は選手が一生懸命練習した成果だと思う。事前に北島選手側からも使用の連絡は受けていた。5個の日本新? この結果は重大に受け止め、今後も開発に力を尽くしたい」
英スピード社とライセンス契約を結ぶゴールドウイン社「今日のところはノーコメントです」
古橋広之進・日本水連名誉会長「昔はふんどしをして泳いでいたんだよ。水着のことで騒ぎすぎじゃないか。水着くらいでそんなに変わるかな」
(2008年6月7日06時02分 スポーツ報知)