「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」が6日、衆参両院本会議で採択される。これを受け政府は「アイヌ有識者会議」(仮称)を設置して先住民族認定へ向けた作業に着手する見通し。決議を前に北海道ウタリ協会の加藤忠理事長(69)が毎日新聞のインタビューに応じ、悲願の実現へ一歩近付いた心境を語った。【聞き手・千々部一好、高山純二】
--国会決議をどう受け止めますか。
◆歴史的な1ページだ。国会が明治維新から140年間続いたアイヌ民族への不正義を認めてくれることになり、本当にうれしい。
--アイヌを先住民族と認めていない政府に言いたいことは。
◆アイヌモシリ(人間の静かな大地)で開かれる7月の北海道洞爺湖サミットで先住民族と認定してほしい。サミットに参加するG8(主要8カ国)は「アイヌは先住民族」と知っている。国連に未加盟の台湾でも先住民族政策をきちんと行っている。国連に加盟し昨年9月の先住民族の権利宣言にも賛成した日本が何もしないということは許されない。
--国連の先住民族の権利宣言では46項目の権利を明記しています。ウタリ協会として、何を求めていく考えですか。
◆国会決議案に「高いレベルで有識者の意見を聞きながら」とあるように、歴史や法律面も含めて1年くらい時間をかけて議論してほしい。そこで、今できることは何か、そして中期的、長期的にできることを整理して対策を進めてほしい。
--政府が先住民族と認定しないのは「土地を返せ」「国会に民族議席を認めろ」といった要求が出てくるのを恐れているからとも言われます。
◆「土地をよこせ」とウタリ協会は言ったことはない。アイヌ文化振興法制定のときも国の実情に合った施策を進めることで内容が決まった。目先のことを望むのではなく、長いスパンを考えて対応したい。
--「アイヌ協会」への名称変更を5月の総会で決めた狙いは。
◆「機は熟した」との思いがあった。これまでも名称変更を提案する動きはあったが、「アイヌ」という名称に抵抗を感じる人が多かった。今秋、北海道大と合同でアイヌ社会調査を始めるので、しっかりとデータをつかんで、総合的な対策を求めていきたい。
2008年6月6日