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アイヌ民族:苦難の歴史かみしめ…民族衣装で国会傍聴

アイヌを先住民族と認めることを求める決議が参院本会議で採決され、笑顔で握手する加藤理事長(左)ら=国会内で2008年6月6日午前10時18分、武市公孝撮影
アイヌを先住民族と認めることを求める決議が参院本会議で採決され、笑顔で握手する加藤理事長(左)ら=国会内で2008年6月6日午前10時18分、武市公孝撮影

 アイヌ民族の歴史に新たな1ページが加わった。6日、先住民族認定を政府に求める国会決議が参院で採択された瞬間、色とりどりの民族衣装をまとって傍聴していたアイヌの人たちは笑顔に包まれ、苦難の歴史と未来への希望をかみしめるように目頭を押さえた。多くのアイヌが住む北海道内からも「大きな一歩」と評価する声が上がる一方、いまだに正式な認定に踏み切らない政府への不満や警戒感も広がった。【千々部一好、金子淳、高山純二】

 午前10時に開会した参院本会議の傍聴席では、北海道ウタリ協会や首都圏在住の関東ウタリ会のメンバーら約20人が民族衣装を着て審議を見守った。決議案が全会派一致で採択されると、道ウタリ協会の加藤忠理事長(69)らは仲間と一緒に握手を交わし、喜びを分かち合った。加藤理事長は「本当に感動した。涙が出て止まらなかったが、この涙は苦しい歴史を強いられてきた先祖のもので、これからも頑張っていきたい」と興奮した様子で話した。

 ユーカラ(叙事詩)の研究・伝承に取り組む滝地良子さん(56)は白糠町の勤務先で決議の朗報を聞き「祖父母の時代から求めていたことだから、すごくうれしい」。中村斎・アイヌ民族博物館館長も「これまでのアイヌの苦悩は計り知れない。望ましい決議になった」と評価した。

 アイヌ初の国会議員となった故・萱野(かやの)茂さんの次男志朗さん(50)は「かつて父は『私は苗木を植える。育てるのは後進の人たちだ』と言っていた。少しだけど、苗木が育っている。父もいい方向に向かっていると思うんじゃないかな」と話した。

 評価と歓迎の声の一方で、今後の政府の取り組みには注文の声が相次いだ。先住民族としての認定や具体的な権利確立は、政府が設置する「アイヌ有識者会議」(仮称)で議論されることになる。

 平取町の元町議、貝沢薫さん(71)は「国会決議が骨抜きにならないよう、政府の動きを注意深く見守りたい。今回のチャンスを逃したら、永久にアイヌの権利はなくなってしまう」と警戒する。萱野志朗さんも「このタイミングで決議されるのは北海道洞爺湖サミットがあるからだろう。『ジェスチャー』で終わったら困る」とクギを刺した。

毎日新聞 2008年6月6日 13時54分(最終更新 6月6日 15時27分)

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