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アイヌ民族:「先住民族」初の国会決議、参院で採択

アイヌ民族を先住民とすることを求める決議案が参院本会議で採決され、笑顔で握手するアイヌ民族の関係者ら=国会内で2008年6月6日午前10時18分、武市公孝撮影
アイヌ民族を先住民とすることを求める決議案が参院本会議で採決され、笑顔で握手するアイヌ民族の関係者ら=国会内で2008年6月6日午前10時18分、武市公孝撮影

 アイヌ民族を先住民族と認定するよう政府に求める初の国会決議が6日午前の参院本会議で、全会一致で採択された。午後には衆院本会議でも採択される。これを受け町村信孝官房長官は参院本会議で、政府として初めてアイヌを「先住民族」と認識することを表明し、正式な認定に前向きな姿勢を示した。政府は今後、「アイヌ有識者会議」(仮称)を設置し、先住民族と認めた場合の先住権の内容などを検討する方針。アイヌの先住権を認めず北海道開発を優先してきた明治以来のアイヌ政策の転換につながる可能性が出てきた。

 決議は昨年9月に国連で「先住民族の権利宣言」が採択されたことにより、具体的な行動が求められていると指摘。「我が国が近代化する過程において多数のアイヌの人々が差別され、貧窮を余儀なくされたという歴史的事実を厳粛に受け止めなければならない」とし、先住民族としての認定と総合的な施策の確立を政府に求めた。

 これを受け町村長官は「政府としては独自の言語、宗教や文化の独自性を有する先住民族との認識のもと、国連宣言を参照しつつ、これまでのアイヌ政策をさらに推進し、総合的な施策の確立に取り組む」と表明。政府はこれまでアイヌ民族について「先住性」は認めてきたが、「先住民族」との認識を示したのは初めて。

 アイヌの法的位置付けをめぐっては、1世紀近くにわたり差別の根源とされた「北海道旧土人保護法」に代わり「アイヌ文化振興法」が97年に制定されたが、先住民族としての認定は避け、アイヌ語の普及や伝統的な歌や踊りの継承を目的とする内容にとどまった。そのためアイヌで作る北海道ウタリ協会は「先住性」を基に独自の文化や生活の保護・再生を進める総合的な施策の拡充を求めていた。

 同協会の加藤忠理事長は参院本会議を傍聴後、「本当に感動した。これまでのアイヌ民族に対する不正義に終止符を打ち、新たな視点でお互いを尊重する社会づくりの一歩にしてほしい」と語った。【千々部一好】

 ◇アイヌ民族

 北海道や千島列島などに住む独自の文化、言語を持つ民族。かつては主に狩猟や山菜の採取に従事し、明治政府の同化政策で人口が急減したと言われている。北海道庁が06年に行った調査では、道内に2万3782人が居住。北海道ウタリ協会は1946年に「北海道アイヌ協会」として発足したが、アイヌ語で「人」を意味する「アイヌ」の呼称は差別された歴史を思い起こすとして、「同胞」を意味する「ウタリ」を使ってきた。拒否感が薄れたことなどから、来年4月から名称を「北海道アイヌ協会」に変更する。

 ◇アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議骨子

 1 政府は「先住民族の権利宣言」を踏まえアイヌを先住民族として認めること

 2 政府は有識者の意見を聞きながら総合的な施策の確立に取り組むこと

毎日新聞 2008年6月6日 11時20分(最終更新 6月6日 11時42分)

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