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【主張】高齢者医療改善策 追加軽減は困窮者に限れ

2008.6.6 03:22
このニュースのトピックス主張

 75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度(長寿医療制度)について、与党が保険料の追加軽減措置をまとめた。

 基礎年金額(年80万円)以下の収入しかない低所得者約270万人の保険料軽減率を現行の7割から9割に拡大する。それでも支払い困難な人には、制度を運営する都道府県の広域連合が個別に減免を講じたり、市区町村が相談に応じる。新制度への移行で負担が急増した低所得層の不安解消につながるものと期待したい。

 だが、中所得層向け対策として、保険料の所得比例部分を一律軽減するのは行き過ぎだ。軽減に伴う必要財源は税金で賄われる。その多くは若い世代の負担となることを忘れてはならない。新制度は高齢者本人にも能力に応じた負担を求める仕組みだ。制度の理念をゆがめることにもなる。

 そもそも、与党の追加軽減策は、8日の沖縄県議選を意識して議論を早めたこともあり、厚生労働省の実態調査結果を待たずに決められた。4日発表された調査結果では69%の人が、国民健康保険(国保)時代に比べ保険料が下がっていた。低所得層よりも高所得層のほうが下がった人が多いことも分かった。

 負担する力のある人への軽減はバラマキ批判を免れまい。仮にも、追加軽減策によって、国保時代より保険料が下がることになったのでは話が違ってくる。追加軽減は、負担増で暮らしが本当に困窮した人に限定すべきだ。

 追加軽減策は、準備の都合もあって今年度は暫定措置がとられる。本格実施は来年度だ。この結果、制度はさらに複雑になる。例えば、現在7割軽減対象者のうち9割軽減にならない200万人は、今年度は一旦保険料が下がるが、来年度は再び上がる。

 4月の制度導入時にも、与党が保険料軽減策を突如加えたことに伴う準備作業の遅れで、保険料額の計算ミスなどのトラブルが続出した。今回、同じ過ちを犯せば、制度は信頼を決定的に損なうだろう。政府には、万全を期して作業に臨むよう求めたい。

 新制度をめぐっては、75歳で線引きしたことへの反発が強い。保険料軽減は、こうした不満に応えるものではない。改善策を講じたからといって不満がすぐに収まりはしないだろう。政府・与党は制度の目的や意義をさらに丁寧に説明する努力が求められる。

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