数学オンチの立花隆
評論家の立花隆氏が「滅びゆく国家」という本を出し、その中で八木秀次氏の「(Y染色体継承論による)女性天皇容認論を排す」(清流出版)を批判している。
この論旨は
「神武天皇のY染色体は現代日本男性にも数千万人規模で受け継がれているから、八木氏の理論は正当性がない」
というものである。
これは以前から精神病理学者の斎藤タマキン(環)氏が唱えていた説なので、今回はタマキン(違った・環)氏の著作(「家族の痕跡」筑摩書房)を参考に論じてみることにする。
この本で斎藤氏は
「チンギス・ハーンのY染色体を受け継いだ男性が、現在1600万人ほどいる」
と紹介しているが、
現在のモンゴルの人口は240万人程度である。半分は女性であるから、男性は120万人ぐらいであろう。この120万人の中に1600万人をどうやって押し込めるのであろうか?
このように誰の先祖が何人いるか?という問題は大変難しい計算がいるのであって、単純な理論の延長は出来ないのである。
例えば
我々は誰でも親が2人いる。
祖父・祖母は2人ずつ合計4人いる。
曾祖父・曾祖母は合計8人である。
つまり一世代遡る毎に祖先が倍々に増えてゆくのである。
これを更に昔に遡って計算してゆくと、室町時代の終わりごろには当時の自分の祖先の総数は何と!
1億3000万人を超えてしまうのである!
(ただし世代交代が現在の約30年ではなく、20年と設定した場合)
現在の日本の人口は1億2705万人程度であるから、450年も前の日本には今を凌ぐ人口が既に存在したということである。こんなことは到底考えられない!
立花氏や斎藤氏の一番間違っていることは、
数学の証明
ということがまったく分かっていないことだ。
神武天皇のY染色体を持っている日本人男性が数千万人いる
というが、
これは数学的には証明できない
のである。
なぜなら皇統以外の神武天皇のY染色体を持っている日本人男性の数は無限集合であるから証明ができないからである(神武天皇時代の他の男性・それ以前の男性がいるから)。これは以前にも説明したが、もう一度紹介する。
集合とは数の集まりのことであり、
無限集合の代表はπである。
3.1415926535897932384626433832795028841971・・・・
とランダムな数字の羅列が無限?に続くから無限集合というのである。
ところが!
・・・134 999999 837・・・
と小数点以下762~767桁目に9が6個続けて出現するのである!
では
9が10回連続・あるいは9が100回連続出てくる可能性はあるのであろうか?
今はπの計算はコンピューターで1億2000万桁ぐらいまで出来ている(日々更新されるので現在はもっと先まで計算されているかも・・・)が、残念ながら見つかってはいない。確認する計算式も分からない。
だから
有るとも言えるし
無いとも言えるが、
数学的には
証明不能
なのである。
これが「無限集合は証明できない」ということなのである。
例えばπが小数点以下2億桁でピッタリ割り切れれば、”あるか?ないか?”が調べればすぐ分かるのであるが、残念ながら無限?に続くので分からないのである。
故に
立花氏や斎藤氏の説は
証明できない
ということになるのである。
立花氏は
「自分の先祖も皇室につながっている」
などと世迷いごとを言っているが、
皇室典範には
第1条
皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。
とある。
立花氏は皇統には属さず、男系か?女系か?分からないから資格など在ろうはずが無い。
一方
八木氏の説は
神武天皇から今上天皇まで125代2666年と数字が限定されていて、有限であるから、証明できる!
ということになるのである。
八木氏の勝ち~っ!
古事記や日本書紀の皇統譜は歴史的真実ではない
と言うかも知れないが、
日本最古の歴史書が信用できない
というのであれば、それよりも権威のある歴史書を提出すべきである。それが出来て初めて古事記・日本書紀を否定できるのである。
八木氏の主張も
「女性の持つX染色体では皇統の正統性を証明できない。男性の持つY染色体でしか神武天皇に遡れない」
と男女の違いを述べているに過ぎない。
皇位継承の歴史的経緯から男系天皇の維持を主張して、その中の一つとしてY染色体論を述べているのだ。
「男系継承の道を徹底的に探って、それで万策尽きれば女性天皇も女系天皇もやむをえない、これが私の立場である」(『女性天皇容認論を排す』72p・清流出版・2004年)
と言っているのである。
このY染色体による男系天皇論は
が分かりやすい画像で述べておられるが、拙者も更に分かりやすい説明で記事を書こうと思っている。イラストの制作に時間がかかるのでもう少しお待ちいただきたい。
斎藤氏の著書には
「Y染色体そのものも、X染色体ほどではないが、遺伝情報を変化(交差)させ続けているのであり、そうである以上、もはや『皇統の純粋性』のリジッドな(厳格な)根拠たりえない」
とあるが、
先祖伝来の壷にホコリがかかろうが・カビが生えようが、大事にする価値に変わりは無い。それだからこそ三種の神器もあるのである。 「なんでも鑑定団」の中島誠之助さんも「添え書きが大事」と言っている。古事記・日本書紀以上の添え書きはあるまい。
ハンカチ王子ならぬ遅刻王子の和泉流宗家:和泉元彌は宗家継承問題で能楽協会と対立しているが、日本の伝統文化は本来・一子相伝である。 ”ツバメ返し”が出来るからと言って巌流宗家を名のることは出来ないのだ。
”知の巨人”とまで言われる立花隆氏が高校で習う集合も分からないとはガッカリした。本を読んでも自分の頭で考えなければダメなのである。上っ面だけ読んでも役には立たないのである。
立花氏はweb上で
「女性天皇のミトコンドリアでの継承も考えるべき」
と言っているが、
そんなことをすれば、以後は女性天皇しか皇位に着けなくなる。皇室の伝統が正反対になるわけで、皇室の消滅を画策する暴論と言わざるをえない。
ただし、国民一人ひとりが
日本人は、何らかの形で天皇家につながっている
ことを”神国日本の誇り”として考えるのであれば、それは大事なことであると思う。
では
中島誠之助さんの話が出たが、
「いい仕事をしているなぁ!」
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コメント
>無限集合の代表はπである。
πは「無限小数」ですよ
柳生さんは「無限集合」と「無限小数」を混同していますね
>無限集合: 有限集合(その要素の数が有限である集合)でない集合。
>
>無限小数: その小数表示が有限の桁ではない数。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E9%99%90
立花隆さんもあんまり数学が得意じゃないんですが,
柳生さんも数学の話をするとたいがいムチャクチャですね
投稿 shinok30 | 2008年6月 5日 (木) 17:38
>「チンギス・ハーンのY染色体を受け継いだ男性が、現在1600万人ほどいる」
>と紹介しているが、
>現在のモンゴルの人口は240万人程度である。半分は女性であるから、男性は120万人ぐらいであろう。
>この120万人の中に1600万人をどうやって押し込めるのであろうか?
チンギス・ハーンのY染色体を受け継いだ男性はモンゴル人とは限りませんよ
ブライアン サイクスの研究によれば,
チンギスは自らの遺伝子を広めることに成功した優位雄(アルファ雄)で,
チンギスのY染色体を受け継いだ男性は
少なくとも世界で1600万人に及ぶと推定されています
アフガニスタンとパキスタンの国境周辺で暮らすハザラ族の約1/3が
彼のY染色体を保有しており,
他のアジア16地域の男性のDNAを分析でも,
人口の約8%が保有していることが明らかになっていて,
おそらくヨーロッパにも相当数の保有者がいると推測されています
>アダムの呪い 著者名 ブライアン・サイクス/著 大野晶子/訳
http://books.yahoo.co.jp/book_detail/31382246
投稿 shinok30 | 2008年6月 5日 (木) 17:23
ふへさま
立花・斎藤氏の理論は
”神武天皇のY染色体の可能性”と
”同時代のそれ以外の多数の男性のY染色体の可能性”
があります。
故に「排中立」が成り立たず
これを数学的・背理法的には証明が出来ないということです。
一方・八木氏の理論は
”125代”
と限定されていますので、
”神武天皇”と”それ以外”
の「排中立」が成り立ち、
背理法の証明が成り立ちます。
投稿 柳生すばる | 2006年9月16日 (土) 19:48
>これを現在の人口1億1千万人で割れば約2800万人です。
>神武天皇のY染色体を備えている可能性がある日本人男子が2000万人以上いるのはほぼ間違いありません。
男性ですから半分ですね。
それぞれ1400万人、1000万人と訂正します。
投稿 ふへ | 2006年9月16日 (土) 17:31
私は皇統の正統性をY染色体で担保することには懐疑的です。
男系維持は皇統の正統性の根幹ですが、エントリのような反論は突っ込まれる元になりますよ。
立花氏や斉藤氏の言い分はある意味正しいのです。単純な数学でシミュレートできます。
皇統が始まった時点=少なく見積もって1500年前、の日本人男子全員(便宜上各人がユニークY染色体を保持すると仮定)が恣意的に家系維持を図ったとして、それでも配偶者に恵まれなかったり男子の子が産まれなかったり家を継ぐまでに死亡したりして断絶する可能性は何割かあるでしょう。
西暦500年頃の家系母集団(男性人口)が100万とします。
断絶する家系の割合は少なく見積もっても2割(遺伝子的系譜を問題にするので勿論養子は不可)はあるでしょう。
世代交代を25年。
渡来等で新たに流入する家系が前100年の5%程度と見積もると
次ぎの100年に日本に残っている家系の数は
1,000,000×0.8^4+1,000,000×0.05=459,600
100年で残る家系は約半分になります。
この計算を繰り返せば西暦2000年の時点で残るであろう家系の数はなんと3.96。4つの家系しか残らないことになります。
皇統は間違いなくこの内の一つですから、これを現在の人口1億1千万人で割れば約2800万人です。
もっとも家系数については、新たに流入する家系数が日本国内と同様に減衰するとした場合の計算で、実際は断絶した流入家系が再渡来したり、あらたな地域の家系がそっくり流入したりするため家系数自体は遥かに多く残ります。
ただ、神武天皇のY染色体を備えている可能性がある日本人男子が2000万人以上いるのはほぼ間違いありません。Y染色体自体に希少性などないのは確かなのです。
私は天皇の正統性は、千数百年間はっきり検証できる形で皇統を繋いできたそのこと自体にあるものと考えます。
Y染色体の話は、科学と伝統の間にかかった小さな橋程度に考えておいた方がよろしいかと。
投稿 ふへ | 2006年9月16日 (土) 17:26
自分も天皇家の血筋につながっていると思うのならば、いわば本家である今上天皇に対して、自然と敬う姿勢が出るはずなんですがね。
不精な自分に代わって、先祖代々祭祀を滞りなく続けてくださっているわけですから、もうちょっと感謝しても罰は当たらないと思います。
投稿 takayuu | 2006年9月15日 (金) 10:58