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「支店長名ばかり、本社が実権」グッドウィル経験者証言

2008年06月04日15時01分

 日雇い派遣大手グッドウィルの派遣労働者を港湾関連会社が二重派遣したとされる事件では、グッドウィルの当時の支店長やその統括役が職業安定法違反の幇助(ほうじょ)容疑で逮捕された。ただ、支店長経験者は「大口契約では実質的権限を本社が握っている」と証言する。警視庁は歴代役員を含む同社幹部らから事情を聴くなどして、かかわりを調べている。

 「どこの支店でも社員は2〜3人で、支店長とは名ばかり。契約企業については本社が権限を握って指示しており、責任は重い」。関東地方でグッドウィルの支店長を3年近く務めた20代の男性は内情を話す。

 男性は05年に入社。直後に、支店で支店長に次ぐサブマネージャーになった。「入社から5日間研修を受けたが営業の話ばかり。守らなければならない法律についてはほとんど説明を受けなかった。採用翌日から支店長の人もいた」。半年足らずで支店長に昇任し近くの支店に異動。別の支店でも支店長を務めた。

 関係者によると、支店の社員は支店長とサブマネージャーの2人しかいないことも多い。あとはアルバイトが、数十人から数百人の派遣労働者と派遣先企業との連絡など実務に当たる。

 男性は「派遣先との細かい交渉はブロック長やエリアマネージャー、統括部長など支店を統括する立場の人がする。大手からは多額の現金が払われるため役員が直接交渉することもあった」と明かす。本社には、労働災害や行政指導などトラブルに対処するためのリスクマネジメント課という組織図に載っていない部署もあったという。

 支店の仕事は営業が主で、繁忙期には泊まり込んだ。ブロック長からだけでなく役員からも契約企業を増やすよう指示するメールや電話がよく届いた。「支店にもランクがあり、競わされた。退職率が高く、その度に入社間もない社員が支店長になっていた」

 本社幹部に華やかな場所に連れて行ってもらうことも多く「感覚がまひしていった人もいた」と話す。必要な資格を持つ支店長らが名義を貸して、無資格の社員が実質的に支店長を務めている支店もあったという。

 グッドウィルには派遣先の業種により、運転手ならEX(エクスプレス)、パチンコ店ならAM(アミューズメント)、飲食店ならFC(フードキャスティング)など様々な支店の区分があった。だが形式だけで、人が足りないと貸し借りしていたという。

 「派遣は日本の雇用に不可欠で、派遣業はなくてはならない業態。グッドウィルの反省を生かし、労働者中心の業界にしないといけない」。男性はグッドウィルが家宅捜索を受けたあと、小さな派遣会社に移った。派遣業の健全化を願い、捜査を見詰める。(小林誠一、伊藤和也)

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