結婚していない日本人父とフィリピン人母10組の間に生まれた子ども10人が、国に日本国籍の確認を求めた2件の訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷=裁判長・島田仁郎(にろう)長官=は4日、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と初判断した。その上で10人全員について日本国籍を持つことを確認した。
最高裁が法律の規定を違憲としたのは、在外邦人の選挙権を制限した公職選挙法の規定を巡る訴訟の判決(05年9月)以来で8件目。国会は早急な法改正を迫られる。非嫡出子(婚外子)の不利益な扱いに対する違憲判断は初めてで、相続で差を設ける民法の規定などを巡り議論を呼びそうだ。
国籍法3条1項は、未婚の日本人父と外国人母の間に生まれた子について、父の生後認知と両親の結婚の両方を日本国籍取得の条件としている。嫡出子の立場を得ることを必要とする規定だ。
原告は、関東地方などに住む8~14歳の10人。父の認知を得て03~05年に法務局に国籍取得を届け出たが、認められなかった。
原告側は「両親の婚姻という子どもに左右できない事情で国籍について異なる扱いをするのは不合理な差別」として、憲法14条の定める法の下の平等に違反すると主張。これに対し国側は「両親の結婚で子は日本との強い結びつきを持ち、法には合理的な根拠がある」と反論した。
1審・東京地裁は2件の訴訟とも同項について違憲判断し10人の日本国籍を認めたが、2審・東京高裁は「婚姻要件を無効として認知のみで国籍を取得できると解釈することは、新たな要件を創設するもので立法権の侵害」と憲法判断に踏み込まず、いずれも原告逆転敗訴とした。
日本人父・外国人母の非嫡出子で原告と似た境遇の子どもたちは国内に数万人、海外にも相当数いるとの学者の試算がある。父の認知を得る困難さはあるが、判決は救済の道を開いた形だ。【北村和巳】
毎日新聞 2008年6月4日 16時08分