関口宏さんが司会をしている「サンデー・モーニング」(TBS)というテレビ討論会は私の好きな番組の1つで、うちにいるときはかかさず見ている。今朝(1日)のこの番組はとりわけうれしかった。というのは、最初の15分ばかりを5月30日に閉幕したばかりの「アフリカ開発会議」(TICAD4)に費やしていたからだ。
日本で開催される国際会議は数多くあっても、その出席者は欧米から、あるいは近隣のアジアからが主であるが、今回のTICADはほんの一瞬テレビに写っただけでも出席者が全員黒い肌の人であるという点で際立っていた。 29日には英国のバンドU2のボーカル、ボノさんもスピーチしたTICAD4。左奥は福田首相(ロイター) それにもかかわらずNHKをはじめ、多くのテレビ局はこの会議のことは申しわけ程度に報道するだけ。これと同時進行していたオリンピック用の水着が日本製になるかどうかのことばかり何度も繰り返して放送していた。 ようやく「サンデー・モーニング」でこの会議の意義と問題点をまともに取り上げて解説してくれて、私は本当にうれしかった。お礼を言いたい気持ちでいっぱいである。 これまでの新聞などの報道によると、この「アフリカ開発会議」で日本が期待するのは、アフリカで大量に産出されるレアメタルを獲得すること、国連で理事国に立候補したときに賛成してもらうこと。 そして、最近急速に接近している中国に対抗して各種資源の確保とODA資金による日本企業の進出を容易にすることなど、経済的・政治的な実務目的のみで、もっぱら日本が援助という名目の下にどうやってアフリカから利益を得るかということばかりであった。 福田首相が15分刻みに各国代表とメモを見ながら会談したのは、おそらくそれらもろもろの「国益」のためであろう。 しかし今朝の「サンデー・モーニング」のアプローチは違っていた。 最初に口火を切ったのはレギュラーの財団法人日本総合研究所会長の寺島実郎氏である。寺島氏はいつも、海外での長い経験からいろいろな問題に広い視野から実に適切な解説をされるのであるが、今回は特にそれが光った。それは氏の背後に強烈なヒューマニズムと民主主義への信頼があるからだろう。 アフリカ諸国のほとんどが、かつてヨーロッパ列強に支配され、独立した後も自力で国内を統治できず、暴力によって政権を握った一部の権力者が外国に資源を売って得た富を独占している状態にある。 寺島氏は今こそ日本がアフリカに真の貢献できる時であるという。日本は一度もアフリカを侵略したことがなく、占領や略奪したり奴隷を連れ去ったこともない。日本はアフリカでは非常によいイメージを持たれていて、憲法9条のことなどもよく知られているという。 そうであればこそ、他の(手の汚れた)欧米とはちがったスタンスでの援助を考えるべきだ。首相はアフリカへのODAを倍増すると約束したが、それが中国への対抗意識からのみ出たのであれば、それこそ「頭のいい」アフリカの指導者にうまく利用されるだけだし、それは日本国民もアフリカ諸国の人々も望むことではない。 この番組初登場のドキュメンタリー作家・中島多圭子氏によれば、この会議のために来日したNGOのメンバーは十分なバスの手配もなく、会場に入れなかったそうだ。一般の新聞やテレビではNGOが来ていたことすら報道しなかった。少なくとも私は今回このことをはじめて聞いた。 政府とは別の立場で地道な活動をしているNGO(非政府機関)こそ、アフリカの真の姿を伝えてくれるのではないか? どうして政府は彼らを冷遇し、なぜ、主な報道機関はそういうNGOの話を聞いて報道しないのか? オリンピック選手の水着と、アフリカ諸国との真に良い関係構築と、どちらが日本と日本人にとって重要か? 報道に携わる人たちはもっと冷静に判断してもらいたい。「サンデー・モーニング」はこれからも今のような報道機関の模範ともいうべき姿勢を貫いてもらいたい。
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