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【主張】クラスター禁止 どうする安全保障の空白

2008.6.1 03:30
このニュースのトピックス主張

 クラスター(集束)爆弾の事実上の全面禁止を定めた条約案が、ダブリンで開かれていた国際会議で採択され、日本政府も支持を表明した。

 これまで全面禁止案を受け入れなかった日本の方針転換は、福田康夫首相の意向とされているが、少なからぬ問題点をはらんでいることを指摘しておきたい。

 第一は、日本の平和と安全が確保できるのかどうか。日本はこれまで、侵攻してきた敵を海岸線で撃退する防御兵器として保有してきた。万一の場合、海岸線が長くて離島の多い日本にとってはほとんど唯一の有効な兵器だ。

 条約により自衛隊の保有分はすべて禁止の対象となるが、冷戦が色濃く残る北東アジアで、あらゆる事態に対処できる軍事的能力を日本だけが持たないという危うい構図が出現する。

 日本は保有分を8年以内に廃棄する義務を負う。条約は目標識別能力と自爆装置が付いた最新型を除いたが、日本はこの導入か、新型を開発するにしても10年程度、国土防衛に空白が生ずる。廃棄費用だけでも数百億円かかる。日本は代替兵器が装備されるまでの移行期間を求めたが、条約には盛り込まれなかった。残念である。

 条約の実効性の問題もある。主要な保有国である米国、ロシア、中国、イスラエルなどは会議に参加すらしていない。全面禁止は現実的でないと考えているためだ。結果として主要国も使用を躊躇(ちゅうちょ)する傾向はあるだろうが、クラスター爆弾の効果的な規制はかえって困難になった一面もある。

 一方で条約加盟国は非加盟国との「軍事協力・作戦に関与できる」との条文が追加された。米軍がクラスター爆弾を使用する可能性のある日米共同作戦への自衛隊の参加・協力は可能となる。米軍の抑止機能が一応確保される。

 クラスター爆弾は殺傷力が高く、不発弾による痛ましい事故が相次いでいる。日本は被害者支援や不発弾処理などに最大限努力すべきである。

 だが一方で、国家として国民の生命と財産を守る責務を負っている。英国などが賛成に転じたことも日本の判断に影響を与えたようだが、日本が置かれている厳しい安全保障環境を考えれば、別の選択肢もあったはずだ。

 12月に開かれる条約の調印式まで時間はある。将来に禍根を残さない慎重な対応を求めたい。

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