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インド料理店、辛すぎる職場 外国人コック蜂起

2008年05月31日11時50分

 インド料理店でコックとして働く南アジア出身者らが、劣悪な労働条件について労働組合に相談し、待遇改善を求める動きが相次いでいる。極端な低賃金だったり、逃走防止のためパスポートを取り上げられたりするケースが目立ち、未払い賃金の支払いを求める訴訟も起きている。

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劣悪な労働条件について相談するネパール人男性(右)=東京都板橋区のAPFS労組

 神奈川県内の店で働いていたインド人男性(41)と同僚3人は、昨年7月、未払い賃金計約1298万円を求める訴訟を横浜地裁に起こした。

 男性はコルカタ(カルカッタ)でブローカーに誘われ、「ビザ取得代」として借金して約47万ルピー(約120万円)を払い、「技能」の在留資格で05年3月に来日した。

 ところが、月給26万円のはずが実際は4万〜5万円。勤務は午前8時〜午後10時、週休1日で、残業代なし。6畳1間のアパートに同僚3人で暮らした。インド人経営者にパスポートも取り上げられ、「だまされたと思ったが我慢するしかなかった」と話す。 知人のコックに紹介された「首都圏移住労働者ユニオン」を頼って店を辞め、今は別の店で働く。経営者は取材に「パスポートは頼まれて預かっただけ。賃金も約束通り払っていた」と主張する。

 同ユニオンには4年ほど前から同様の相談が相次ぎ、20人近くになる。経営者も南アジア出身者が大半だ。

 日本に住む外国人を支援するNGO「APFS」とAPFS労組でも、5年間に約40件の相談があった。APFS労組が昨夏、団体交渉をしたネパール人経営者は「仕事を覚えられるのだから給料などなくてもよい」と発言したという。

 インド経済に詳しいBRICs経済研究所代表の門倉貴史さんは「インドではカースト差別が現存するし、南アジアの多くの国では労働法が十分整備されず、労働者の権利が保障されない。そうした慣行が日本に持ち込まれている面があると思う」と話す。

 近年、エスニックブームやインド人技術者の増加の影響でインド料理店が目立つ。法務省の06年の在留外国人統計では、「技能」資格を持つインド、バングラデシュ、ネパール、スリランカ、パキスタン5カ国の出身者は計3883人で、10年前の3倍近い。大半がコックとみられる。

 移住労働者ユニオンの本多ミヨ子書記長は「多くは現地の言葉しか話せないうえ、休みの時間も少なく、労働組合に相談するのは難しい。」とみる。(山根祐作)

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