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【社会】

食品値上げ 弱者直撃 生活保護者 素うどん買いしのぐ

2008年5月30日 夕刊

乳製品が高騰、バターの代わりにマーガリンが並ぶ売り場=東京都内のスーパーで

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 この春、さまざまな食料品と光熱費の値上げが相次ぎ、経済弱者の人たちの暮らしを直撃している。値上げの原因となった世界的な原油と穀物相場の高騰は収まりそうになく、食べ盛りの子供を抱える母子家庭などでは、食卓の風景にも影を落としている。 (菊谷隆文、稲垣太郎)

 「育ち盛りの男の子二人だから、食費は本当に苦しい」。小学六年と三年の息子二人を一人で育てる首都圏の介護職員の女性(39)は悲痛な声で話す。

 特別養護老人ホームで、契約社員として働く。月給は十三万円。子供と触れ合える休日には、パンを焼いてだんらんに彩りを添えていたが、小麦粉の高騰で楽しみが失われたという。食事の量を増やすため、サツマイモをフライにしていたが、値上がりでパン粉を買うのもやめた。

 「朝はおにぎり、夜は簡単ないため物を作るのが精いっぱい。せめて牛乳だけは子供に飲ませたいから、一リットルパックを週に五、六本買います」

 生活保護を受けている埼玉県幸手市の男性(36)は月約十万六千円で暮らす。食費は三万−三万五千円に切り詰めてきたが、値上がりで難しくなった。

 「安売りのスーパーで素うどんを買ってしのいでいます」。男性は窮状を語る。インスタントラーメンもスーパーの特売で五袋二百円弱だったのが三百円以上に。「米が値上げにならないのが救いだが、おかずを切り詰めなければ」と嘆く。

穀物の急騰 次々と波及

 パンやラーメン、油など広範囲な食料品の値上げの主因は、海外での小麦の生産量の減少。原油高や環境対策で、バイオエタノール燃料の需要が高まり、その原料となるトウモロコシへの転作が進んだ結果、小麦の生産量が世界で減少した。

 家庭用小麦粉は一割前後高くなり、一キロ約二百円だった価格は四十−三十円引き上げられた。食パンは一個二十円程度値上げに。

 穀物相場の高騰で家畜の飼料価格も値上がりし、それがチーズやバターなどの乳製品の価格にも影響した。雪印乳業は先月、バターや国産ナチュラルチーズなどの価格を8−10%値上げ。明治乳業もバターの値段を最大8・6%上げ、来月からはチーズなどの値上げを予定している。

 一方、原油高の影響で電気・ガス料金も四月に一斉に値上げされた。電力十社はさらに七−九月について、標準家庭一カ月当たり六十−百五十九円の引き上げを予定している。

 

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