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「ニュースのたね」について
オーマイニュース(OhmyNews)の掲載記事のうち、「ニュースのたね」ページに掲載されている記事は、オーマイニュースによる編集作業を経ていない、市民記者から投稿されたままの記事です。その点をご理解のうえ、お読みください。 オピニオン会員廃止論議に見るコンサルタントの使命コンサルタントは顧客の課題を理解すべし林田 力(2008-05-27 19:58)
オーマイニュース(以下、OMN)のオピニオン会員廃止をめぐる議論からコンサルタントの使命について考察したい。コンサルタントは特定の業務について指導・助言をする専門家である。クライアントは何らかの課題を解決するためにコンサルタントに助言を求める。しかし、オピニオン会員廃止騒動を振り返ると、コンサルティングが適切になされたのか疑問が生じる。
オピニオン会員廃止は2006年の出来事であるが、最近、黒須みつえ・市民記者編集委員による平野日出木編集長のインタビュー記事で改めて話題になった。インタビュー内容はインターネット上でも論評されているが、それらの議論がコンサルティング業務を踏まえたものか疑問なしとしない。そこでキーパーソンである平野編集長の執筆記事及びインタビュー記事をテキストとして、この問題を考察したい。 オピニオン会員について当時のOMNが抱えていた問題は、匿名性の高いオピニオン会員の無責任なコメントで、市民記者が萎縮し、記事投稿を敬遠することにあった。問題を検討した結果、OMNはオピニオン会員を廃止する。ところが、この決定に対し、OMNが対価を払って助言を求めていたコンサルタントが外部のメディアでOMN編集部を批判する記事を発表した。一方、平野編集長は「プロとしての職業倫理」の観点から反論した。 この平野編集長の反論はコンサルタントの守秘義務違反という形で解釈された。コンサルタントがコンサルティングの過程で得た情報を基にジャーナリストとして記事を発表するのは不当である、という発想である。確かに、この解釈は誤りではない。しかし私は、それだけではないと考える。 守秘義務違反は重大な問題であるが、コンサルタントに対する反論としては十分ではない。コンサルタントは守秘義務違反を侵しているとはいえ、OMN編集部の姿勢を具体的に批判している。守秘義務違反を突くだけでは批判に正面から答えず、逃げたと受け止められてしまう可能性がある。 実際、多くのユーザーの関心はオピニオン会員廃止の経緯であって、コンサルティング契約の債務不履行ではない。平野編集長の反論を守秘義務違反としか解釈しなければ「守秘義務違反は分かったから、コンサルティングの批判内容についいてはどうなのか」という疑問が残ってしまう。 コンサルタントの使命は顧客の問題を解決するような有益な助言を提供することである。OMNの問題は「匿名性の高いオピニオン会員の無責任なコメントにより、市民記者が記事投稿を萎縮する」ことである。この問題を理解することがコンサルタントの最初の仕事になる。顧客の問題を正確に理解しなければ、適切な解決法を提示することはできないからである。 これが本件のコンサルティングで行われていたかが疑わしい。インターネット空間では無責任な言説が溢れていることは驚くことではない。従って罵詈雑言を浴びたぐらいで萎縮する方がネット・リテラシーに欠けるという見解は一つの見識である。しかし、市民記者が無責任なコメントで萎縮しているのは事実であり、この問題に対する解決にはならない。 無責任なノイズに耐えられないならば市民記者になる資格はないとして切り捨てるのも一つの考えである。だが、それは「市民記者に記事を投稿して欲しい」というOMNの姿勢に反する。そもそもオピニオン会員のために市民記者を切り捨てるという結論は市民記者の投稿記事によって成り立つ市民メディアにとって本末転倒である。 コンサルティング業務はコンサルタントの理想を実現するための実験場ではない。顧客あってのコンサルティングであり、顧客の課題を解決することがゴールである。匿名性の高いコメントも取り込むことがCGM (Consumer Generated Media)のあるべき姿かもしれないが、それは当時のOMNの課題ではなかった。従ってOMNがコンサルタントの考えるCGMの理想像に逆行する判断を下したからといって、それをコンサルタントが批判するのは筋違いである。 平野編集長が持ち出した「プロとしての職業倫理」には、上記の内容が込められていると解釈する。クライアントの課題を無視し、自己の理想を押し付けることはコンサルタントの職業倫理に反すると主張しているのではないか。 私はマンションの売買契約をめぐって東急不動産と裁判闘争をした経験がある(記事「東急不動産の遅過ぎたお詫び」参照)。最初に私が苦労したのは、私の問題を理解してくれる弁護士を見つけることであった。人の話を聞かずに本質から外れた解決策を押し付けようとする弁護士もいた。だから上述のようなコンサルタントに対する不満には大いに共感できる。 本件コンサルティングはコンサルタントがクライアントのベクトルを理解しなかったことによる失敗例と言える。コンサルタントは豊富な専門知識があるためにコンサルティングを委嘱されるが、知識の優位性故に独善に陥る危険がある。顧客第一主義を磨きたいプロフェッショナルにとって、この失敗事例は有効な戒めになるだろう。 ●参考URL 【極私的2006年回顧】 言われたら、言い返そうぜ Web2.0 http://www.ohmynews.co.jp/news/20070410/4326 編集長に聞いてみた(2) オーマイの歩いてきた道 http://www.ohmynews.co.jp/news/20080517/25150 東急不動産の遅過ぎたお詫び http://www.ohmynews.co.jp/news/20071002/15698 |
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