縁あって、韓国大手メディアからの招待を受け、韓国の農村を取材する機会を得た。日本で、都市と農村の格差問題・農村社会問題を取材している私は、今回は、主に韓国における農村社会の現状と格差について取材することにした。
私が3日間宿泊させていただいたのは、首都ソウルから1時間ほど離れた江華島にある廃校を再利用した宿舎である。仁川国際空港から江華島へと向かう車中から見えるのは、見渡す限りの田園地帯。江華島における主な作付け農産物は、水稲・高麗人参・唐辛子などが中心であった。車を降り、唐辛子の露地栽培をしている畑を見学した。日本と比べて粗放栽培であるが、収量は日本の1.5倍である。韓国では栽培方法よりも優秀な遺伝子を持った品種を導入している傾向が強い。
干潮の差が激しい江華島周辺は、古くから開拓が盛んに行われ、水田稲作に取り組まれてきたという。ガイドをしてくれた韓国人大学生の李賢旭さんによると、韓国でも農村部の疲弊が著しいという。日本においても大都市への人口の流出・一極集中が顕著だが、韓国では日本を越える都市集中が進んでいるそうだ。韓国でも日本と同じように農産物価格の低下や農民の自殺が起きているという。韓国の農村部にも足を運んだが、あばら家が立ち並ぶ光景が目に付いた。こういった農村衰退現象は、秋田県や青森県の中山間地でも同じような光景が見られる。
こういった背景には、米国と韓国の自由貿易協定(FTA)交渉の締結が見え隠れしている。この交渉では、コメを除く自動車や農畜産物などで、韓国側は8%の関税を即時撤廃したほか、牛肉の現行40%関税を、今後15年間で撤廃することを受け入れた。
日本と同じく食糧自給率の低下が進む韓国でも、自国の自給率を上げようとする政策を軽視し、「海外諸国のお友達を増やす政策」へと移行したのである。
その結果、韓国の農村荒廃はますます進みつつある。農業は多面的な機能を有している。農村の荒廃によって今まで維持されてきた機能が低下し、時には水害時にその脆弱さを露見することとなる。
韓国の失敗から日本は何を学ぶべきか。日本はいま、日豪FTA交渉を行っている最中である。日本とオーストラリアにおける農業規模の違いなどは、すでにマスコミなどで論じられてきている。こうした農業問題は、両国の間に課せられた共通の課題である。
http://www.ohmynews.co.jp/news/20071210/18321
(著者:上杉幸憲/農業ジャーナリスト、NPO法人日本水フォーラム節水リーダー)