熊本県相良村に計画されている川辺川ダム問題で、ダムの最大受益地とされる同県人吉市で賛成、反対両派の市民の意見を聞く公聴会が23日、終了した。22日から2日間開かれた公聴会では、賛成4人、中立2人、反対48人の市民が意見を述べた。
反対意見が圧倒的多数を占めたことに、同市の田中信孝市長は「人数は関係ない」と強調。発言内容や各種データなどを参考にした上で、8月中旬までにダム計画の是非を判断する方針。9月県議会で賛否を表明する蒲島郁夫知事も、田中市長の動向に注目する。
22日あった賛成意見の公聴会は昼夜合わせて4時間を予定していたが、出席者は計54人で賛成4人、中立2人の計6人しか意見を述べず、昼は30分、夜は45分で終了した。
水害常習地に住む男性は「ダムができなければ被害は永久になくならない」と主張。農業男性は「ニンジンの種をまいても水不足で芽が出ない。ダムからの安定した水がほしい」と利水も含めた多目的ダム計画の復活を求めた。「中立」の女性は「ダムによる水没を受け入れた五木村のことを思うと反対とは言えない」と発言した。23日の反対意見を聴く昼夜の公聴会は計209人が出席し、48人が意見発表。水害体験者の男性は「球磨川上流の市房ダム(同県水上村)の放流で水害は逆に激しくなった」と主張。旅館関係者は「ダム建設で清流を失えば観光客が来なくなる」と訴えた。
=2008/05/24付 西日本新聞朝刊=